74/155
烏、白鷺
「烏」
烏があまりにも急いでねぐらに帰ろうとするので、どうしたのと訊いてみたら何も言わずに行ってしまった。やがてお月さんの綺麗な夜に空を見ていると明かりに削られた夜の欠片が落ちてきた。欠けた夜の破片は蝙蝠になって徘徊するものだから夜の女王は闇を集めては繕ってゆくので精一杯のようだ。あまりにも慌てるものだから時々間違って烏を夜に縫い付けてしまうそうだ。
時々、羽がぼろぼろになった烏がいたらそれは闇に縫い付けられてしまい、必死になって逃げてきたもの。
「白鷺」
美しい白鷺も、夜になればこっそりと歌の練習をする。でも、余りにも下手なのでとうとう夜烏という別名を貰ってしまった。
「ねぇ、たまには白鷺のオスと交尾してみたいなぁ」とゴイサギの雌がお月さんにもらした
「どうして?」と聞くと「だって、みんなあっというまに終わってしまうんだもの」
と雌は体をくねらせて答えた。
「もっと楽しみたいわ」
「白鷺だと違うの?」とお月さん
「だって、よがらすなんでしょ?」
お月さんは、返事をしないで雲の中に隠れてしまった。