第一話
親方から譲り受けた鍛冶場は、本当にスゴイの一言に尽きた。昔親方が使用していただけあり、なかなかのものばかりだ。よくこれだけ揃えることができたなと思う。
とりあえず、持ってきた荷物を整理しよう。そう思い、荷物を整理していると、手紙が出てきた。
「なんだこれ? ……親方から?」
親方からの手紙らしく、表にシンへと書いてある。中にはいくつか店を開く場合の注意事項やらが書いてあり、最後に「荷物整理終わったらすぐにダンジョンに行け」と書かれていた。俺は、その指示に従い、荷解きを終えると、近くにあるというダンジョンに向かった。
ところで、この世界について少し説明しておきたい。この世界は現在、大きく分けて三つの国に分かれている。俺のいるウェアード皇国。敵対関係にあるティセリウス帝国。中立であるフェース皇国。…今国について説明した意味はないのだけど一応。
重要なのはここから。この世界の職業には、特徴的なものが二つある。冒険者と探検者だ。その違いは、世界のモンスター討伐依頼や未開の土地を調査するのが冒険者だ。こちらは、近年最も多い職業だ。ギルドもあり、いろんなとこにいる。
そして探検者。こちらは世界各地にある「クレーネ」と呼ばれるダンジョンを探索する職業? なのだ。まぁ、その大半が学者か、鍛冶師くらいだ。
なぜか、理由は伝説ではあるが、「クレーネ」の先は天界や魔界につながっているという伝承が残っている。なので、そちら方面を研究している学者が潜っている。あと少数だが興味を持った冒険者が行ったりするが、すぐに皆やめてしまう。そしてもう一つ、何故鍛冶師が入るか。
本当に一部の鍛冶師であるが、「クレーネ」には良質の鉱物がたくさんある。なので、それを調達しに「クレーネ」に潜る鍛冶師がいる。
俺は、親方の教えにより、自分で取りに行く人間なためダンジョンに潜るのだ。
俺が「クレーネ」に向かう途中、一人の大男と肩がぶつかってしまった。
「おっと、すみません」
「こちらこそすまん。大丈夫か?」
相手とのガタイがかなり違うため、コケてしまった。手を借りて立ち上がると、男はじっとこちらを見つめてきた。
「あの、なにかついてます?」
「あ、わりぃな。お前さん、もしかして鍛冶師か?」
「ええ、そうですが……」
「そうか、やっぱりな」
大きな声で笑いながら背中を叩かれる。めちゃくちゃ痛い。
「剣を腰に下げてるがそうは見えなくてな。でも、なんで剣を持ってんだ? しかもそんなほっそい剣を」
……剣って。こいつは現代知識を元に親方と二人で制作したれっきとした日本?刀だぞ。ここで作られてる剣とは訳が違うのにそれを細っそい剣って。
「これは、王都に来る前に俺のいた村の親方に手伝ってもらって作ったんです」
「ふぅん。故郷の…ってやつか?」
「そんなところです」
「そうか。俺は、この近くで【リーズ】って店を開いてるダリルだ。同業者同士仲良くしようぜ」
スッと、右手が俺の前に出される。
「よろしく。俺はシンだ。今日来たばかりで店とかはまだやってないけど、一応この道の一番奥に住んでる」
互いにこの後用事があるのですぐに別れた。しかし、来てすぐに知り合いができるとは、本当に幸先いいな。
その後、俺は王都の近くの森の中にいた。理由は勿論ここに「クレーネ」があるからだ。親方のメモを頼りに行くと……さして深くない場所に「クレーネ」はあった。小さな洞窟のようだが、その中からは光が漏れている。「クレーネ」は魔素を放出していると言われ、そこから魔界やら天界やらにつながっていると言われている。
最も、こんなこと一般人はほとんど知らないだろう。それなりに学力がある人間や魔術師ぐらいでないと存在自体知らないだろう。
そして俺は、周囲に人がいないことを確認しそのまま「クレーネ」の中へと飛び込んだ。