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アゲハモドキとトラフカミキリ
「ものまねだって?どこがだ」アゲハモドキは櫛形の触覚を震わせて花に留まりました。
「だってそうじゃん」トラフカミキリが茎に掴まったまま言い返しました。
「どうみたって、化けそこなったジャコウアゲハだ」
「なんだてめえだって、下手くそなスズメバチみたいな模様をしているじゃないか」アゲハモドキは花の周りを飛び回りカミキリの姿を揶揄しました。
「なんだと!!」トラフカミキリは、小さい顎を開いて怒りました。
「まぁまぁ」と暗がりで休んでいた。ジャノメチョウが上下にはずむように飛びながらやってきました。
「ヒトだって、他のヒトの真似ばかりしているんだからさ」
「だから?」アゲハモドキとトラフカミキリは言いました。
「真似をするってきっと高等な動物の証だよ」
「へぇそうかな」と二匹が自己満足をしていると
白い捕虫網が二匹をふわりと包みこんでしまいました。
「おまえさんのどんくさい網にかかるなんぞ」お月さんは言いました。
「きっとそんな話をしていたのさ」




