表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
144/155

戯言

「多分、どんな地球の生き物より、俺ほど長生きをしている奴はいないな」とお月さんは自慢たらたらに言った。TVで、ご長寿さんのニュースをやっていたときだ。


「あんたは生き物なのかい?」僕は言い返した。「増殖しないじゃない」


「それは、お前らの定義だろ」お月さんは、じろっと僕を見た。どこか小馬鹿にした目だ。

「そりゃ、そうだけど。」確かにこの意味不明な存在に対して、僕はどう定義すべきか全くお手上げだ。


「お前らでいう処の大昔な」お月さんは、いきなり話題を変えにきた。「そうだな、おまえさん達がこの惑星に増え始めたころかな」


「はあ?」僕は、話題の急転換に困ってしまった。


「ある生き物が、此処を訪れたのさ」


「僕たちの言う、異星人だね」


「異星人・・・あるいは、異次元人かな?いずれにしろ、文明的にはメチャイケている連中さ・・・」

「それが、人類を知的生物に導いたとか?」僕の頭の中に知性化戦争という記憶が蘇った。作者はデビット・ブリンだったか?記憶に関わる事故後にライブラリで気に入った本だ。

「いや、ちゃう。」お月さんは、せんべいを食いお茶をすすった。「他の惑星の生物を知性化を推し進めるなんて、宇宙の覇権を欲しいやつには、自分の首を絞めるようなもんだ」


「むしろ暗黒森林?」また、有名な著作が浮かんだ。


「なにそれ?」お月さんは、あまり読書はしないのだった。


「いや、いいです。気が向いたら読んでみてください」


「どうせSFだろ、あんた好きだね」


「で、太古の地球に降り立った、メチャイケてる生物がなんだって?」


「うん、そいつらにとっては、地球は住むには快適でなくてね、でも飼っているペットには快適な環境でね。地球を、檻にみたててペットを放したのさ」


「どんな、生物なんだい?今でも居るの?」


「うん。居る。でも見ることはできないなぁ」


「なんで?」


「住んでいる次元が違うからね、もっとも重力は次元を越えて影響するから、あんた達の住む次元で生きているものも、ペットも同じように地球の重力井戸の中に住んでいる事になるね」


「ふうん、じゃあ互いに干渉できないのか」それじゃあ、格段面白いってわけではなさそだ、僕は急に興味を失った。


「いや、ペットにとっては、君たち人類に対して干渉する能力を持っているんだ」


「精神に寄生するとか?」突如として興味が興った。


「いやいや、もっと物理的にね。」


「食うの?」


「まぁ、そんなとこかな。人類は増えるし。生き餌として丁度良いらしいよ」


「とんでもない!」なんてものを地球に放したんだ。僕はお月さんのいうメチャイケてる宇宙人に憎悪を持った。


「は虫類とか飼育するとなれば、生き餌とか必要だろ?でもコオロギが減ることなんかない、同じようなものだよ。数多あまた居る人間が一日に100人消えたって、増える数に比べれば無いに等しいさ」


「消えるって・・・」あっさり言うなあと思ってお月さんを見た。


「ああ、あっちの次元からこっちの人間を、いっきにがぶり。雑踏の中で隣を歩いていた見知らぬだれかが、ふっと消える。そんな感じだと思うな」


「そいつは増えるんだろ?」


「いや、去勢されているからね。」


「ずっと一匹のまま?」


「ああ、幾星霜たった一匹で重力井戸の底に飼われている。」


「飼い主は?メチャイケてる宇宙人は?」


「さて、何千年も見てないなぁ。飼うのも飽きたのかもね」


「飼育放棄かい・・・ひどいなぁ」


「いやもっと酷い惑星では、去勢しないで、増えまくって多頭飼育状態でさ、そこの生物が根こそぎ絶滅した事もあるぜ。当然、そこで飼われていた生物も全部餓死した」


「酷いことをする」


「ただねぇ、その生物も、メチャイケてる宇宙人にとっては可愛くてね、飼う為に乱獲されてさ、地球に居るのが最後の一匹らしい」


「そいつにも寿命はあるんだろ?」


「わからない、でも殺せば死ぬし、餓死もする、病気で死ぬこともあるかもしれない。どれくらい生きるかは、誰もしらないのさ」


「でも、何時か地球だって、無くなってしまうのに、そうなれば、それも死んでしまうだろうね」


「そうだね、でも、その前に俺は地球の軌道からは離れているから、最期を見ることはできないかも知れない」


「なんか、可哀想な生き物かも」


「そいつは、自分自身、生きるために人類に自我を与え、繁殖を促したりもしたんだよ。なんだかんだとしたたかなんだぜ、可哀想ちゃ可哀想だけど」


「それって、知性があるの?」


「在るとも言える。ただ、ことなる次元ではコンタクトは難しいからね。小さな次元の穴をあけて、そこを通って愛らしい無辜の人類と接触を試みていたよ。穴は小さかったから、まるで蛇みたいな形状だったのが見ていて可笑しかったね」


「それ、どこかの宗教に似ているなぁ、生物の名って?」


「人間の言語では表わせないよ、あえて言えばルシファーとでも言うのかな?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ