prologue 出発
「お、発見!」
このポイントは正解だったらしい。鉱物の質もいいし、数もそれなりだ。
カンッ、カンッ、と洞窟内に音が響く。今ではこの音も、手応えも、なれたものだ。
「おら、坊主! 今日はもう帰るぞ」
その声に後ろを向くと、毛むくじゃらの小さいおっさんが立っていた。
「もうかよ。てか親方、今日は早くないか? いつもより収穫も少ないようだし…」
「ああ、近頃は王都の手がこの辺にまで及んできてな。収穫数を制限するように通知が来たんだ」
全く、なんて迷惑な。と、親方も怒りをあらわにしている。
「そうか、それは大変だな。」
ウチの鉱山なのに。俺も少し怒りを覚える。
「ま、確かに大変だしムカツクが、仕方ねぇわ」
それから、俺は親方たちと一緒に鉱山を出た。
俺はもともと、こんなファンタジーな世界にいたわけじゃない。やれ貴族やら、王族やらならマシだろう。ドワーフ、精霊、エルフ等々。おまけに科学ではなく魔法が発達と来たもんだ。俺はもともと、模範的とはいかないが、絵に書いたような高校生だった。クラスメイトとバカやって、部活頑張って。まぁ、彼女はできなかったけど。しかし、俺は死んだらしい。まぁ、それが予期せぬ死だった。有り体に言うなら神の不注意とでも言うべきか。
なんともべたな話だ。そんな作り話を聞いたことはあるが、まさか自分がなるとは。そして、そんなことがあるなんて思いもしなかった。前後の記憶が曖昧だが、それらしいことを言われ、生き返らしてやると言われ、気がついたときにはこの世界にいたのだった。
恥ずかしい話ばかりなので子供の頃の話は割合させていただくが、俺の実家はそれなりの貴族だった。俺はそこの次男として俺は生まれた。ただ、なぜ俺がこんなところにいるかというと、ウチを目の敵にしている貴族がいるらしく、一応の安全のため、俺はここの親方に預けられている。長男は家から離れるわけにはいかないのでそのままだ。まぁ、時々皆会いに来てくれるから気にしてないけど。
そんで、親方はドワーフ。俺は暇ついでに親方に鍛冶を教えてもらっている。
「そういえば坊主。お前、今日で成人だよな」
村に到着し、今日の成果を倉庫におさめているとき、親方は言った。
「そういえばそうだねぇ。それがどうかした?」
「どうかした? じゃねぇだろ。旦那からは許可をもらってるしな。お前、今日から自分の鍛冶場を持て」
一瞬親方の言葉がわからなかった。
「はい? なんでそんな話に」
「昔から旦那には話してたけどな。お前、どうせ次男だし家督は相続できないだろ。お前さえ良ければ自分の鍛冶場を持つのもどうかと思ってな」
どうだ? と言われても急なことなので非常に困る。ただ、興味はある。
「準備はもう出来てんの?」
「準備に関しては大丈夫だ。王都に昔俺が使ってた鍛冶場があるからな」
「そうか、それならやろうかな」
俺が返答をすると親方は少し驚いているようだ。なんで驚いているんだ?
「いや、てっきりもう少し悩むと思っていたのだがな。それでは明日からはじめるといい」
「でも、俺一人でやっていけるかな?」
「心配すんな。お前の腕だけは認めてやるよ」
おお、ここに来て嬉しい発言だ。親方もなんだかんだで認めてくれてたらしい。尊敬してる人に褒められるとこんなに嬉しいものなのか。
その日、俺はいつもより早くに眠り、翌日、王都へと向かった。