明朗闊達、疲れているの。
前回のあらすじ
おにとばいばいした
今の年代なんて分からん。ただ、いつの間にか天皇は数十回変わっていたらしい。そんな時代に私はアレを見てしまったのだ。いや、アレは本当に「本当」の存在だったのか。
ずっと「そうである」と思っていたものがそうでなかったとき、次から「もの」をどういう目で見れば良いのか。視覚情報だけじゃない。その対象から聞こえる音、匂い、雰囲気など、全てを以前と違って感じとるようになるかもしれないのだ。こうなると、「もの」の本当の姿は何なの、と疑問を持ってしまう。いつまでたってもその答えは見つからず、最後には全てを受け入れるしか、自分を落ち着かせる方法がなくなるのだ。
無理矢理答えを作るならば。簡単に言ってしまえば、それは謎である。ただの謎だ。理解する事を諦めて、漠然と「ある」ことだけを感じ取ればそれでいい。そして分からない謎に恐怖し、逃げ続けるか触れないようにするのが賢明な行動だ。
謎の存在は、そうして人々が一様の反応を見せているだけで満足する。だって彼女もまた人間の恐怖を喰らって生きる妖怪なのだから。
謎を解明したいがために、迂闊にそういうのに接触してしまうと、それ以降は向こうから絡んでくるようになる。気をつけていても、いつの間にか付き纏われていることだってある。すごくめんどくさいんだよ?
八月の暑い日、燦々と降りそそぐ太陽の下で、季節外れのタンポポから学んだことだ。
・・・・・・・・・・・
都に帰って来たぜ。何百年も眺めていい加減慣れたまっすぐな道。庶民でごった返す、忙しい町並みをのんびり歩いていると、視線が飛び回って目が疲れてくる。建物ばかりで圧倒的に植物が足りないので、回復もできないのだ。不便だねー。
そんな事を思いつつ、しばらくまっすぐ進んだ後、右に曲がってすぐのところで木葉組の建物が視界に入る。とは言っても、高い塀に囲まれていて外から中の様子は全く見えないが。
私はごく当たり前のように建物の扉を開け、殺伐とした雰囲気の敷地内に入る。直接ここの「お仕事」を見たことはないけれど、本当は危ない場所なんだよね。あまり意識していないから、気軽に出入りしてしまう。ただ、私と木葉組が最初に出会った時は、誘拐という形で連れてこられたのだ。そこの所をしっかり頭に入れておいて、徐々に距離を置かなければ。
「おぅ木葉サマ。お帰りなさいませ」
第一発見者は私を誘拐した犯人の子孫、吉田二世である。水晶玉のごとく綺麗な頭は、灼熱の光を存分に吸収して、同時に眩しい光を放っている。足下には手ぬぐいサイズの布。頭の手入れをしていたのかな。
「やあ吉田二世。黒花は?」
「中にいますわ。事務仕事でもしてんでしょう」
出かけていなくてよかった。吉田二世に軽く返事をし、脇を通り抜けて玄関の扉に向かう。
「お、そうだ」
後ろの吉田二世が再び声を発した。気になって振り返ってみると、吉田二世もこちらを睨みつけていた。普段の表情がそれだから怯えることはない。
「最近街に妖怪が出るそうです。木葉サマなら大丈夫とは思いますが、念の為気ィ付けてくだせえ」
むしろ大歓迎です。怖いヒトじゃなければ。
「分かったー。じゃ」
今度こそ建物の中に足を踏み入れる。日が当たらない建物の中は、ひんやりとしていた。草鞋を脱いで、薄暗い廊下を突き進むと、人一人分の気配がする部屋を見つける。そこが黒花の個室だ。ボス部屋特有の緊迫したオーラが、障子越しに漏れ出している。
障子の骨を指でつつきまくり、返事を待たぬまま戸を開ける。と、瞬間。
体に響く打撃音と、頭を震わす爆音が同時に襲ってきた。
「んだテメーはぶち殺され……!」
無礼極まりない突然の訪問に、中の黒花は手元の机を叩き、殺気の籠った鋭い目で怒鳴りかけてきたのだ。
余りの衝撃に、息が止まった。いきなり大きな音を出されて世界が凍る。やって後悔した。
「なんだ、師匠だったのかー。むこうに帰ったんじゃなかったの?」
黒花が空気を解凍すると、自分の目元に少しだけ涙が浮かんだのが分かる。ほんの一瞬だけでも本当に怖かったのだ。鬼ってやっぱり、そういうものなのかな。黒花だけ特別なわけじゃないんだね。最近、周りに優しいヒトがいないよ。
あんな黒花を見てしまった直後に、地図を駄目にしたなんて言えない。大きな声で怒鳴られる映像が鮮明に見えてしまうのだ。正直に言ってまた怒鳴られたら、と、この先の展開とさっきの映像が合わさり、身動きが取れない。心の臓も激しく鼓動していてパニック状態。
「い、いや、ち、ちょっと、寄った、だけ、ごめんなさいでした……」
少しだけ、時間をおこう。主に私の心を整理する必要がある。
一歩も部屋に入らず、というか入らないように、障子を開けた手でそのまま閉める。中から聞こえる「なんで謝ったの!?」という声を起爆剤にして、出口に向かって一気に駆け出した。止まろうと思っても体が勝手に動いてしまう。生存本能らしきものが暴走しているのだ。呼吸も乱れっ放しで辛い!
「おろ、木葉サマじゃねぇですか」
玄関を上がってきた吉田二世にぶつかる勢いですれ違う。そして草鞋を履くのと戸を開けるのとを、自分でも信じられない速度で同時にこなす。向かい風を一身に受け、全力疾走で敷地から抜け出した所で、やっと体が止まった。
草鞋をしっかり履けていない状態で走り出したため、長い緒は地面にだらしなく伸びている。息は切れ切れ、冷や汗をかいた全身はだるい。ちょっと、木葉組に鉢合わせしないような場所を探して休もう。
草鞋の緒を結ぶと、自分の手が震えているのに気付く。ビビりすぎな私。早くも固まり始めた足を強引に動かして、もそもそと歩き始める。都の外で、遠くの山でも見ながらゆっくりしようか。
山と言えばお寺の星さん。あのやわらかい笑顔が懐かしい。聖さんはもう帰ってきたのだろうか。ああそうだ、あの人は怖い。普段はやさしいけど、あまりに礼儀を欠くと、指摘から始まりその歴史を語って説教に終わるのだ。終始笑顔で最低三十分、最高二時間。そこまでちゃんと言ってくれる人には長らく会っていなかったので、今となっては良い思い出だ。ああいうのがカーチャンってやつなのかな。
山のいい人たちと木葉組の鬼の温度差に、引っ掛かりを感じてしまう。さっきの恐怖が、イライラに変わってきた。手には力が入り、余った怒りを奥歯で噛み締める。部屋の入り方ひとつでどうしてあんなに怒鳴られなきゃいけないんだ。どうしてぶち殺されなきゃならないんだ。聖さんなら納得するまで説明してくれるのに。いきなりアタマの中の糸が切れて、暴力に訴えようとするのって最低だよね。短気なヒトって本当に嫌だね!
いつの間にか、真っ白で眩しい地面に反撃するように歩いていた。だからと言って地面の色が変わる訳もなく、自分の足が痛くなってもっと苛立つ。どうにかして怒りの逃げ場を作り出そうと、大声を上げて地団駄を踏みたくなるが、人目があって叶わない。そんな細かい所を気にしてしまう自分に対して、またまた腹が立ってくる。なんでこんなに人が多いの。ねえ、なんでこんなにうるさい街なの。私は妖怪だぞ。みんなもっと離れたらどうだ。
「痛っ」
思った側から街娘とぶつかった! 呪うよ!
「あ、ごめんなさいごめんなさい!!」
直ぐに謝ってきた街娘。ここで声を出したら、そのまま爆発してしまいそうな私は、無視してとっとと進もうと思った。
「あ、あの、本当にごめんなさい……」
通り過ぎようとすると、また謝られた。無視する私は酷い人みたいじゃないか。どちらも悪い訳だし。振り返って街娘の顔を見る。私の表情は、歪んでいるのであろう。
「なにか私に出来ることがあれば……」
「もういいですから!」
やっぱり言い方が強くなってしまう。お願いだからもう行って。
「よ、良くありません! だって貴方、そんなに怒っていらっしゃるじゃないですか」
そうだよ怒ってんだよ。そんなことを一々、しかも街中で指摘しないでください。
「何かおわびさせてくださいよう!」
ぶつかったくらいで何故そこまでされなきゃならない。もういい。自分から離れれば直に追って来なくなるだろう。
体を入り口の方向に向けて、さっさと歩き出す。そしたら今度は、目の前に回り込まれた上、腕を掴まれ引き止められた。鬼の山からのストレスが積み重なり、そして今のが止め。もう溜め息しか出なくなって、首の力が抜けてしまう。項垂れて、もうどうにでもなれという自棄状態。
「どうかウチにいらして下さいっ! さ、白湯なら出せますから!」
そのまま腕を引っ張られ、抵抗することなく流れる私。それを肯定と受け取った街娘は、ずかずかと進む。羅城門に向かって歩いているらしいが、どうせ外には出られないだろう。
十分程度、誘導されるがままに進む内に見える家々は質素になり、遊びに出かける貴族と従者の団体がなくなる。
「あと半分ですからね。次の角を曲がりますよ」
入り口まであと少し、という所で右に引っ張られる。なんとなく、暗い雰囲気が漂う道に連れ込まれてしまった。一帯の空気といい娘の強引さといい、変なものに目を付けられたか。まあいいや。いざとなったら逃げられるし、無一文な私は金銭のトラブルに巻き込まれることはない。
これでもかという程奥に向かう娘。人通りはなお多く、喧噪な地域ではあるが、一人一人に覇気がない。見るからに栄養不足の庶民が暮らしていた。
「貧しい私達は、やっぱり助け合って生活しなければならないですからね」
と話す娘の印象は、場違いな気がする。汚れた小袖にボサボサな黒髪を無理矢理束ねている様子が、一応の面目を保っているが、それだけだ。
「あ、あそこです。私んち」
とうとう到着してしまった。かろうじて建っているように見える家は、中の床も抜けそうで怖かった。娘が平気な顔をして上がりこむと、鳴っては鳴らないような音が床から聞こえてくる。二人乗っても大丈夫なのだろうか。自棄状態でも、人の家を壊すのはできないように設定されている私。丈夫そうな三和土と茶の間の段差に腰掛ける。
奥で何かやっていた娘は、私が座ったのに合わせ、ドタドタと台所に向かった。そして釜戸に火をつける。
「お湯湧かしますんで、ちょっと待っててくださいねー」
娘のペースに感化されて、今自分の中で転がっている感情がバカらしくなってきた。不満はなくならないけど、彼女の前では表に出したくないという、そんな気持ち。
深呼吸の後、自分の頬を思いっきり叩いて気分を新たに。当然のごとく反応する娘。
「ど、どうしました」
「リセットを」
「え?」
通じないけど別にいい。私が平常心で返事をするのが重要なのだ。
「あ、温まりました」
娘は木製の杯に湯気が立つお湯を入れ、私に差し出す。それを受け取ると、自分の分も注いで私の隣に腰掛けてきた。娘が手に持った白湯をすするのを見て、私も真似をする。無味無臭の生温い液体が、喉を通りすぎるのを感じる。なんか不味いな。真夏に飲むものでもないよね。
「ふう」娘が杯を置く。「そういえば、名前……」
いいじゃん娘で。この場限りの縁だしさ。私のことも佐藤さんとかでいいから。
「私のことは、ふじなとお呼びください」
しかし名乗られてしまったら、流石にこちらも返さなければならない。
「木葉、です」
若干警戒しているので名字だけ。まだ名字の概念があんまりないから、私は木葉という名前になってしまったであろう。
にっこりとお辞儀をするふじなと、ぎこちなく頭を傾ける私。そこで会話が途切れてしまった。場を持たせるために、白湯攻略に専念する。大して熱くもないのに息を吹きかけたり、無駄に時間を掛けて少ない量を飲んだり。
「ぶつかったとき、何か大切なものでもありましたか……?」
沈黙に負けたのはふじな。肩がぶつかったことを未だに気にしているようだ。
「なんでですか?」
「だってコノハさん、怒ったじゃないですか」
そうやって過去の怒りをぶり返すような聞き方をする精神が私には分からないが、そういう人もいるのだろう。謎を全て明らかにしないと気が済まない人が。
「あれは、別件で」
探偵さまは、曖昧に回避しても逃がしてくれない。
「何かあったのですか? 私でよければ相談に乗ります」
これが善意ってところが面倒だ。もう一度回避してみようか?
「いえ、私の問題ですから」
「それでも言ってしまうと楽になることだってありますよ」
私は言って楽になる。ふじなは聞いてどうなるの? 聞くだけ聞いた後は、薄っぺらい解決策でも提示するのだろう。こちらが与える情報だけで、的確なアドバイスをするのは不可能だ。
「遠慮しないでいいですからね」
本当に言いたくなくても、私が怒って断らない限り押し問答が続く。私には、無関係な人間に個人的な事情をさらけ出す道しか残されていないのである。
簡単に話して助言を聞き流し、さっさとお暇させてもらおう。さて、どう話そう。
「……普段は優しいヒトが、意味不明な理由で怒ったのに驚いて、そんで段々腹が立ってきたんです」
思い返すと再び怒りがこみ上げてくる。何に対して怒りたいのかはもう分からないが、お腹の底が臨戦態勢に入ってしまう。それが全身に回って緊張状態。やっぱり付いてくるべきではなかった。頭を冷やす時間が必要だったんだ。
「あー、それはいやですよねえ」
共感なんてどうでもいい。早く解決策を吐き出して、私を出してくれないか。
「その怒った人に、ちゃんと説明してあげないと。お互いすれ違ったままですよ」
テンプレートの受け答えか。黒花に「扉の開け方で怒るな」と言えと。今更戻って、些細なことを注意するのはどうだろう。それにしばらく会いたくないのだ。
ふじなに自分の考えを言ってしまいたい。そしたらふじなの言った通り、スッキリすると思う。しかしそれは、ふじなの的外れな意見を封じたことへのスッキリであって、根本的な問題は解決しない。十分な情報を得たふじなはより積極的に意見を述べ、ありがた迷惑な存在へと変貌する。
でも、これ以上溜める余裕がなかったので、私の言葉は口から這い出てしまった。
「どういう顔して会いに行けばいいか分からないんです。あのヒトが私に怒った姿を見せたのは今日が始めてで、だけど私以外のヒトにとっては怒った状態の方が慣れている筈で。どっちの顔があのヒトなのか分からなくなって、今は会うのが怖いです」
さっき会った人間に何言っているんだ。長々と。そして個人的な文句を嫌み一つ見せず聞いているふじなは何を考えているんだ。
私が話を止めてしまったので、ふじなのターンになる。手持ち無沙汰な私は、持っている白湯を妙に意識してしまう。
「分からない、か」
溜め息のような言葉をきっかけにして、ふじなはアドバイスを始めた。
「コノハさん、私は貴方のことが分かりません。さっき会ったばかりですから」
分かったらおかしい。ストーカーさんだったのならともかく。
「いきなり話しかけた私を、コノハさんは怖いと思いますか?」
知らない人は不審な人、不審な人は怖い人。何をされるか分からないから不安を感じるのだ。即答をせず、杯の中の白湯を見てからうなずく。
「私からしてみれば、貴方のことを怖いとは全然思いません。なぜだか分かります?」
「いいえ」
市場みたいな所で、接客業をして得た技術だろうか。
「分からないことを知っているからです。知らないことが怖くなるのだから、知ってしまえばいいんです。一々詳しいことまで知ろうとしたら時間が足りません」
接客業の賜物じゃないか。多人数を相手にすると自動的に習得するやつ。
「怖いものを知れば、段々怖くなくなります。正体不明意味不明なんてもはや私の友達です。貴方もそういうものに慣れれば、きっぱり割り切れるようになりますよ」
妖怪みたいだ。広く知られてしまった妖怪は、対処法が確立して恐れられなくなる。妖怪が死ぬということは、恐怖の対象がなくなることだ。黒花も妖怪なんだから、始めから分からないものとして対処すれば怖くないのかな。
一方で、小娘に恐れられていないという事実を知った、妖怪である私。惨めである。
「せっかくですから、私で練習しましょうよ。私は二重人格じゃないですから。もういっそのこと丁寧言葉やめちゃう?」
一人で気分が乗ってきたのか、ふじなは体ごとこちらを向いて顔を近づけてきた。茶色い瞳が私に、貴方も心を開いてくれないかと問い掛けている気がした。
どうしてだろう。今まで会ったヒトはすんなりとけ込めたのに、今回は駄目だ。人見知りが存分に発揮されている。なぜだなぜだ。
「ねえねえ、どこに住んでるの?」
ふじなの笑顔が不審なものに感じてしまう。いわば「ワタシは怪しいものじゃないです」と、貼り付けた笑みを伴って迫る不審人物だ。ふじなのセリフも、よく考えてみれば誘拐犯のそれでしかない。警戒せざるを得ないないじゃないか。
「ここら辺じゃ見ない顔だよ。もしかしてイイとこ出なの?」
ほらほら。私から盗れるものがなさそうさからって、手段を変えてきたよ。少しでも金持ってそうな喋り方をしたら、私を縛ってどこかに身代金を要求するんだ。要求先を聞き出すために、私を拷問するに違いない。というかこの白湯になにか仕掛けられていたかもれない。迂闊だった!
とにかく今できることは、刺激を与えないように会話をすることだ。しかも、白湯の毒が回らないうちに改心させなければ、身が危険だ。制限時間付きのネゴシエイト。
「私、旅してる。ここには、たまにくる」
精一杯のスマイルと、敵意がないことを示す友達言葉。どちらも不完全にとどまっている。
「旅!? 道中で妖怪とか平気なの!?」
「うん。お守りあるから」
震える手で、甚兵衛羽織の中から秋姉妹の紅葉型ペンダントを取り出す。とっさに考えた嘘だ。なので、金目のものを出してしまった、と後悔する。
手の上できらりと光る小さな紅葉。数百年経っても、未だその輝きは失われていなかった。ちなみに、裏には一面を覆うように「秋静葉・穣子」と書いてあるので、あの二人のことは忘れたくても忘れられない。
「うわあ、キレー。これってすごい宝なんじゃない」
目をつけられてしまった。価値を調べられる前に、急いで服の中に戻す。そして話題を微妙に変える。
「明るいうちに移動すれば、妖怪は出ないから」
だったら私も出歩けないじゃないか。鬼とか虎とか土蜘蛛とかと、真っ昼間に堂々と歩いたぞ。自分の嘘が情けなく感じる。
「ふ、ふーん。あと質問」
「はい」
旅人だから金持っているんじゃないか、みたいな質問だろうか。ここで私の運命は決まる。
「女の子なのに男の人の服を着てるっていうのも、旅に関係あるの……?」
久しぶりに性別について触れられ、しかも正解。
あれ、この娘いい娘じゃない?