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雪だるま会議

 初春という言葉を霧散してしまう程に地球は遊んでいるかの様に突然に雪をふらせる。交通機関はすっかり麻痺してしまい。僕には嬉しい休みがころがりこんできた。しかし転がり込んできたのは、休みだけではなかった。

 コンコンというノックを聞いてこんな日に遊びにくる奴もいないだろうから、きっと何かの勧誘か訪問販売であろうと居留守を使った。

「開いているぞ」なにかマスクをしたようなくぐもった声だ。鍵をかけていなかったかと気づいてと玄関に行ってみれば、

 雪だるまがころころと入ってきた。それも、次々と4体ほど。雪だるまは、そのまま奥に突き進みコタツの周りに集まった。

「あんたらは何だ?」と言うのも馬鹿馬鹿しいがついつい言ってしまったからしょうがない答えも聞く気になれない。しかし4体の雪だるまは完全に僕を無視した。どれも同じ姿に見える古風豊かな純然たる和風雪だるまが互いに目くばせだけしている。その目も当然豆炭だし口は炭ときたもんだ


「さーて、第1回ゆきだるま会議を始めますぅ。」奥の雪だるまがのんびりとした口調で開始の宣言をした。

「か、会議ってここは僕の部屋だぞ」僕はその雪だるまに抗議した。

「何を言う外野。ここは23号室だな」が、外野だと?僕はこれでも野球をやらせればと言おうとしてやめた。僕は球技がダメな奴なので内野の様に球の行き来が激しい場所の守備はやらせてもらえないのだ。当然外野を守りつつ球が来ないことを切に願うのだ。

だから、そうだと答えた。背をむけた雪だるまがくるりと頭だけを回して僕を睨んだ

「ならば、本日の会議室はここだ」と言ってからコホンと咳払いをしてまたくるりと頭を元に戻した。

「では、最初の議題ですが火星移民問題となっています」右の雪だるまが小さい声で言ったこいつが進行役なのか?

「いよいよ来年の冬に火星の極に火星のテラフォーム化を目的とした移民船が行く事に決まり」おおお~っと他の3人の雪だるまが雄たけびをあげた。話の腰を折られ、右の雪だるまはコホンと咳払いをした。

「われわれ雪だるまも火星においてその遺伝子を伝える計画を立てようかな~と思います」おお~やれ~!とまたしても雄たけび、しかし雪だるまに遺伝子があるのか?僕は首をかしげた。

「では、発言の権利を決めたいと思います」と言うと右の雪だるまは先っぽが二股に分かれた枝でできた腕をくねくねさせて、一個のどんぐりを上手につまんでコタツ板の上でころんところがせた。

「に、2ですね」と左の雪だるまが言った。「で・ではぼ僕から発言しします」

「どこが2なんだ?ただのどんぐりじゃないか?」思わず口に出てしまった。

「馬鹿には、この賽の目が見えないのよ」背をむけた奴がまたぐるりと後ろをむいた。首だけ振り向くのは気持ち悪いからやめて欲しいが、雪だるまならそっちの方が簡単だろう「ちなみに、これはどんぐりではない、はしばみだ・・それにどんぐりという木の実はない、雑草という草が無いようにな・・」完全に馬鹿にされた。

「ち調査結果によよれば、かか火星には火星人がい居るようです。お、おもにタコという生物に似たちち知的生物に似ているといいいい言われていますが・・小さい緑色のヒューマノイド型とも言われています。」

「正確に分からないのか?」と正面のだるま

「ははは・・・い、ええ・・か火星年代記と呼ばれる本によればじ・・人類が移住してかなりの年月が経過しているよよ・・ようです」

「なに!?」とまた正面

「ニュースでは、人類初と言っているがこれは偽の情報であると?」

「そ・・そこまでは、不明です」と左の雪だるまはべそをかきそうになった。

「ほ他に、じ人類が既に移住しているとおおお思われる文献として、かかか火星の虹とかス・・スター・レッドとかがあります」

「おいおい、デジャー・ソリスを忘れていないよね」と後ろから僕が言うと

「火星のプリンセスなんかしりません」と正面の雪だるまが、一冊の本をぱっと後ろに隠したそしてびりっという音がして表紙のない文庫本が横に放り投げられた。

「あ、その表紙!!こら!!」文庫で一番好きな表紙を、デジャーソリスの姿が一番

綺麗な表紙をぉぉと言う僕の横面を、後ろ向きの雪だるまが叩いた

「「お父さんにだって叩かれた事が無いんだぞ!!」とは言うなよ。」と雪だるまが言った。

「表紙にはこだわらず、内容を吟味しなさい」

「どうやら、火星と人間の関係については、情報が不完全なようだな」後ろ向きの雪だるまが言った。

「し、しかしひとつだけか・・確実なことがあります」

「なんだ?」

「か火星には知的生命が居るか、今後居るようになります」そりゃそうだろうな。

「そんな!あたり前田の・・」と正面の雪だるまが大声を出し始めた時に左のやつがはしばみを投げた。

「3なら私だ」後ろ向きのだるまが口を開いた。「今回の乗組員は、4人」

僕はびくっとした。現在50人ほどの候補はいるが、さらに10人ほどに絞られたのち前日の健康診断によって乗組員が決まるはずなのだが?なぜこやつらは知っているのだ?

「船長にペリー・ローダン、電子技師にレジナルド・ブル、医師としてミスター・マリック、天文学者としてイルカが行くようだ」ペリー・ローダンが行ったのは火星じゃなくて月だろうがしかも登場人物を間違えているし。ぼくはちらりと本棚を見た。ローダンシリーズの一巻がない

「なぁに?イルカぁ」正面が叫んだ

「バンドウイルカじゃなかったかな?」右のだるまが言った。

「種類は尋ねていなぁい」正面が怒った

「バンドウだろうが、ゴンドウだろうがシャチだろうがそれは問題ではない、それよりもイルカを連れて行くということぉは、イルカの知性化に成功したということかぁ・・人類の文明はそこまで進んだのかぁ??・・」

正面は腕組をした。

「では、その乗組員にいかにしてコンタクトをとるかだ」また、はしばみが投げられた。「2かよぉ」と正面がうなって、即座に賽をなげた

「1・・僕ですか」と右のだるまも賽を振ろうとしたところを正面のだるまの手がそれを掴んで抑止した

「ず、ずるいっす」

「ずるいも糞もあるかぁ、それ意見を言え、今言え、すぐ言え」

「うーーむ」と右はうなった、そしてはたと手を打った

「コンタクトといえば、皆でを握って輪を作り、精神を集中する方法があります。」

「それは、ゆーほーって物を呼ぶときに使う手じゃないのか?」後ろ向きの奴が言った

「ゆーほーとコンタクトが取れるなら人間とコンタクトをとるほうがきっと簡単っす」右の奴は、自慢気に胸を張った。

「そーかなぁ?」

「恥ずかしいぞ」

「やややだ」

「大丈夫っす闇夜に紛れてやれば」

「闇夜にか?」

「あいつが見ているぞ」

「あああああいつって」

「雪が降っている日なら大丈夫じゃないっすかね」

「念が届くか?」

「雲に反射していいかも」

「え?反射だぁ?」

「アマチャハムって何か美味しそうなハムを趣味にしている人間が雲で電波が反射してどーのこーのって言っているのを聞いた事があるっす」

「雲があれば、あいつも見られないな」

「あいつってだれだ」と後ろから声がした。みれば、お月さんが酒壜を片手にして立っていた

「まだ昼っすよ」ゆきだるまがしどろもどろに言った

「今日は新月だそして新酒だぁ」と壜を高々と持ち上げた

「恐れいったかぁ」ゆきだるまがおー!って雄たけびをあげた。だめだ、もうできあがっている。

「おい!ゆきだるま!」お月さんがわめいた。

「そんなに火星に行きたいか」

「おおお~!」と4人のゆきだるま、あれれ議題は火星に行く話では無いでしょ?と不思議がる僕を無視して話は進む。

「それはそんな簡単なものじゃないぞ」とお月さんにしては珍しく神妙に言った

「宇宙にはいくつもの塵があってな、そのほとんどが氷とかなんだよ」

「ほほぅ」と雪だるま

「水の中にある結晶化した記憶に、宇宙からきた水の話が残っておりますな」

「なるほど、我々が宇宙に行きたがるのは帰巣本能って奴ですかな」

「そうじゃねぇよ、お前らの前に行った奴らが結構いるってことよ」お月さんはケッと酒を煽った。

「そして、どいつもこいつも彗星になっちまった」お月さんは、しくしくと泣いた

「いいいやはや、す・彗星もいいかも、た・太陽系から脱出して他所の恒星の重力井戸に落ちてみるのもいいかなぁ・は・はは」

「お前さん、言いこと言うっすねえ、それなら遺伝子をどうのこうのとみみっちぃことは言わないでここはどーんと、うちらで勝手に進出したみたいっすね」

「うん、それはもっともらしいかも」

「そうまでして行きたいのか?」

「いくいく」っと雪だるまが合唱した。

「じゃあ付いてこーい」お月さんと雪だるまは唐突に部屋を出て行った僕はやっと暖をとるためにコタツに入ろうとしたがやっぱり微妙に湿っていた。

ため息をついて、コタツに潜りこむのをあきらめこたつ布団を布団乾燥機に入れ酒を飲みながら乾くのを待った。そして、やっと乾くとコタツの中にもぐりこんで静かな時間を取り戻したことに奇妙な充足感にみたされて転寝をしてしまった


「こらーいれろ」って再びお月さんが帰ってきたのは暫くしてからだった。

その暫くとはどれくらいとは聞かないで欲しいなんせ寝ていたし、時計も見ていなかったんだ。

「ん?雪だるまは帰ったの?」僕は、ごろんとしたまま体を伸ばして電気ポットを傍に引き寄せるとお茶の用意をしてお月さんにも淹れてあげた。

「いや、職場に戻ってから雪だるまを火星にむけて投げてやった」

「え!?」

「投げたの?」

「そう、力一杯なげた」お月さんもずずっとお茶をすすった

「火星って動いているよね」

「ああ、動いている」

「軌道の計算とかは?」

「してない」

「すると、どこかに飛んでいかないか?」

「大丈夫、あいつは戦いの神さんといわれているのだろ

攻めも上手ければ、守備も大丈夫だよ、どんな悪送球もきちんと受け取るさな」お月さんは煎餅をかじった

「しかし、本当は遺伝子をどうのこうのって言ってたよ。あいつら」僕は蜜柑の皮をむいた

「別に伝えても伝えなくても雪があれば、ヒトはどいつもこいつも雪だるまを作る様に遺伝子に刷り込まれているって」

「そ、そんなものかな?」

「どの国にだって雪がふれば雪だるまはできるじゃないかあれはきっと遺伝子レベルの話じゃんないのかな」

「そうかな?うんそうかもね。」蜜柑は甘かった。

すっぱくなければ、他は別にどうでもいいや


計画は、肝心な所で何度か足止めをくらったが、やがて火星の極から雪だるまと一緒に映る乗組員の姿が送られてきた様子がテレビに映された


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