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蒸気
発明家は、ほっと胸をなでおろしていました。火を止めなければあやうく惨事になりかねなかったのです。バイオリン弾きに作ったばかりの蒸気オルガンを弾かせていたのであるが、調子にのっていたら、突然音が出なくなって、窯が真っ赤になっていたのです。
「水が無くなって空焚きしちゃったんだね」バイオリン弾きは窯の前に一緒に立って
あーあとぼやきました。
「結構いい音が出ていたんだけどね」発明家は、何も言わず蒸気を発生させる釜を長い鉤爪のある金属の棒をつかってそっと開けました。残りの蒸気が熱風とともに出てきました。そして、棒を釜の中に押し込んで中から何かを取り出しました。見れば、炭化した蒸篭でした。
「し・・しうまい・・を、わ・・すれてた。」
焦げた蒸篭から真っ黒なものが6個転げておちてしました。