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東方現葉幻詩  作者: 風三租
第四部 セールスお断り
31/44

泥中之蓮、山の中のお寺。





「あ」


 目の前に、目の前にぃ!


「あ、あ、あ、あ」


 呂律が回らない! この光景は!


「あああああああ」


 ふんわり綿のような物体が!


「は、じ、め、て」


 美味しそう、ではない! 限りなく不味そう!


「八百年生きてて始めて……!」


 木葉組にいたから見慣れている! だけど!


「始めてのオッサン妖怪だぁぁぁぁぁ!!」


 北へ北へと足を動かし、二三の日と二三の村を素通りしてやっと着いたお寺さん。

 そこの入り口にはなんと! 雲でできたオッサンがいた!

 ボワボワまゆげにギョロっとした目、おでこには深い皺が刻まれていて時代を感じさせる!

 丸っこい鼻の下と顎から後頭部にかけて、ヒゲと髪の毛がつながってる!

 さらに! 上半身がハダカだぁぁぁぁぁぁっっ!

 ちゃんと下は煙になっていて目を塞ぐような事態にはなっていない。


 カッコエェェェェェェ!


 今までの人生を振り返る。

 出会った人外生物はお姉さん幼女お姉さん幼女お姉さん幼女幼女同い年魔物同い年同い年幼女お姉さんお姉さん。

 この履歴にオッサンが加わる時がやっと来たんだね!


「……どなた?」


 ………………………………。もう更新された。オッサンの後ろから分類同い年の少女が。オッサンに対しても平生を保っているから、この人も人外生物と見ていいだろう。

 顔以外を隠すような被り物していて、お寺の人だと一瞬で分かる容姿である。


「えっと、このオッサンは見なかったことにしてくれる? 体裁上」


 お寺の人がオッサンを煙たがるように手で払い、オッサンは霧散してしまった。今までのあれは幻だったのだろうか。私の履歴にオッサンを加えることはできないのか。

 妖力隠蔽工作をしている為、お寺の人は私の事を人間だと思っている。だから私のオッサンを消したんだな? 安易に妖力を晒すと厄介事の種にもなるし……、ぐぅぅ。オッサンが……。


「生きとし生ける物の味方である有難い寺へようこそ。私案内役を任されております雲居一輪(くもいいちりん)と申します。本日のご用件は人生相談ですか? それとも妖怪退治の依頼ですか?」


 マニュアル通りってやつ? 不快に感じさせない物腰ではあっても、何か物寂しい印象を受ける対応。人見知りな私も、初対面の人相手にはこんな感じなのだろう。

 さっきのオッサンを見なかったことにはできない。いや、したくない。情報通り、このお寺は妖怪と繋がりのある所なんだ。さぁてさてさてさて、ここにターゲットは何体いるのかな?


「どちらかと言うと妖怪退治の依頼です」


 妖怪を幻想郷に引っ越しさせるんだから、周辺地域だけに着目すれば、退治したのと一緒だよね。


「分かりました。それでは詳しい内容は(ひじり)がお聞きしますので、正面入り口より右手の部屋に入って少しお待ください。聖が向かいますので」


 雲居さんは玄関の方を示し、私が行くようにそれとなく促す。


「雲居、さん? さっきのオッサンは……?」

「オッサンはいなかったわ」

「でも、ふわふわのオッサンが……」

「死にました」

「死んだの!? オ、オッサン……!」

「そんな事より、中に入って待っててください」

「ぐぅぅ」


 聞く耳持たん。今だけは我慢してやるよ。今度会ったら絶対話してもらうからね!

 私はお寺の引き戸をガラガラと開けて草鞋を脱ぐ。内に漂う香の匂いが、お寺らしくて緊張する。仕舞ってある履物の数は三。表の雲居さんと合わせて四人の坊さんが住んでいると推理する。オッサンのように履を必要としない生物がいるかもしれないので、実際の数はもっと多いのかも。

 玄関は奥に広くとってあり、幅は人が五人並べる程。突き当たりの壁に障子を設け、自然光を取り入れるようにすることで仏教特有の薄暗さを感じさせない。第一印象がお花畑になる仕様。

 左右に長く廊下が伸び、左奥には仏像がありそうな広い空間が、右手にはいくつもの部屋が見える。右手の部屋と言われても、どの部屋で待っていればいいのか分からなくなった。

 とりあえず一番奥から攻めてみようと、日光にあてられて丁度良い温度になった廊下を三十歩。結構長くて雑巾がけするのが楽しそう。その間にあった部屋の数は十。住職と他二人と雲居さんとオッサンとお客用で、一つずつ部屋を割り振っても四部屋余る。それこそが隠された住人の正体か。


 まずは十番目の部屋。中からは私のシルエットが丸分かりだと思い、小細工無しに障子戸を開ける。中には巻き物やら飲みかけのお茶やら。整頓されているが、間違いなく生活空間だ。ハズレ。

 九番目の部屋。シルエットが写らないように、十番目の部屋の前から手だけ出して開ける。そーっと覗くと、タイガーストライプヘアーな分類同い年と、真ん丸ネズミミの分類幼女が煎餅をかじって談笑していた。見るからに妖怪である。なんだこのモンスターハウス。

 耳を向けてみると、二人の会話が聞こえてくる。


「……ところでナズ」

「なんだい」

「最近西の方でユーレイが出るって苦情が……」

「ああ。近々聖が見に行くってね」

「おお、みんなで肝試しですかー。旬ですねー」

「……うん」


 まだ早くないか? 今は六月でございますよ? たぶん。

 でもいい事聞いた。幽霊はこわいけど勧誘の対象だ。未練に歪んでいなければ捕獲したい。

 そしてこの部屋もハズレ。


 八番目の部屋も生活空間が広がっており、ハズレ。残りの部屋は全部が客間だった。と言うか、よく見たら入り口の柱に部屋の名前が書いてあった。

 私はなんとなく「客間六」に入り、机を跨いで常備されている座布団に腰を下ろす。

 全ての部屋の広さは六畳。入り口の反対側には戸棚があって、客間だから何もない。隣の部屋とは障子で仕切られていて、全部開けて走り抜けてみたくなった。

 人のおうち、ましてやお寺でそんなことをする勇気はない。机に置かれた水をお椀に注いで、大人しく待っていることにした。


「(失礼しますー、あれ?)」


 遠くの部屋から女性の声が聞こえる。あれが住職なのか? 耳が良いと心の準備をする余裕ができて便利だ。


「(失礼しますー、ここにもいない……)」


 ふんわりとして優しそうな声だな。これならあまり緊張しないで喋れるかもしれない。


「(失礼しますー、失礼しましたー)」


 一つずつ調べられるのってホラーだよね。


「(失礼しませんでしたー)」


 あと二部屋。足音まで聞こえる近さ。


「(失……、最後の部屋かなぁ?)」


 おお? 住職さんのシルエットが私の目の前を通り過ぎていく……! せっかく心の準備が整った最高のタイミングだったのに、台無しになったよ……。


「(こんにちはー、え、いない)」


 心が不安定な状態で住職の影が……! あー、どうしよう、とりあえず水、水飲んで落ち着かなきゃ!

 お椀を口につけると同時に、障子戸が音を立てずに開かれっ、むせた!


「おまたせしま」

「げほっげほっ! ぅぅげほっっっっげほっ!」

「だ、大丈夫ですか……?」


 無言で頷くも、顔が赤く染まっていくのが自分でも分かる。いやー、見ないでー!


「…………はぁ。お、お、お騒がせいたしましちゃ」


 噛んでしまった! 負の連鎖反応! これはマズいぞ。


「い、いえ、よくあることでしゅ」


 向こうも噛んだ。


「……はははは」

「はい。私が聖白蓮(ひじりびゃくれん)です」


 にっこり笑って自己紹介する聖さん。何事もなかったように向かい側に座る聖さんを見て、私を落ち着かせるためにわざと噛んでくれたんだなーと思う。すごい、やさしい人だ。


「あの、ありがとうございます」

「へ? 私は何もしてませんよ?」


 大人だなぁ。何百年も生きていて、何も変わっていない私なんかよりもはるかに高みに立っているよ。


「早速ですけれど、今日は妖怪退治のご依頼と聞いてますが……」


 紫から金にグラデーションがかかっている不思議な髪を軽く整えて、話し合いの姿勢をとる聖さん。私もちゃんと答えなきゃ。


「えー、ウワサなんですけどね、妖怪が溜まっている場所がありまして……」


 ここです。もう四体見た。


「それは怖いですねぇ。私が直接赴いて、少し様子を見させてもらっても……?」

「あ、はい。どうかよろしくお願いします」

「どのような妖怪なのかは分かりますか? 容姿とか、性格とか、ウワサで伝わっていることを何でもどうぞー」


 なんか妖怪寺って暴くのが申し訳ない気持ちになってきた。だけどこれは幻想郷と妖怪のため。心を鬼にして臨まなければ。


「妖怪達を束ねている人なら分かるんです」

「……、どなたですか?」


 今、私はリーダーのことを「人」と言った。妖怪である私は、よく他の妖怪を「人」で数えるけど、人間からしてみればおかしい。聖さんの返答に間が空いたのはそのせいか。


「それは……」

「そ、それは?」


 深呼吸と逃げる準備。逆上して襲い掛かってくるかもしれない。そうなったら襖を破って入り口に直行するのが吉か。聖さんからしてみれば、今の私はキョロキョロと挙動不振な態度をとっているように写るハズだ。悟られないように振舞う技術を持っていないのが悲しい。

 逃走経路の確認を終え、立ち上がって聖さんの目をしっかり見据える。


「それはですね……」

「は、はい」




「おまえだぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」




 うおぅ言ってしまった。聖さんは突然襲ってくるような動きは見せない。一切動じずに、美しい正座を保ったまま私を見ているだけだ。一人で空回りしたような気がして、再び恥ずかしさが蘇る。

 すると、聖さんはにっこりと笑って言った。


「バレちゃいましたか」




・・・・・・・・・・・




「姐さん! 大きい声が聞こえたけど大丈夫!?」

「ユーレイですか!? 肝試しの練習ですか!?」

「聖、一体何が起こったんだ!?」


 私の大声で先の妖怪三人が集まってしまった。逃走成功率が下がったあああああ。


「いえいえ、何でもありませんよ。それにほら、お客さんの前だから」

「……っ!」


 私の存在に気付き、慌てて後ろに下がるネズミっ子。一番妖怪らしい姿だからね。


「あ、さっきの……」

「どうも」


 残念ながら雲居さんの近くにオッサンはいない。会いたいよう。


「はじめましてー」


 マイペースに手をふってくるタイガーストライプさん。


「騒がしくなってごめんなさい。みんないい人ばかりなんですよ」

「そうですね。オッサンは?」

「オッサンは召された」


 さり気なく弁明する聖さんの後ろで、猶もオッサン死亡説を主張する雲居さん。その横で、嫌がるネズミっ子とじゃれ合うタイガーストライプさん。愉快な人達だ。


「ここはですね、困っている人や妖怪を、平等に助ける私のお寺です。ここにいる三人は全員妖怪なんですよ? でも怖がらないで、決して人は襲いませんから。しっかり話し合えば分かり合えるのです」


 聖さんがタネ明かしをすると、後ろの三人が驚いてこちらを見る。私は全然怖がってないし、敵対しようとも思ってないから大丈夫だよー。


「姐さん、もしかして……」

「はい」


 イタズラがばれた時のように返事をする聖さん。立っているのが疲れたので座布団に座り直すと、ネズミっ子がボソっと。


「……一人なら、口封じも考えるべき……?」

「ナズーリン、それはいけませんよ」

「ひぃぃ。やめてーころさんといてー」

「うぅ、すまない……。今のは無しで」


 ネズミっ子、ナズーリンという名前なのか? 漢字を当てられそうにもないし、片仮名表記か……。パルスィに引き続き片仮名の名前……。今度パルスィと話し合ってカッコいい漢字を当ててあげよう。


「こんな風に、罪を認める心もあるのです。なんら人間と変わりません。なのでどうか、お寺を続けられるように上手く説明してくれませんか……?」


 私を人里から来た代表者だと思っているのだろうか。説得ごときで人々が納得するとは思えないな。基本的に妖怪は恐怖の塊なんだから、本能的に消したくなってしまうでしょ。

 個人と妖怪は共存できても、世間と妖怪は共存できない。この違いはどうして生じるのだろう。


「聖さん。私は、あなたが妖怪と共存することに反対はしません。でも私以外の人々は、いくら説明しても認めることをしないと思います」


 キツイ言葉だ。私は今、聖さんの生き方を否定しているのだから。


「……でも、しっかり話し合えば……!」

「こんな時」


 人の弱みに付け込む勧誘って、嫌な職だ。


「引っ越しは、いかがですか?」


 知られたのなら知られていない所に移動する。それは今まで得た信頼もゼロに戻すことであり、イチかバチかの賭けである。しかし、こんなに優しい人ならば、どこへ行っても通用するだろう。

 聖さんは数十秒間止まり、それから静かに口を開いた。


「…………いえ。それはできません」


 あっけなく失敗。

 でもなんだか、安心した。あんなやり方で承諾してもらっても、後味が悪かっただろう。それに、この人にはやり遂げて欲しい気持ちも少しあった。


「ここは命蓮、弟が残した大切なお寺です。捨てる訳にはいきません。申し訳ないんですけど、あなた様のご提案は……」

「いえいえ。気にしないでください。聖さんのこと、応援したくなりましたよ」


 私が肩の力を抜いたところで、緊張していた空気が緩まる。

 一段落ついたかな。ふいー。気疲れしたー。


「あ、それと、今度肝試しに行くんですよね? 連れてってください」


 次の標的はタイガーストライプさんが言ってたユーレイ。失敗や自己嫌悪を引きずってはいけないのだ。


「肝試し?」


 何を言っているんだという表情をする聖さん。後ろで空気と化していたタイガーストライプさんが反応する。


「今度みんなでお出かけするんですよね?」

「え、ああ、そのことですか」


 ナズーリンが顔に手をやり大きく息を吐く。雲居さんは苦笑い。


「西の海に出る舟幽霊を退治してくれという依頼がありまして……。それに同行したいのですか?」

「できればその日まで部屋を貸してくれると嬉しいです。あとオッサンはどこ?」

「オッサンは旅立った」


 オッサンのことを話すと雲居さんが割り込んでくる。


「部屋はいっぱいあるからいいんですけど、旅は危険ですよ?」

「あーもうそこら辺は大丈夫です」


 今までずっと私のことを人間だと思って話していたんだよね。名前も教えていない。これからお世話になるのだから自己紹介だ。


「私は妖怪。木葉緑と申します」


 思ったんだけど、私って何の妖怪なの? 肩書きとか使えたらカッコいいのに。


「……え?」

「……は?」

「……なに?」

「……お?」


 聖さんを初めとしてタイガーストライプさん、ナズーリン、雲居さんが疑問符を上げる。


「わ、私の熱弁、無意味だったのですか……?」


 私は人里の代表者じゃないから、聖さんの言葉は広まることはない。ご苦労様でした。


「…………無駄に緊張してしまったじゃないですか。最初から言ってくれればいいのに。言い換えれば、あなたは自分を偽って話をしていたということですね」

「そうなんですか?」

「ええそうですとも。嘘はいけませんよ嘘は。許されません。今日からあなたもここで暮らすんですから、私も普段の態度をとるようにしますよ。ええ。だから今から説教です! さあ! そこに直りなさい! 緑が心を改めるまで説教です!」


 え。


「いざ! 南無三!」




・・・・・・・・・・・




「……ぐすん」

「いやぁ、聖の説教は初めての人には辛いですよねぇ!」


 日が落ちて月が真上にくるまでの耐久説教。もちろん正座を崩すことは許されず、相手の目を見ていなければならない。座布団は取り上げられ、呼吸を乱すのも禁止。足の感覚がなくなるどころが、意識があるのにないという境地にまで達した。

 ……心が改まったような時間でした。


 聖様が出て行かれたを見計らって、タイガーストライプさんが私のような者を励ましにいらっしゃいました。


「……お心遣い有り難う御座います。私の心がどんなに乱れていたのかを知ることができました。何事に対しても感謝と慈愛の精神を以って今後善行に励みたいと思う所存で御座います」

「あらら、重傷ですね」

「時にタイガーストライプさん。本日は夜も遅く、早く寝ないと明日のお体に障ります。タイガーストライプさんのお心遣いは大変有り難いのですがお休みになってくれませぬか」

「たい、がー? 私の名前は寅丸星(とらまるしょう)ですよ、しょ、う」


 星様とおっしゃるのですか。夜空に瞬く星々の一、大変素晴らしい名前でございます。


「元気出してくださいよ! 私の部屋からお煎餅持ってきましたから!」


 そのようにおっしゃった星様は、後ろ手に持っておられますお煎餅の袋を私に差し出されます。しかし現在は夜中。このような時間に食物を頂くのは大層体に悪い事でして、断るにしても星様のご厚意を裏切ってしまう形になり、困ってしまいます。


「それでは、一枚だけ頂きましょう」

「はーい」


 私は袋からお煎餅を一枚だけ、しかも欠けているものを抜き取り、机の上に置かせて頂きます。


「あれ? 食べないんですか?」

「後にゆっくりと、味わって頂きたいと思います。有り難う御座います」


 後に、朝になりましたら頂きます。決して嘘では御座いませんので仏様もお許しになってくださるでしょう。


「むぅー! 分かりますよ! 同じ説教を受けた身として緑が考えていることはお見通しです! 今食べたら体に悪いからって、朝まで取っておく気でしょう!」


 何と云う事でしょうか。星様は早くも私の事を理解されているのです。その深い愛情は私も見習わなければなりません。


「こうなったら無理矢理です! 何か食べれは治りますから!」


 星様は袋の中からお煎餅を二枚取り出され、こちらに寄っていらっしゃいます。食事に進んで手が伸びない私に代わって、星様がお手を煩わせてくださるとは、なんて愛に満ちていらっしゃるのでしょう。しかし私はその愛を受け取る訳には行きません。嗚呼、私はどうしたら良いのでしょう。


「口を開けてください」

「お止めください星様。あーん」


 愚かな私は星様のご厚意を断る事が出来ないのです。

 星様は私の口の中にお煎餅を入れ、両手で私の頭と顎を挟み、力強く押し込まれました。自動的に、私はお煎餅を噛み砕いてしまいます。舌に乗るのは丁度良い塩加減の破片で……し…………た。


「はっ、私は何を……!」

「やっと意識を取り戻しましたか! はい、お煎餅」

「あ、ありがとう」


 星さん――なんで名前を知ってるんだ?――が差し出す袋から煎餅を一枚もらってかじりつく。パリっと気持ちの良い音と共に、口の中に煎餅の旨みと塩味が広がる。うまい!


「緑、これからよろしくおねがいしますね!」

「うん。こちらこそよろしく」


 星さんが煎餅の付いた手を出してきたので、私も煎餅の付いた手で握手する。私の右手と星さんの左手が重なり合う、変な形だ。




 一瞬だけど、障子戸に長髪のシルエットが映った気がするのだが、気のせいなのかな。







☆秋姉妹的なーむー


「静葉です!」

「穣子です!」

「うおーーーー! 変な話を聞いてむせる緑の真似ーーーー!」

「水を飲んでむせる緑の真似ーーーー!」

「げほっげほっ、げほっ! げほっ! げほっ!」

「げほっげほっ! ぅぅげほっっっっげほっ!」

「完璧だわ」

「お姉ちゃん! お姉ちゃんの咳の第二波は、二回だけだったと思うよ!」

「いいえ。三回よ」

「絶対二回だった!」

「愚妹よ、姉が信じられないの?」

「そういう問題じゃないよ! 二回は二回なの!」

「人を疑うなんて、私は穣子をそんな風に育てた覚えはないわ」

「なんて心に響くお言葉!」

「というか、あの聖さんって誰?」

「幻想郷にはいないよね」

「まあ勧誘を断ってたし」

「でも、星さんとかはいたよね?」

「そうね。……聖さんがいたら穣子に説教して貰おうと思ったのに」

「あんなふうにはなりたくないよ!」

「……」

「……」

「……予言を終わるわ」

「……予言なんてしてないのに」



あとがき。


秋姉妹がいらっしゃるのは風神録後の時間。聖☆お姐さんにはまだ会えません。地底の住人はご存知のようです。


そういえばパルスィが何気に毎回出ている!

皆勤ですよ!

無意識に執筆してパルスィが皆勤。うふふ。

その出番の多さが妬ましいわ。



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