たこ焼き3題
「たこ焼き」
発明家がたこやきを食いたいというので、夕方に一寸は有名なたこ焼き屋さんに二人で行った。やはり、行列が出来ていて何故かカップルが多い、それなのにこっちは野郎二人で畜生って気持ち。
並ぶこと10分で10個入りを二つ買って寒空の下で冷たいベンチに二人で腰掛けてほかほかのたこ焼きに楊枝を刺して食べた。僕は、はふはふ言いながら、一個丸ごと口に入れ発明家は、半分齧ってはじっとその中を見て残りの半分を食べてていた。その食べ方が妙に気になった。
「その食い方ちょっと変だぞ」と言うと
「な・・・・ぜ?」と不満そうに返した
「なんで、そんなちまちま食うんだ?」
「た・・・こ」と彼は半分だけ食べてその食べかけのを見せた。
「はい・・・って、ない・・かも」
「蛸が入っているのを目で確認することが大事なのか?」彼は大きく頷いた。そして、指で店の看板をさした。
「シュレーディンガの蛸」
と書かれてあった。
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「たこ焼き2」
川辺で買いたてのたこ焼きの鋳型を使って蛸焼きを焼きながら、箒乗りと酒を飲んでいた。焼きたてのをころころってお皿に移したところで、箒乗りの手がすぱっと伸びたが、楊枝は空を切って敢え無くお皿に衝突したゴツン。
でも一個確実に無くなっていた。ちっと舌打ちをしてまた手を伸ばすとまた、空を切った。ゆっくりと手を伸ばしたこ焼きの正面につけてから突き刺そうとしたとたんにたこ焼きがいなくなった。
「なんだ!!なんでこうなるんだ?」彼女は、酒をかっくらって、するめを噛んだ。
「はてな?」と鋳型のメーカーをみるとハイゼンベルグと書いてある。すると・・・どうもこの鋳型で焼くとたこ焼きの位置が決められないということなのだろうか?と、彼女に言おうとしたところで
ずぶっと、彼女の楊枝がお月さんの伸ばした手の甲に突き刺さった。
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「たこ焼き3」
たこ焼きの入った透明な容器を押さえていた輪ゴムをはずしてふと錬金術師が言った。たこ焼きは、彼が持参したものだ。
「シュレーディンガの猫って知っているか?」また、このネタかよ。と思いつつ毒ガス発生装置とその中に入っている猫の話をした。
「まぁ、蓋を開けてみるまでは、猫の生死は死んでいる状態と生きている状態の両方の間でゆらいでいるってことでしたっけ?」
「まぁ、コペンハーゲン解釈によればそんなことだな」と彼は、勝手しったる人の家とばかりに押入れから勝手に酒を取り出した
「さて、今。この蛸焼きの蛸は、観察するまでは蛸が入っている状態と、そうでない状態の両方の状態がこの熱々どろどろの小麦粉の中でゆらいでいることになる」
「そんな、食べるまでもなく入っていなかったらたこ焼きじゃないでしょ」僕は、冷めるといやなので、さっさと一つをとって口に放り込んだ。
「う・・」僕は、思わず悲しい気分になった。
「タコが無いです。」
「やっぱりな」と彼は、酒をコップに注ぎながら言った
「これって、そういうものなんですか?」
「他にエヴェレットの多重世界解釈ってのがあってな」と一口飲む
「他の宇宙のお前さんはタコの入ったたこ焼きを食っているかもしれない」
「そんなぁ」
「まぁ、ここにいるお前さんはタコを味わえなかったが他のお前さんは、美味しい美味しいと言って食っているかもねぇ。」そして、自分でもタコ焼きを一つ口にいれた。
「やっぱりなあ」と苦虫をつぶしたような表情になった
「そこの屋台での残り物が妙に安かったもんな。」