prologue2
村を出発してから数日。俺は親方がくれた地図とメモを頼りに王都についていた。
「やっぱし人多いな。実家のとこより多いぞ」
俺の実家……クレイスト家は王都より少し離れた都市にある。あそこもかなり賑わっていたが流石は大都市。レベルが違う。
「さて、えっと~鍛冶区はどっちだ?」
王都はいろいろな区によって分けられている。大まかに分けるなら、貴族が住む上層区と平民が住む下層区なのだが、さらに別途にあるのが鍛冶区らしい。
現在こそ戦争はないものの、隣国といがみ合う関係なことは確かだ。それに、モンスターのこともあるため、武器は必要不可欠。よって、分けられているらしい。実際は五月蝿いってこともあるんだろうな。
「しかし、広すぎてわかんねぇよ」
親方の地図には王都に行くまでの道のり、メモには王都での注意点が書いてあるだけで場所に関しては書いてない。ついにボケたのかあのおっさん。
仕方ないので、騎士を探してみることにする。
騎士って言っても普通に国の軍隊みたいなもんだ。治安維持活動みたいなこともしてるので、道案内とかもしてくれたりする。
運のいいことに、騎士を見つけることができた。俺は、騎士を追いかけて、声をかけた。
「あの、道を聞きたいんですけど……」
「はい?」
騎士の人が振り返る。その時、俺は見たんだ。振り返った瞬間、周りがキラキラってしたのを。
振り返った騎士の人は、多分世の中の九割以上の女性がかっこいい!というであろうほどのイケメン野郎だった。金髪碧眼の爽やか野郎は好きじゃない。
しかし、俺だって大人だ。ちょっとイラっとしたからって「なんでもないです」なんて言って逃げたりしない。
「道を聞きたいのですか? どちらまで?」
「……鍛冶区まで」
「鍛冶区ですか、分かりました。ついてきてください。ご案内します」
イケメン騎士さんはそのまま歩いていく。俺は、その背を睨みつけるようについていった。
「ところで、鍛冶区へはどのような要件で?」
しばらく歩くと、騎士が喋りかけてきた。俺は、いきなり来たのでびっくりしていると、何を思ったのか弁解を始めた。
「いえ、変な理由じゃないですよ。ただ、見たところ冒険者にも見えないですし、かと言って探索者にも、騎士にも……」
「ああ、そう言うことですか。自分は鍛冶師ですよ」
俺がそう答えると、騎士の男はたいそう驚いたような顔をした。
「そうだったのですか。最近は王都の外から鍛冶師の方が来るのは珍しいですし、何より若いと思ったので……」
「そうですね。先日成人したばかりなので」
「そうだったのですか。ところで、王都へは修行か何かですか?」
「いえ、俺のいた村の親方が自分の使っていた鍛冶場をくれると言ったので」
「なるほど……場所、わかりますか? 良ければそこまで案内します」
案内してくれるというのなら、それを断るほどではない。親方のメモに書かれている住所を伝え、案内してもらった。
「こちらがその住所の場所ですね」
と、案内された場所は、小さいながらもなかなか良さそうな建物だった。もともと親方が使っていたのだから設備もきっといいものなのだろう。
「どうもありがとうございました」
騎士に頭を下げる。
「いえいえ、いいんですよ。これも仕事ですから。それと、名前を聞いてもいいかな?」
「名前?」
「これも、何かの縁だと思うんだ。見ての通り、僕は騎士だからね。機会があれば、僕も君に依頼とかしたいなぁって」
「それは、こちらから是非と言いたいところです。俺の名前は、シン。シン・クレイスト」
「シン君か。僕は、近衛二番隊副隊長ユーリ。ユーリ・トレイス」
自己紹介を終え、ユーリはよろしくと、さって行った。なんだかんだで最終的に仲良くなってしまったような気がする。けど、客をゲットできたのはいいかもしれない。
王都のでの生活は幸先良さそうだ。