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リサイクル

「いらなくなった猫、飼えなくなった犬、増えすぎたハムスター、アレルゲンになってしまったウサギなどなど・・ご不要になりましたペットがありましたら無料にて回収いたします」朝から妙な声を響かせながら軽トラが町内を回っていた。懐かしいちり紙交換が廃れ、廃品回収もなんとなく廃れ、とうとう生き物までリサイクルかぁ・・と、ぼけた頭の中では不穏な想像が駆け巡った。

 ま、そういう事はないだろう。休日はゆっくり寝ていようと、最近とみに寒くなった朝の空気から逃れるために布団を被り直すと、ドアのチャイムが鳴った。布団から出るのが面倒なので居留守を使ってだんまりを決め込んでいたら電話が鳴りだした。全く、世間は僕に安眠をくれないのだろうか?

 受話器をとると、「やあやぁ、寝てないでちょっと出てこいよ!!」と何処かで聞いたことのあるような声がきんきんと響いた

「あ?なんで・・」

「いいからさぁ、出てきて手伝ってよ」

「なにを?」

「なんでもいいじゃん!出てこいよ」うううう・・っと呻きながら、速攻でズボンを

履いて、トレーナーを被った。なんたって、寒いのだ。

ドアをあけると、外には発明家が居た。

「あ、やぁ」とだけ言って彼は、片手に携帯電話を持ったまま歩きだした。

「電話は、あんたかい」と僕が言うと発明家はうんと頷いた

「何をするんだい?」と聞くとどんどんと前を歩き道路の脇に止めてある軽トラの助手席をあけて「の、乗って」とだけ言った。

荷台には、沢山のケージが積まれ中には沢山の犬猫などが鳴いていた。

「どうするのこんなに沢山の動物・・」

僕が聞くとエンジンをかけて、マイクに向かってしゃべりはじめた

「毎度、お騒がせしております。ペットの無料回収車でございます。増えすぎてお困りになったペット、血統書付き、雑種に関わらずに無料にて回収しております。なお、回収したペットは、綺麗にして再度飼い主を当方で探しますのでご安心してお預けくださいますようお願いいたします~」

そしてまた、マイクに向かってしゃべり始めた。しばらくすると、猫を抱いた女性がやってきて手を振って車を止めた

「はい、有難うございます。ただいま停車いたします。」止まると、彼はそそくさとマイクを掴んだまま降りた。

「まあ、白いチンチラの雑種ちゃんですね。可愛いですね。。はい、お預かりいたしますよ」

とマイクに向かってしゃべっているその大きな声で女性の声がよく聞こえなかったが

彼は、白い猫を受け取ると、助手席に座っている僕にそれを預けた。

「荷が一杯なので、お願いしますぅ」とマイクに向かって言った

「では、帰還しますぅ」

軽トラは、ヒューーーンというスーパーチャージャーの音を響かせてどんどん加速していった。どこかで生ガスが漏れているらしくガソリンの香りが室内にただよっていた。


 彼の研究室は、町の中央通りにある老朽化した廃ビル寸前の建物の中のある。

その建物に中に、泣き喚く動物達を運び込んだそして、その中の怪しげな一室には

ビニール製の硬いベッドが置かれ、そのベッドの上にはいろいろな動物の毛が飛び散っていた。

 彼は、僕が持ったままの白いネコを指さすと、その指をそのままベッドに向けた

そして「お、おさえて」とだけ言って、ネコの耳に毛の様に細いガラス管を当てた。先が針の様にでもなっているのかそのガラスの中を赤い血が毛細管現象で上ってゆくそして、採取した血を何かのガラス板の上に垂らして何かの機械の上においた、するとその機械の横にあるディスプレイにATGCの文字がとんでもない速度で流れて行くのがみえた。

「なんだいこりゃ?」

「しら、しらべている」と彼は答えた

「何を?」

「ゲ、ゲノム」

「何をするの?」

「ちゃ、ちゃんとお、おさえて」ネコは、僕に未だ押さえつけられており、それが嫌でひたすら逃げようとして身をくねられていた。やがて一つの液体が入った壜が機械から出てきた。

 彼はその液体を注射器で吸い取りそのまま白い猫に刺した。当然猫は暴れる、僕は押さえ込んでいる間に掌をおもいきり引っかかれた。

「なんか、虐待みたいだなぁ・・」僕がいうと彼は、ちょっと悲しそうな顔をした。猫はまだわめきつづけ、僕をひっかきつづけ噛み付きネコキック。。と考えられる攻撃を次々としかけてきた。

 そして、じわりと猫の様子が変わり白猫がいつの間にか色あいの良くない三毛猫になっていた。僕は手の傷の痛さと驚きで手を放した。ネコは、脱兎のように部屋の隅に逃げていった。

「これなに?」

彼は、ハンドマイクを握りしめた。

「これぞ画期的な、ゲノム変更ナノマシーンである。」狭い部屋で声が響いた

「この技術を使えば、流行に遅れたり、飼い主に飽きられたペットを再び魅力ある姿に変更できるのである。もうこの世に捨て猫、捨て犬、捨て蛇、捨てヨロイゴキブリなどは居なくなるのだぁ」

そしてマイクのスイッチを切った

「ど?、どう?」と小声で僕に同意をもとめた。とそのとき隣の部屋から、犬や猫がぞろぞろ出てきた

「これって全部遺伝子操作したの?」

「凄いだろう」とまたマイクに向かって彼はさけんだ

「でもさ、猫はみんな変な三毛猫だし、犬にいたっては大きさは千差万別だけど、柴犬のデフォルメみたいだけど」

「だって、格好いい犬猫って値段が高くて買えなかったからゲノムの元になるのがこれしか手に入らなかったの」

マイクに向かってまた叫んだ。

「で、みんななんとなく見栄えの良さそうな雑種にしちゃったってこと?」

彼は、うんと頷いた。



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