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14夜

 十三夜の夜も更け、時計の針が全て12を指した時に突然にドアからお月さんを先頭に、まるでハロウィンの仮装部隊が突撃したように怪しい姿の連中が僕の部屋になだれ込んできた。

 何が起きたのか分からないまま呆然としている僕の前で連中は押入れを開けて布団を畳の上に放りだしついでに誰かが押入れに入って中でどかんと大きな音を立てたからたまったものでない、となりの25号室にすんでいる奴は結構大雑把な男なのであるが、ここまで大きな音を立てては、きっと大家さんに苦情を言うに決まっている。

「おい、こら」といって、怪しい奴らを押しのけて押入れに近づいて驚いた。でっかい穴が隣に向けて開いてしまったのだ。

「うほほーい」とその穴の向こうから大声がしたと思うと、どどどどどどっと大きな音を立てて仮装行列がその穴に向かって突っ走った。「あ、ちょっとまて、こらまて、おいおい」

と言いながら、まるで降りたとたんに乗る人の流れに負けてまた電車に押し込められるかのように僕は、隣の部屋に入ってしまった。隣の男は、格闘技もやっている筈なのであまり喧嘩はしたくないが・・・あれ?。

 そこには100畳敷きの宴会場が設置されていて。中では着物姿の狸や狐がお膳を持って右往左往しながらも、料理や酒を設置していた。

「こんにちわぁ」と九尾の狐が、手招きをして「今年もお月さんを眺めながらのみましょうねぇ」

とハスキーな声で言いながら会釈をすると仮装行列は、どんどんとこの部屋に流れ込んできた。面白いことに全部の席が埋まると、部屋がずるっと伸びて最後の畳がその後ろに畳を生み狐がほいほいとやってきて、座布団を置いてゆくので部屋はどんどん成長してゆくありさまだった

そして、中に入って座った順に酒を注文しては飲んで行くので、部屋の主賓席側といったらどんどん出来上がってしまうのである。僕といえば、最初に押し込められた口なので

その主賓席の方で散々注がれるままに飲んだ。「まったく」と隣にいた塗仏が漆塗りの器になみなみと盛った酒をのみながらぼやいた

「最近の共同住宅になんで4階とか、4号室とかあるんじゃ」

「そうさなぁ節操ないよなぁ」と”うわん”が同調した

「しかし、この部屋広いですね」と僕

「当たり前田のクラッカー」 否哉がぼそりと言った

「なんでお前は知らないんだ」

「へ・・」僕は、小さいグラスに入ったビールを飲んで

「そうですね、当たり前ですよね」っと意味もなく同調した

「いやいや、こいつは初めて見る顔じゃな?人間か?」また否哉がずっと僕に顔を近づけた

「天井が広いぞぉ!この天井は俺のもんだぁ」

と天井下が、天井からぶら下がったり、天井をやぶったりして暴れて通りすぎた

「おや、みなさんおそろいで・・」

とお月さんがふらりとやってきて僕の隣にヨイショっと言って座わると否哉の耳にぼそぼそっと耳打ちをした

「そうですかぁ、なるほど」 否哉はポンと扇子で自分の額を打って

「今回の大家さんでぇ」というと大声でビールもってこーいと手を鳴らした。すると狐がビールを1ケースをドンっと置いて去って行った

「まま、飲んで飲んでぇ」

注がれたコップを持って口に運ぶといつの間にかビールが無くなっていた。

あれ?とおもってまたビールを注いでもらって口に運ぶとまた無い・・

今度こそはと、じっと目を凝らしながら口に運ぼうと

すると僕の腕についた百々目鬼が腕から指に移動してぽちゃんとビールの中に落ちるとそのままゴクゴクと飲みきっていた。

「こら!」と払うとまた、僕の腕の中に逃げ込んで腕の中で目玉をぎょろぎょろさせるものだからはっきり言って気持ち悪い。

 僕は、酔っ払って横になったがまだまだ宴は続きそうだった。どこかで、野寺坊が大きな鐘の音を立ててお開きになったようではあるが・・


 ふと目を開けると、時計は12時丁度から1秒だけ経っていた。僕は自分の部屋で、づきづきする頭を抱えていた。

「わるいねぇ」とお月さんが言った

「まぁ、こんな世の中でさぁ、もともと闇に追われた妖怪達なにに、今やその闇さえ失われつつあるし住処が無いのだよね」

「まぁ、今夜だけ大目に見てやってよ。存在しない24号室で飲み食いをして、14夜を堪能したのだから」


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