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東方現葉幻詩  作者: 風三租
第二部 たのしいサバイバル
8/44

行雲流水、ばかばっか

オリキャラのみです許してください。



 目が覚めるとそこは森の中だった。


「いや私は何故こんな場所で寝てるんだ」


 私、木葉緑は森の中で寝るような変人ではございません。ちゃんと毎日お布団敷いて寝ています。

そんなに長く寝てなかったのか、あるいは丸一日寝ていたのか、辺りは明るい。

 

「……ああ、そうか。そうだった」


 だんだん頭の中がスッキリしてきて、自分のした事を思い出せるようになる。

 何を考えたのか私は突然発狂し、幻想郷へ無性に行きたくなったんだ。そこで私は山を駆け巡り、森を走り抜け、最終的に現世版博麗神社の前まで出た。

 走り過ぎた所為なのか、その時体が異常にだるくなって倒れ込んでしまい、今に至るという訳だ。今思うと無性に恥ずかしい。

 だったらさ、目の前に博麗神社があるはずだよね。


「博麗神社はどこに消えた……」


 無いんだよ。360度全方位を見回してもどこにもない。


「幻想郷に来られたのかなー……って、そんな事ある訳ないか」


 幻想郷から外の世界に出る事は出来ても、逆は無理らしいからね。


「私はなんて馬鹿な事をしたんだ。……すっかり頭が冷えた。よし帰ろう」


 とは言ったものの、博麗神社が無い為、自分がどこに居るのかが分からない。目覚めた時に向いていた方向と逆に進めば、村に着くかな。


「ぎゃーす」

「うわ!? この声は大学受験のストレスで頭が残念な事になった山田さんの声か!?」


 一歩踏み出そうとしたら、不意に横から何と表現したら良いか分からない、微妙な声が聞こえた。山田さんは私と同じクラスに在籍している元友達の事だ。

 身の危険を覚えた私は、すかさず振り向く。相手の不意打ちを予防するために、前後にステップをして身構えるという器用な事は出来ない。


「何コレ……」

「ぎゃーす」


 何だかよく分からない白くもっさもっさした物がこちらを見て(?)いた。


「キモチワルイ……」

「ぎゃーす!」

「ッッ!!」


 私の言葉に怒ったのか、白もっさもっさがいきなり光弾を吐き出した。咄嗟の事に反応出来なかったが、幸いなことに私のすぐ横を掠めただけで大事には至らなかった。光弾はそのまま直進して私の背後に立つ木に当たり、乾いた破裂音を発して消えた。


「はぁ!?」


 ……奴は危険だ。千を越える生命の危機を乗り越えてきた私には分かる。嘘だけど。


「とにかく逃げなきゃ!」


 白もっさの挙動を伺いつつ、私は逃げだした。走って寝て起きて走って、一体私はどれだけ走れば気が済むんだ。


「体がなんか軽い! まるで生まれ変わったようだ!」


 走りながら後ろを振り返ってみるが、白いのは……追って来てるのか? 奴のスピードが遅過ぎて、どんどん距離が開いていく。

 あっという間に白は見えなくなったので、もういいかと思い立ち止まる。


「あんなのが居るって事は……本当に幻想郷に来られたのかな?」


 私達の世界では、あんな危険な生物は存在しないだろう。ここは幻想郷で、あれは知能の低い妖怪だと言われた方が納得出来る。


「で、ここはどこ」


 ちゃっかり村の方向だと見当を付けた方へ走っていたのだが、道路も建物も見える気配がない。大自然だ。


「本当に本当に幻想郷に来られたの……?」


 一層期待が膨らみ、ほとんど確信の域にまで達する。


「なんだ。普通に来れるじゃん」


 ならばもう少し歩けば人里に着くかなと思ったところで、後ろから物音が聞こえる。


「おまえ、つよそうだな!」


 ……今度は何だ。一歩進む毎にエンカウントなんて嫌だぞ。


「いえいえ強くないですよ。弱いですよ。弱いから私とはさよならですね」

「そうか、つよいのか! たたかおう!」

「……」


 言葉が通じない種類の人種だった。エンカウントは免れないようだ。

 次の行動をどうすべきか考えるために、相手を観察する。

 頭に二本角が生えた黒髪のお姉さん。ファイティングポーズをとっている。これは妖怪ですか。見るからに妖怪ですね。今の私はちょっとやそっとじゃ驚きませんよ。成長しましたから。


「逃っげろーー!」

「あ! こら! まて!」


 私と妖怪の追いかけっこパート2が始まった。




・・・・・・・・・・・




 ヤバイ。大分走ったが、全然距離が開かない。いつの間にか森を抜け、見はらしの良い草原に出てしまった。これでは隠れる所が無い。

 白もっさもっさみたいに光弾は撃って来ないから良いものの、このままずっと追いかけっこをしていれば、疲れにやられてしまうだろう。


「ストーップ!! 止まれ!! 止まって!! 止まってください!!」

「お! たたかうきになったか!?」


 相手は全く疲れていなく、私もあまり疲れてはいない。今日の私は絶好調なのだ。


「いいですよ。戦ってあげますから。今度ね」

「それじゃあはじめるぞ!」


 言葉が通じないんだった。コイツはあれだ、バカだ。話す言葉が全部平仮名だし。それならそれなりの対応がある。


 妖怪が私に直接攻撃をするべく、こちらに走って来る。


「ふん!」

「うわーやーらーれーたー」


 あまりにも正直な直線攻撃だったので、しゃがんで避けて、そのまま寝っ転がり敗北の意志を示す。

 これこそが私の作戦。よっぽどのバカなら、これで満足して帰ってくれるハズだ。


「どうだ! まいったか! とどめだ!」

「ええっ!?」


 しまった。止めの事を考慮してなかった。

 目の前の妖怪は拳を自分の頭より上まで持ち上げ、寝転んでいる私に狙いを定めた。


「ひっさつ……」

「まずっ!」


 妖怪が挙を振りおろす直前に、私は横に転がり、更に前転をして妖怪の視界の外に出る。


 ガンッッ!!


 瞬間、妖怪が放ったパンチで、地面にクレーターができた。ええええええええええ何ソレええええええ。


「お? いなくなったのか? ……そうか! あたしのちからがつよすぎて、なにもなくなっちゃったんだな!」


 ああ勘違いしてくれた。良かった……少し予想と違う流れだったけど、結果は一緒だ。今の内にそっと距離をとろう。


「もっとつよいやつだとおもったのに。まあいいや。ねよう」


 満足したのか妖怪はその場で寝てしまい、私はそっと立ち去る必要が無くなった。予想を遥かに超えるバカだった。


「…………」


 さて、のんびり人里でも探すか。前方には山、それ以外には森がある。どうしよう。


「……うわっ、またか」


 取り敢えず後ろを向くと、今度は白に近いピンク色で、セミロングな髪型をした幼女が、腕を組んで仁王立ちをしている姿を発見した。

 これで3連続エンカウントだ。もう飽きてきた。


「何やら尋常でない妖気を感じて来たは良いが……只の小鬼と小僧か」


 幼女に小憎と言われた。これは年上に対する口の利き方と日本語を教えねばならぬ事態だ。


「ふむ。……そこの小妖怪。お前の能力は何だ」


 そこの小妖怪と聞き、私は後ろで眠っている小鬼と呼ばれた妖怪を見た。


「お前じゃお前」


 小鬼ではなく、私の事を呼んでいるようだ。


「へ!? 私は人間ですよ!?」

「そんな妖気を持った人間がおるか。さっさとお前の能力を教えろ」


 前々から普通じゃない普通じゃないと言われて来た私だが、とうとう妖怪と呼ばれるまでになってしまったらしい。私は悲いよ。


「……能力?」


「ああもうそんな事も理解出来ぬか小妖怪め。要するに、自慢出来る力じゃ。ちなみに我は自然を操る程度の能力を持っているぞ。ふふん」


 初対面の幼女に頭が悪いと言われ、自慢もされ、心が挫けそうになる。土下座して謝って終わりにしよう。


「すいません何も出来なくてすいません」

「そんな阿呆みたいな力を持ちおって何の能力も使えぬのか無能め。宝の持ち腐れじゃな」


 土下座してもさらに続く幼女の暴言。言い終えると黙り込んでしまったので、ちらりと様子を伺ってみると、何かを考えているようだった。


「……ふむ。これはやってみる価値があるか。……おいお前、我について来い」

「え?」


 最終的に私をお持ち帰りすると決めたようだ。私よりちっちゃい子にここまで偉そうにされると、却って清々しい。


「本当に理解に乏しい奴じゃな。我が世話をしてやると言っているのだぞ。感謝せい」

「いきなり何だ君は」

「態度も傲慢と来たか。これは育て甲斐がありそうだ」


 傲慢な態度の子供に傲慢って言われた。しかも私はこれからこの幼女に育てられるみたいだ。


「君は私を襲わないの?」

「は? ……はっはっはっはっはっはっはっはっは!」


 私の質間を聞いて、幼女は爆笑し始めた。私には理解出来ない何らかの壺にはまったようだ。


「はっはっはっはっはっはっは、はーはっはっはっはっは!」

「笑い過ぎ!」

「はっ、はっ、は。……ふはーはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」

「……私、何か悪い事でもしましたでしょうか」


 一瞬止まったと思ったら、私の顔を見てもう一度笑い出した。私は逆に泣きたい気分だよ。


「はっはっはっはっはっはっはっ息がはっはっはっはっはっはっはっは!!」

「……」

「……ふぅ。我と戦いたいか! 1秒と持たんぞ!?」

「いや、戦いたくないです。うぅ……」


 小っちゃい子に泣かされる、もうすぐ大人の人の図。大層シュールな光景なのだろう。


「お前が居れば、これから面白くなりそうじゃ! 我は龍巳神水(たつみのかみみな)! さあ付いて来い!」


 勝手に決められたけど、襲って来ないのなら、他に頼れる人も居ないし良いか。プライドなんて言葉はすでに木端微塵に砕け散った。誰の世話でも受けてやる。

 そうして私は、歩き出す水の小っこい背中を追った。


「私は木葉 緑です。……お世話になります」




・・・・・・・・・・・




 草原を小鬼の寝ている方向に進み、再び森の中に入った。小鬼は全く起きる気配が無かったので、普通に横を通り抜けられた。水なんて小鬼を踏んづけたし。

 この方向には山があるので、だんだん坂道になってきた。ふとここは妖怪の山周辺の地形に似てるな、と思った。


「そろそろ我のねぐらに着くぞ」

「どんな所なの?」

「うむ。暗くて狭くて湿ってて、良い所じゃぞ」

「最悪じゃないか」

「何を言う! この辺りではちょーこうきゅーぶっけんだ!」


 価値観が分からない。そう言えば、この子は人間なのか妖怪なのかまだ聞いていなかった。まあこんな常識外れの事をする位だから、妖怪なのだろうが、念の為に聞いておこう。


「えっと、水は人間?」


 龍巳神さんと呼ぶのは長くて面倒だし、相手は子供なので、名前で呼ぶ事にした。


「ん? ……どちらかと聞かれれば、妖怪か?」


 質問に質問で返されても……。まあ妖怪って事で良いのだろう。


「出会った時から人間に拘るな。あんなの猿の進化形態だろう。緑とは似ても似つかんぞ」


 水の言い方だと、人間は猿っぽいみたいだ。原人か? 幻想郷にそんなの居たっけ? いや、ここが幻想郷だというのは私が勝手に決めつけた事だ。違うかもしれない。


「ここは幻想郷?」

「幻想郷? 何だそれは。そんなもの聞いた事無いぞ」

「じゃあここはどこ?」

「難しい事を聞くな。説明出来ん。強いて言えば、ここは何処でもない」


 対応に困る返答だ。でもここが幻想郷ではない事が明らかになった。博麗神社が無くて幻想郷ではなく、妖怪と猿みたいな人間は存在する場所。私が居た世界ではないのは確かだ。

 一瞬タイムスリップの可能性が思い浮かんだが、流石にそんな事は無いだろう。

 しかし、そういう事にでもしておかないと、この状況が説明出来ないのも事実。

 

 では試しにこの仮定を使って考えてみようか。

 “現代ではない場所には、現代人が存在しない”というお題がある。

 そのお題の意味と順序を逆にすると、“現代人が存在する場所は、現代”だ。

 “現代人が存在する場所は、現代”というお題は正しいと言えるので、それを2回逆にした“現代ではない場所は、現代人が存在しない”というのも正しいのではないか。裏の裏は表という事だ。すなわち、ここは過去だと証明された。

 うわー、暇つぶしに突拍子のない事考えただけなのに、以外に証明出来るものなんだね。無茶苦茶な理論だったけど。


「おお。そこじゃそこじゃ」


 いつの間にか目の前に断崖絶壁が現れていて、水の示した範囲を見ると暗ーい洞窟があった。

 これ以上ここはどこかを考えてもどうにかなる訳じゃないし、成り行きに任せるとしようか。


「あれが超高級物件なの……?」

「そんな残念そうな顔をするでない。住めば都かも知れんぞ」

「私は文句を言える身分じゃないです」

「それもそうじゃな。それにしても腹が減った。昼飯にするぞ、手伝え」


 水の言葉を聞いて、私も空腹な事に気付く。今は昼時なのか。こんな所で出される物って何だろうか。ちゃんとした料理が出るとは思えない。でもサバイバルっぽくて面白そうだ。


 洞窟に入ると、そこは案の定真っ暗だった。私がひゃーと言ってる横で、水は手から火の玉を出し、焚き木に火をつけた。


「うわ何なのその力」

「驚く事ではない。火は自然。この程度は我にとって造作もない」


 そうだった。会った時に自然を操る程度の能力を持っているって自慢されたのだった。


「我は肉を用意してくる。緑はこの奥から酒を運んで来い」

「は? 酒? 駄目! 小さい子がお酒飲んじゃ駄目でしょ!」

「……」

「……?」

「……はっはっはっはっは(以下略)」


 また爆笑し始めた。なんか無理して笑っているようにも見えるんだよなー。


 水の笑いがおさまるのに5分少々かかり、その間私は、ただうなだれている事しか出来なかった。


「……緑は面白い事を言う奴じゃな! 子が酒を飲むなと言う決まりが何処にある! 第一我は、万を生きる妖怪ぞ!」

「……万?」

「そうは見えぬか!? 我もまだまだじゃな!」


 万なんて有り得ないだろう! ……と思ったが、妖怪には常識が通用しない。もう有り得ないとは考えないで、全てをありのままに受け入れよう。また一つ成長を遂げる私である。


 水が本当に何万年も生きているというのなら、色々知っている事もあるだろう。


「えーっと、水の生きてた中で、人間が栄えていた時ってある?」

「また人間の事か。奴らはつい最近出現したばかりだと言うのに、我が物顔で生活しておるよ。全く、迷惑な生き物じゃ」


 そうですか。もうここは過去って事で良くない? 色々と説明つくし。ということで、私は原始時代に来てしまったのでしたー。


「しっかし、緑は酒を知っておるのか。我のおりじなるな飲み物だと思ったのにのぅ、つまらんのぅ」

「オリジナル?」

「うむ。我が採っておいた果実を放置していたらな、何やら良き匂いがするようになってな、食ってみたら良い気分になれたのじゃ」


 内容が内容だが、今の水のうれしそうに説明する姿は、見た目相応に子供っぽく可愛らしい。


「それでな、研究に研究を重ね、ついに量産化に成功したのじゃ! ここまでするのに千年もかけたのだぞ! ふふん」


 こんな小さいのに、ずっと独りで生活してたのかな。私が居ることで、その寂しさが紛れてくれれば幸いだ。上手くいけば、ずっと世話してもらえるかもしれないし。


「そんな事より飯じゃ。直ぐに戻って来る! 持っておれ!」


 そう言って、水は目にも止まらぬスピードで駆けて行ってしまった。




・・・・・・・・・・・




「ほら美味いぞ飲め飲め飲め飲め」

「いやぁ! あと2年! あと2年待って!」

「我の酒が飲めぬと言うのかー!」


 昼食時、私は幼女に酒を強要されていた。現代でも同じような事をされた覚えが有るような無いような。


「あと2年! いっぱい生きてるんだからその位待てるでしょ!」

「むぅ……つまらん。何故そんな自分を縛る。良いではないかほれほれほれ」


 考えて見れば、ここが過去なら法律なんてないし、特に酒を禁止する理由なんてないなーと思った。興味あるし、少し位なら良いかな……。


「って、ダメ! ぜったい!」


 毅然とした態度で勧誘を断わる。そういう勇気が大事なのです。


「むぅ……頑固じゃな。もう良い! やめだ! 外に出るぞ! 来い!」


 水は怒って外に出てしまい、私もそれを追う。後片付けは後でいいや。


 そして、洞窟から出て直ぐにある、木々に囲まれた小さなスペースまで来た。


「緑の実力が見てみたいんじゃ。手始めにそこにある木を一本折ってくれぬか?」


 水が示したのは、周りにある木と同じような太い木だった。


「無理」

「遠慮するな。ガツンとやって良い」


 無理だよ、無理に決まってる。でも、そんな期待の眼差しを向けられたら……見た目年上の私はやるしかないじゃないか。


「とりゃーーっっ!!」


 ボスッ。


 私はその木に向かって全力で飛び蹴りをしたが、聞こえたのは悲しい音だけで、ビクともしなかった。


「……」

「……」

「ん?」

「……」

「お、終わりか……?」

「うん……」

「え、その、緑が持ってる妖力とか、使ったりしないのか?」

「そんなの持ってる自覚はないし、持ってたとしても使いこなせません」


 私の言葉に水は溜め息をつき、頭を垂れ、背中を曲げ、膝をつき、手をつき、終いには地面に倒れこんだ。落担を体全体で表現したようだ。

 水は倒れた状態で、私に話しかける。


「……能力を発現させる以前に、基本的な事から教えねばならぬようじゃな」




・・・・・・・・・・・




「まず緑には、妖力を感じ取る事を知って欲しい」


 立ち上がって身なりを整えた水の、第一声がそれだった。


「我が緑に向かって妖力を流すからな、何か変化があったら言ってくれ」


 そう言って、水は私に小さな手を向けた。が、特に変化はない。


「……」

「何も感じぬか?」

「うん」

「じゃあもっと強めるぞ」

「……」


 何の変化も起きない。妖力って言うと何か恐いな、殺気と同じ様なものだと思ってしまう、と他の事を考えられる程の余裕がある。


「む。もっとだ」

「……」

「もっと」

「……」

「まだ何も感じぬのか」

「……」


 向こうはどんどん妖力を強めているらしいが、私には水が「ストップ!」という姿勢をしているようにしか見えない。


「まだなのか」

「……」

「鈍い奴じゃな」

「……」

「何か反応してくれ」

「……」

「チッ……」


 うわっ、舌打ちした。そんな事されても感じないものは感じないんだよ。


「ああ焦れったい! 一気に100倍じゃ!」


 水は目を閉じ、集中する。その瞬間、私は何だかパッとしない気分になった。


「おお?」

「……何か、変わったか……?」


 水は、集中している上にすごい力を使っているっぽいので、言葉が途切れ途切れになっているのだろう。


「んー、もうちょっと強く」

「……まだ、なのか」


 水は眉間にシワを寄せ、汗をかき出した。私の方は、あと少しで何か掴めそうな気分で、それが何かを思い浮かべるのに必死だ。


「おお! もう少し、もう少し!」

「……」

「いいぞ! 頑張れ頑張れ!」

「……」


 水が黙り込むようになってしまい、さっきとは逆の立場になってしまった。


「うわ! 分かってきた! 何というか、あやしい雰囲気かな?」

「……ぐ、も、もう良いか……?」

「もーいーよー」


 私が許可すると、そのあやしい雰囲気は消え去り、水は再び倒れ込んだ。


「はぁ……はぁ……こんなの、鈍い所の話ではないぞ……」

「そんなに酷いの私!?」

「……普通の生物が、こんな量の妖気を浴びたら、恐怖の余り、自ら命を断つ位じゃ……!」


 なんだって! この子私を殺す気だったの!? それよりもあんな危険な物を浴びて生きてる私ってどうなのよ!?


「……考えられる原因は2つ。……生死も理解出来ぬ程知能が低いか、緑が持つ力が強過ぎて知覚の基準が高くなっているのか……」


 生死が分からない程私は馬鹿じゃない。だからといって、私の持つ力が強いと言うのも買いかぶり過ぎだと思う。

 でも会った人みんな、口を揃えて強い強いって言って来るんだよな。……もしかして私って天才?


「……恐らく後者だろう。……まさかここまでとはな、ふは、ふはははははははははははガクッ!」

「死んだー!!」


 長い感想を言い終えた水は、疲れに耐えられなかったのか気を失ってしまった。

 何万年も生きた妖怪に勝った私は、激しい自己陶酔と共に、その妖怪をおんぶして洞窟に戻った。






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