表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方現葉幻詩  作者: 風三租
第四部 セールスお断り
42/44

幽愁暗恨、油断をするな。

前回のあらすじ



 八雲家は、昔の記憶と変わらず、森の中にひっそりと佇んでいた。

 風景を頼りに、それっぽい所をシラミつぶしに探して、ようやく見つけた。時には木の上から現在位置を把握、時には運に身を任せ、薄暗くなる頃に到着した。


 家からはオレンジの光が漏れ出し、小さな煙突からはケムリが立ち上っている。ちゃんとヒトがいるようだ。

 玄関の扉を軽く叩き、出迎えたのは八雲藍。藍先生だ。


「遅かったな」

「お久しぶりー」

「紫様が昼頃、緑が来るってね」


 縄張りに入った時点で、大体バレるのだ。知ってたなら近道作ってくれればいいのに。


「その紫様はどちらに?」

「今は外出なさっている。ま、晩ご飯用意したから、食べて待っているといい」


 あら以外。もっと不遇な扱いを受けるかと思った。寝てろ、とか。来ると分かっていて主人が出掛けるから、変に構えたりされていないんだ。きっと。どうでもいいとか思われているんじゃない。

 扉を開けっ放しにして、藍先生は台所へ。火を使っている最中だったらしい。


 生活感溢れる純日本家屋は、天狗の旅館と違って落ち着く。金持ちは敵である私からしてみると、ここ最近の建物で、一番過ごしやすい場所だと評価する。温泉はよかったけど、住むならやっぱりこういう所でしょー。


 なんだか楽しくなってきて、目についたフスマを全部開けてみる。台所兼玄関兼食事部屋と、他三つの部屋でできた正方形の家は、私の手によって一つの大きな部屋となった。


「ちゃんと閉めて。怒られるぞ!」


 怒られるぞと、怒られてしまったので、渋々部屋をもとの形に。している途中、部屋の隅っこにスキマを見つけてしまった。空間のスキマの中は無数の目ん玉がせわしなく動き、相変わらずであった。


「できたぞー」


 私に近づいてくる藍先生。


「何見てるんだ?」

「スキマがある」


 二人してスキマの中を覗き込む。でも連結先は見えず、目ん玉達とにらめっこすることに。

 進展がないと見ると、藍先生が我に返ったように、私の肩をつかんだ。


「ほら、紫様仕事中だから! 迷惑掛けちゃダメだ!」


 肩を引っ張られ、私の体は後ろに持って行かれる。

 すると不幸にも、畳みに直置きにされていたナイトキャップが足下に。変な重心の私は抵抗する術もなく、そのナイトキャップに足を滑らせ、すっ転んでしまう。

 転んだ拍子に飛んで行ったナイトキャップは、天井近くまで舞い上がり、タンスの上に偶然置かれていたツボに直撃。

 ツボが確実に落ちる程揺れるのを見て、慌てて藍先生は落下地点へ。なんとかツボはキャッチできたが、ツボに引っ掛かっていたナイトキャップが藍先生の顔にのる。

 いきなり視界が消えて「んおー!」と、ドタバタし始めた藍先生を止めようと、私が立ち上がる。

 だが、私が行く前にナイトキャップは外れて、藍先生が落ち着く。するとツボの中から、黒い虫がカサカサと這い出てきて、驚いた藍先生はツボを私に投げてくる。

 虫はそのときはがれ落ちたが見えたので、迷わずキャッチ。そして床に置く。一方で、どうやら虫が藍先生の尻尾に入り込んでしまったらしく、藍先生がクルクルと回り出した。

 自分の尻尾しか見ていない藍先生は、もう私のことなんてアタマにない。

 もっさりと重量を持った尻尾が、私の体に直撃して、今度は私が吹っ飛んだ。ヒトの体重を尻尾で受けた藍先生も、姿勢を保てず、回転を失ったコマのように倒れ込む。


 私が吹っ飛んだ先、藍先生が倒れ込んだ先には、スキマがあった。

 人間式ループ・ゴールドバーグ・マシン。




・・・・・・・・・・・




「お前のせいだぞ!」

「藍先生がそんなでっかい尻尾もってるからじゃん!」

「大体、お前がひとんちの中歩き回るから!」

「細かいこと気にするねえ!」


 スキマは大きな屋敷につながっていた。とは言え、いきなりど真ん中に出たのではなく、敷地の外である。高い塀に阻まれて、中の様子は分からない。

 すぐに帰ろうとしたけど、何故かスキマはなくなっていて、見知らぬ場所に残された私達は、ケンカしかすることがなかった。


「どうしてくれるんだ! 絶対怒られるぞ!」

「元はと言えばあんな所にスキマ置いとく紫さんが悪い!」

「えっ」

「触られたくなかったら仕舞うでしょ!」

「……」

「ね?」

「……そ、そうだな。紫様が悪い! うん。最近だらしないからな!」


 あっさり懐柔できたのは意外だった。色々と大変らしい。


「この辺に紫さんいるでしょ。まず探し出さないと」


 スキマの主が出口にいなかったら、ここに出た意味がなくなってしまう。単に私達を落とすための罠だったとしても、何の特にもならない。式神の藍先生をどっかに飛ばしたら、むしろ損だ。

 でもあのヒトなら絶対やらないとは言い切れない。面白そうだからと、こういう所に飛ばし、帰ってくるまでの時間を計って遊ぶのだ。


 そうじゃないといいな。屋敷の中にいるだろうと見当をつけ、藍先生と一緒に長い外壁を回る。辺AB上を一定の速さで動く点Pである。

 左に一回曲がっても入り口は見つけられなかった。なので次の角でもう一度左に曲がろうとしたとき。


「しっ。なにかいる」


 藍先生が何者かの気配を感じて、私の服を引っ張った。


「(さっきそれで事故ったんだからね!)」

「(うっさい!)」


 角Cから少しだけアタマを出して覗き込む。入り口らしきものは確認できないので、ここが四角形の屋敷なら、私達は遠回りをしてしまったのかもしれない。でも、なんかいるのは見える。


「んほー。かわゆいのう。ヌシもそう思うだろう」

「いえ見えませんから」


 いい歳した老人と、それを肩車する若い男。


「あ、ほら笑っとる。何か来たんだろうか」

「そろそろ降りてください」


 ノゾキである。極めて悪質なる一連の行為に、私達はアタマを引っ込めて小会議を開く。悪は成敗しなければ。


「(アレはマズいよね)」

「(そうだな。畜生道に落とすべき悪行だ)」

「(行こうか)」

「(勿論)」


 二人に気配を察知されないように、気持ち回り込んで、静かに接近する。相変わらず覗き行為を継続する変態には、天罰を下さねばならない。


「ん! あれは誰だ!」


 覗きジイさんがいきなり大声を出したので、見つかってしまったと危惧したが、大丈夫であった。屋敷の中の様子を、ただ実況しているようである。

 覗き魔の真後ろで待機する私は、藍先生にゴーサインを出す。藍先生が首を振ったので、手で三秒間カウントして。


「奇妙な装いのアヤツは……、もしや妖——」

『ナァニやってんだ!』


 二人に向かって大きな声で、声高らかに、自信を持って叫ぶ。藍先生とのタイミングは見事に一致し、その威力は倍に。


「ぬわっ」


 肩車をしている方が驚き、前のめりになって崩れ劣る。しかし老人の方は至って冷静で、数秒間外壁の屋根にしがみ付く。屋敷の中と私達を見比べて、唸ってから着地。


「しっかりせんか未熟者!」

「申し訳ないっ!」

「刀を貸せっ!」


 体勢を立て直した若者をよく見ると、大小二本の刀を腰に差していたのが認識できる。暗い中、黒い鞘に収められた刀は見えにくい。

 老人は小さい方の刀を抜き取ると、屋敷の入り口方面に走って行く。


「なんで貴女達がいるのよ」


 角を曲がろうとした老人の前に、紫さんがスキマを開いて現れる。スキマから下りる紫さんは、老人に構わず、冷たい視線を私達に向る。老人が刀を抜く傍らで、私達は後ずさってしまった。


「おのれ妖怪! その穢れた命、刈り取ってくれるわ!」


 覗き魔が何言ってんだ! ていうかおまえら人間か!

 老人が紫さんに犯行を声明すると、紫さんはようやく老人に目を向けた。そっちはそっちでいいけど、こっちにも一人いる。


「貴様らも妖怪か!」


 若者が藍先生の尻尾を見ると、刀を抜いて、私達に向かってくる。この覗き幇助罪! やってて恥ずかしくないのか!

 私に下がっていろ、と藍先生が前に立つ。その際、私の体を押しやるものだから、バランスを崩して転んでしまう。またかよ!


「人間風情が! 妖怪に牙を剥くとは!」


 藍先生も戦闘モードに突入。

 手が空いたので、私は両方の観察ができる。


『不浄な存在め! 我が刀にて浄化してくれる!』

『浅はかな人間! 魑魅魍魎の糧となるが良い!』


 若者と老人、紫さんと藍先生から、それぞれ同じ言葉が上がる。以心伝心状態なのだろうか。それとも決まり文句なのだろうか。


 若者は一気に間合いを詰め、藍先生の脳天目掛けて切り掛かる。

 老人は見慣れない歩き方で、気が付くと紫さんの目の前に。手に持った小刀で、紫さんの喉笛を掻っ切ろうとする。

 しかし相手は妖怪。九尾の妖獣と、それを従える大妖怪だ。奇術幻術の前で接近戦など意味を為さない。


 藍先生がその大振りの一撃を軽々とかわすと、若者は明後日の方向を見て顔を歪める。何もない場所を、まるで何かがあるかのように振る舞う。そこにない「それ」を斬りつけようと構えるが、振り下ろすのかという瞬間に、手に持った刀を自分で後ろに投げてしまった。

 そして絶叫。

 若者は力なく腕を垂らし、何もない場所から目を離さない。一歩、二歩、後退して、最終的に逃げ出してしまった。




 同じとき、紫さんは、素早く斬り込んでくる老人を、スキマを使って蹂躙していた。紫さんがいる所を斬りつければ、紫さんは後ろから出現する。それに気付いて斬りつくと、紫さんは地面にスキマを開き、手だけ出して足を掛ける。転びそうな老人の前にスキマを開き、笑顔で手を振りすぐ閉じる。

 子供のように扱われ怒った老人は、体勢を立て直し、天に向かって刀を突き刺す。

 丁度そこにスキマが開き、紫さんに鼻先に刀が迫る。一瞬、驚いたような表情をするが、すぐに胡散臭い笑みを浮かべ。

 小刀の刀身にスキマを作り、刀を音もなく、真っ二つに折った。


 そこに、先ほど若者が投げた刀が転がってくる。老人はすかさず拾い上げ、戦闘を続けようとする。

 しかし、若者の悲鳴が聞こえ、若者は老人の横を走り去る。それを確認すると。


「あの娘には、手を出すな」


 老人は小さく舌打ちをして、若者を追って行った。

 覗き魔の言うことじゃない!!






 無事に覗き魔を追い払ったけど、問題はそれだけではない。私達はその場に正座させられ、紫さんに見下される。


「……で、貴女達。なんでここにいるのよ」


 いかにも不機嫌そうな声色で、静かな怒りを私達に振り掛けている。


「その、紫様のお部屋にスキマが開いていて、緑が勝手に」

「はあ? 藍先生が暴れた拍子に吹っ飛ばされて!」

「緑がタンスの上のツボなんて落とすから!」

「藍先生が私の肩を引っ張るからでしょ」

「お前がそれでつまずくからだ!」

「あんな所に帽子を置くのが悪い!」

「そうだ! 部屋を片付けない紫様が悪い!!」

「スキマ開きっぱの紫さんが悪い!!」


 勢いで言っちゃったよ!


「……そう。随分と仲がいいじゃない」


 怒りを通り越して、ワラッテいるッ! あれは、風見幽香の笑み!


「世界の隙間で仲良く反省してなさい!」


 紫さんがスキマを使って、どこかにワープすると、今度は私達の足下にスキマが生まれる。二人の体を飲み込むために、速やかに開くスキマ。それはもはや世界の隙間なんかではなく、ただの穴である。

 地面に触れている足の感触がなくなると、後は重力に持って行かれるだけであった。




・・・・・・・・・・・




 世界の「隙間」は体に悪い。


 落ちる際に瞑っていた目を開くと、今まで経験したことのないような頭痛に襲われた。目を開けたのはほんの一瞬。ミリ単位の秒数だったであろう。それなのにアタマが割れそうな程の痛み。目を開けていられる余裕もなく、アタマを抱えて叫ばないと壊れてしまいそうになる。


 自分では叫んでいるつもりなのに、その音は全く聞こえない。アタマを抱えるのと同時に、耳も塞いでいたことに気付く。塞いでいたからと言って、自分の声が聞こえないということはありえない。普段ならそれに気付いたが、このときは分からなかった。力強く押さえている手を、少しずらすと。

 息が止まった。激痛を越えた何か。瞬時に意識を持って行かれそうになるが、私の生命維持機構がそれを許さない。このまま手を離してしまったら、どこかがオカシクなってしまう。反射的に、手は元の位置に戻され、世界から全てをシャットアウトする。


 視覚聴覚味覚は遮断できても、のこる触角と嗅覚はどうしようもない。


 私の腕に、足に、顔にナニカが触れる。すると私は回転し、運動した気になり、楽しくて悲しくてむかついて好きになって嫌になって、驚いて快感を得る。私は喋った気になり、考えて理解して計画を立てて、記憶して忘れる。

 何がなんだか分からないのだ。あらゆることを同時に行って、あらゆる感覚を得ている。でも私はアタマを抱えているだけだ。本当にそうなのだろうか。それすらも分からない。


 呼吸をする度に、鼻の奥に触れる空気は、酸っぱくて苦くてしょっぱくて甘くて、辛くて旨くて熱くて冷たい匂い。もう何も分からない。とにかく全部なんだ。


 他のことを考える余裕などない。意識を手放せばオワリ。自分が動いているのか、立っているのか、何も分からない。全部分かっている。なので、どうすることもできない。


 世界の隙間は、イキモノが知覚してはならない世界なのだ。




・・・・・・・・・・・




 体に重力がかかる。懐かしい地面の感覚。


「ほら、もう済んだわよ」


 目を開けると、木と塀で狭められた星空。と、紫さんの顔。どうやら覗き魔がいた所と同じ場所で、仰向きに寝ているようだ。

 私の目からは、大量の涙が。人生最大と言えるその量は、こめかみを伝って耳を通り、髪を濡らしても飽き足らず、地面を水浸しにしていた。

 深呼吸して生きる喜びを確認する。起き上がって、動けることに感動する。


「死んだらどうするんだ!」


 いくらお仕置きと言っても加減があるでしょ!


「死なないわよ。また行きたい?」

「嫌だっ」


 かなり本気で否定する。


「あそこではそもそも生物が定義されない。つまり生きても死んでもいない状態よ。そこから貴女達を引っ張り上げると再定義される。面白いわよ?」

「面白くない! ……です」


 また落とされたら堪ったもんじゃない。藍先生も隣で大の字になっている。目は虚ろで、このまま歩かせたら飛び降り自殺しちゃうんじゃないかな。酷くやつれていた。


「藍はあんななのに。貴女、図太いわね」

「ごめんなさい。図太いからってもう一回とかしないでください。ごめんなさい」

「反省した?」

「もうしません。紫さんは善良なお姉さんです」


 だから二度とあんなことしないで。

 紫さんは長い髪が揺れる程の溜め息をつく。


「……今回は私もうっかりしてたし。もうしないわよ」


 やったああああああ!! 表情には出さない。


「ちょっと慌てて。スキマそのままにしてた。後で気付いて閉じたけど、貴女達その間に入ったわね」

「はい。私の不注意で入ってしまいました」

「私が気付かないで帰ってたらどうするのよもう。私がいない所ではスキマに近づかない。いい?」

「はいっ」


 心ここにあらず、であった藍先生が飛び起き、敬礼をする。


「はい! 今後こういうことがないように細心の注意を払うであります!」

「……もういいわ。今ので懲りたでしょう。貴女達は何も悪いことをしなかった。だから普通にして」


 本当に大丈夫かな。触れただけで爆発とかしないかな。


「えっと、紫さんはどうして、ここに……? 差し支えなければ教えて頂きたいのですが……」


 勇気を出して聞いてみる。紫さんが慌てるようなこととは何か。


「ちょっと、厄介な問題がね」


 紫さんが後ろを向く。屋敷の塀越しに、住人の姿を見ているかのようだった。


「人間が、能力を持ってしまったのよ」

「え、ダメなんですか?」


 早苗は特殊能力を持っていたし、私も人間だった頃に能力を使えるようになった。


「別にダメではないけど。このままだと妖怪に、なるわよね?」


 変な力を使えば、手軽に妖怪になれるこのご時世。少し時間が経って科学が発展すれば、能力の発現は起きなくなるだろう。同時に、新たな妖怪も生まれにくくなる。


「幻想郷に連れて行きたいところだけど、相手はまだ人間で、しかも子供なのよ。不用意に連れて行ったら、きっと無駄死にさせてしまう。自分の身を守る力は持っていないし」


 この時点ではまだ、妖怪に襲われる体だ。誰にも知られずに死んでしまったら、妖怪にはなれない。


「ちょくちょく出向いて、様子を見ないと。まだ大丈夫だったけど、いつ最悪な事態が起こるか予想がつかない」


 一番いいのは、能力がずっとバレずに一生を遂げることだ。


「——彼女は無意識に死霊を操るから、いつかは絶対見つかってしまう」




・・・・・・・・・・・




 暗い雰囲気になったので、晩ご飯にして気分転換を試みる。紫さんがスキマを開いて、藍先生が先に入る。続いて私。また変な所に行くのではないかと、恐る恐るだったが、ちゃんと地に足がついて安心した。

 しかし、顔を出した瞬間、安心は胃痛に変わった。




 八雲家が、燃えている。




 先に行った藍先生は呆然と立ち尽くし、私はどうしていいか分からなくなる。スキマの前で慌てる私を押して、紫さんがこちらにやってきた。


「何よこれ!!」


 数秒動かなかった紫さん。意を決したように、大きなスキマを作って、燃えている家全体を落とす。ビル破壊のごとく沈み行く家を、紫さんは泣きそうな目で眺めていた。

 徐々に姿を消す家を見て、藍先生が膝をつく。木が燃える音と共に、藍先生のうわごとが聞こえてきた。


「火、消してなかった……。ちゃんと火を消してから呼べばよかった。どうしよう。もう生きていけない」


 最後に屋根が沈み、スキマが閉じられる。幸いにも、森に飛び火はしていなかったようで、辺りに静寂が戻った。

 紫さんは全ての感情を通り越したのか、屋敷に通ずるスキマの前で、ただただ呆けている。


「家、なくなっちゃったじゃない……」




 そうだ。帰ろう。




☆秋姉妹的ノゾキ


「穣子です」

「……」

「見られています!」

「……」

「めっちゃ不快です!」

「……」

「出てこいよ!」

「どうもーこんにちはー」

「誰だおまえ!!」

「どうも、橙です」

「どう見たって違うでしょ!」

「てんこでーす」

「そうだよ。それでいいんだよ」

「じゃあみんな! 今日はこれで終わりだよー!」

「……」

「さあみんな一緒にー!」

「……」

「じゃんけんぽん!」

「……」

「うふふふふふ」

「お姉ちゃーん。こいつ邪魔ー」



あとがき

↑はもう次回予告する気ゼロですね。


阿求のスペックを調べてみました。


試しに作った、画面サイズ1280×720で一秒間の動画が1.4MBありました。それを基にして計算します。

阿求は一度見たものは忘れませんが、転生により、以前の記憶を80%失っているとします。


阿礼乙女の寿命を30年として、一生のうちに記憶する映像は10359576000000MBで、それが八回繰り返されます。

80%損失させると、阿求は16575321600000MBの記憶を持って生まれたことになります。


阿求の歳を10として合計すると、16575636960000MB。

すなわち16575637TBです。

脳では記憶以外に200TBを使っているので、阿求の脳の容量は17エクサバイトとなりました。1700京バイトです。


でも、そもそも人の脳はデータ換算できません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ