蟻
鉛筆を机の上で放りなげ、「できそうで出来ないんだなぁ」と錬金術師が頭をかきむしって言いました。
「何を悩んでいるんです」弟子がお茶を注ぎながら訊きました。
そして黄な粉をつけた蕨餅ーネットで調べて片栗粉で作ったものーが乗ったお皿を横に置きました。
「つまらんことさ、蟻をちょいと始末する方法さ」錬金術師は、皿の上のものには目もくれませんでしたが、お茶は手に取りました。
「発明家に言えばなにか作ってくれないですかね?」
「まぁなぁ・・」錬金術師は、あいつはろくなものを作らないしとお茶をすすりました。
「ゴマシジミとかだと、蟻の巣で蟻の幼虫を食べまくるようですよ、それなら環境にも優しいですよ」弟子はどこかで見たか聞いた話を思い出しました。
「んー、しかしねぇ。でもサイズがね」と錬金術師は、ガラス窓の外を指しました。弟子は、その指す方向をみて先ほどまで蕨餅が乗っていたお盆を床に落としました。
「なんですかあれ!」
「蟻だよ蟻」
タンポポがあちこちに花を咲かせている草むらには、犬ほどもある大きな蟻が3匹歩きまわっていました。
「あれを蟻って言うんですか?」
「見た目は蟻だろ」
「はぁ、確かに」
「脳みそは人並みだ。」錬金術師は、またため息をつきました。
「しかし、次元の穴を住処にして、時々あちこちに次元の狭間に勝手に穴もあけたりするバカ蟻だ」
「何でここに来たんですか?」
「さあな、聞いてみるかい?」
「遠慮します」
「殺せば仲間がどっと来るし、放っておけば勝手きままに徘徊するし、早くここに飽きてくれればいいのだけどね、妙に気に入っているらしい」
やがて、一匹の蟻がくしゃみをしました。
そしてもう一匹も残る一匹は口からよだれみたいなものをたらしていました。
「あーそうか」といって錬金術師もくしゃみをしました。鼻もむずむずしてきましたし、目も痒くなってきました。
「やつら花粉症の体質だったな。忘れていた」大きな蟻たちは、尻を向けて退散しようとしていまた。
「おい」錬金術師はまたくしゃみを連発しました。
「後ろの食器棚の2段目に、ガラス瓶に入った黄色い粉があるだろ・・あれを土産に投げてやれ」
「え、まさかそれって・・」弟子は、机の上の蕨餅をじっと見つめた
「きなこじゃなかったんで?」
錬金術師は、さらに大きなくしゃみをしたので、蕨餅にかかった黄色い粉が飛び散りました。