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東方現葉幻詩  作者: 風三租
第三部 いい旅夢気分
25/44

伏竜鳳雛、歴史は苦手です

あとがき。


活動報告にて、忙しくて更新頻度が激減すると言っておいてこのペース。

本当に忙しいんですよ?



今回オリキャラ回でございます。早く紫を出したい。





「私、不死になったからよろしく」


 そんなバカな。と思ったが人のことは言えない私とヤマメ。妖怪二人組みに常識など通用させない。


「どうも、こちらこそよろしく」

「あ、ご丁寧にありがと」


 固い握手を交わす私ともこー。


「私と同期になるのかねえ」

「え、あ、えへへへへ……」


 肩を叩いて分かち合うヤマメともこー。


「紅い目に加えて不死……! これはもう、一作品書けそうだわ……!」


 一人でぶつぶつと暴走している少女。この子ったら人間なのに……。


「…………」

「じゃ、お団子食べに戻ろうか」

「妹紅も来な?」

「あなたの特殊能力をゆっくり聞かせてもらうわ」


 私達は回れ右して部屋に戻ろうとする。あっさりとしたやり取りだったが、まだ親しくない人との再会なんてこんなものだ。


「…………」

「団子はうまい」

「妹紅! ついておいでー!」

「……あの目には鬼の力が宿っていて見た物を地獄の業火で焼き尽くし……」


 皆好き好きに言いたいことを言って歩く。もこーはついて来ていないようだけど、放っておけばその内来るだろう。


「少女、団子の作り方……って、今は暴走中か」

「お団子あるよー! 私の頭についてるやつじゃない方の!」

「……鬼の力を授けたのは大昔に世界を混沌に貶めた……」


 ちらりともこーの方を見ると、向こうもこちらを無表情で見つめていた。そして大きく息を吸い込む動作をして叫ぶ。


「つっこんでよ!!!!」


 もこーは白い髪を振りかざしてこちらに迫ってくる。つっこめと言われても何をつっこめばいいのか分からない。どうして家出しちゃったのー、とか聞いて欲しいのか。推測の域を出ない間につっこんでしまうと、間違えた時に大恥をかいてしまう。ここは王道でまかり通らせて頂こう。


「なんでやねん!」

「こっちがなんでやねん!」


 もこーに従ってあげたのに逆につっこまれた。とても困る。


「ねえ! 不死だよ!? 私行って帰ってきたら不死になってるんだよ!? ほら髪真っ白! おかしくない!? 不思議に思わない!? なんでこうなったか聞きたくない!?」

「いやぁ、私も行って帰ってきたら不死みたいな存在になったからねぇ」

「人外見なれてるんで」


 もこーもヤマメと同じ境遇を辿ったのだろう。そういえば、かぐやさんの難題を受けた貴族達って、何人かヒドい目に遭ってるんじゃなかったっけ? 藤原さんてばそれに合てはまる人なのかな。親の身に何かが起こると娘が不死になるんだ。すげー。


「もこー、元気出しなよ。私には全て分かってるから」

「おかしいでしょ! 緑さんは何も見てない訳だし!」

「自分の過去は、そう簡単に語るものじゃあないぞ?」

「ヤマメさんも格好つけないで! 私に根掘り葉掘り聞いて!」


 このままもこーを喋らせると、問題発言が飛び交うかもしれない。一担落ち着かせてから話してもらおう。


「もこー、深呼吸して」

「そんなことしている場合かー!」




・・・・・・・・・・・




「……でね、その薬を飲んでみたら気持ち悪くなって気を失ったの」


 一先ずもこーを部屋まで誘導し、団子を食べさせお茶を飲ませ、和やかな雰囲気になってから話をさせる。

 内容を要約すると「ムシャクシャしてやった。反省するつもりはない」である。不死になったのは、永琳会長がかぐやさんのおじいちゃんに渡した薬によるものらしい。


「……話してたらまたムカついてきた! もう決めた! 私、旅に出る!」

「じゃあね」

「元気にしてるんだぞ」

「……復讐を誓った主人公の旅……。行けるわ」

「少しは引き止めなさいよ!」


 お互い長生きだし、どうせまた会えるだろう。

 もこーは不死である為に、旅に向けて特別な準備をしなくても良し。思い立ったら即行動ができる。唯一必要なものは挫けない心だ。


「皆キライだ!!」


 もこーは捨て台詞と共に部屋を出て走り去ってしまった。


「……追わなくて良いの?」

「妹紅にはきっと君が必要なんだ」

「……はあ?」


 少女とヤマメがいつの間にか私に背を向けて立ち上がっていて、顔の半分だけは私の方を向いていた。対して私は口を開けっ放しにして座っている。さぞかし間抜けな表情を見せてるんだろうね。


「……きっとあなたを待っているわ」

「妹紅の心を動かせるのは君しかいないんだ! ……行ってくれないか。私らじゃ、役不足だ……」

「……なるほど」


 面倒なんだね。


「行ってきますよー。はーいばいばい」

「行ってらっしゃい」

「後で追跡劇の話を聞かせてもらうわ」


 部屋を出て庭に下り、一応走って敷地を出る。

 道路に降り立ち回りを見るが、右も左も白いのは見えない。もう遠い所まで行ってしまったのだ。もこーよ、お元気で。君ともっと親しかったら引き止めたのに。

 ただ、今諦めて戻っても、ヤマメと少女にぶーぶー文句を言われる。何時間か探す真似でもしてみるか……。


「朱雀大路に出てみるか……」


 困った時の大通り。正直他の道を進むと迷ってしまいそうで怖い。

 水橋清里の家がある通りには、通行人があまりいないので歩き易い。堂々と真ん中を歩く。

 完全に人がいない訳ではなく、二十メートル先に怖そうな兄さんがこちらに向かって歩いているのに気付く。相手は避ける気が無さそうだと察した私は、事前に右にそれてやり過ごそうとした。

 が、


「いてっ」

「どこ見て歩いとんのじゃワレェ!」


 相手はすれ違う直前に私の方に寄り、わざとぶっかってきた。

 ……絡まれました。


「すいませんすいません」

「服が汚れちまったじゃねぇか! どうしてくれるんだァ?」


 すんごい迫力。泣きそう。


「これぁカラダで払って貰うしか無いなぁ……?」

「いいえ」


 すぐそうなるんだね。あ、でもこれって私を女だと見てくれてる証拠……! この人、本当は良い人だ。


「あぁん? 言う事聞かねェと、木葉組がオマエをこの街で生きられなくするぞコラァ?」


 そっちの方でしたか。でも、木葉組って……。名前が一致してるのが嫌なんですよ。からかいとかカン違いの原因になりますから……。


「うぅ、どうすれば……」

「おら! こっち来い!」


 大きいお友達は私の腕を掴んで強引に引っ張る。下手に抵抗して殴られたら嫌だ。本当に危なくなったら、能力を使って全力で逃げるしかないか……。ここは、街中だから。妖力を使うと別の危険が迫ってきそう。今は頑張って耐えるしかない。

 この状況、もし私が妖怪じゃなかったらと思うと……。


「ちゃっちゃと歩かんかァ!」


 さあ、心頭滅却の時間だ。




・・・・・・・・・・・




 腕を引っ張られ、連れて来られた所は水橋清里の家と同じ位の大きい家。でもなんか、纏ってる雰囲気というのが……、荒々しい? まさにそういった人達のアジトである。

 玄関から中に入ったところで、あまりの怖さに私の心臓は体を揺らす程の拍動を始める。さっき食べたお団子が出てきそう。

 そして広間まで引きずられ、そこでやっと解放される。中には大勢のお兄さん達が正座していた。


「女を連れて来たぞ」

「女? 男だろう」

「男だ」

「男に一票」

「女に一票」

「どちらでもいい」

「男に決まっている」


 兄さん達が口々に私を評価する。くや、しい……!


「確かめろ」

「分かりました」


 何を言っている。

 私を攫ったお兄さんが私の前に立ち塞がる。


「バンザイしろ、バンザイ」

「え、え」

「言うこと聞かんか」

「は? や、やめ……!」


 男が痺れを切らし、手をこちらに向けたその時、


「そこまで」


 第三者の声に、男達の動きが止まった。

 声は広間の入り口から。すなわち私のすぐ後ろから聞こえた。


「すぐにその方を解放しなさい。それと最高のお持て成しの準備を」

「く、組長……! しかし……!」

「従いなさい」

「は、はい」


 しっかりと通る声。かつ、女性の声。私はこの声を知っている。




「お久し振りです。師匠。若輩者のご無礼をお許し下さい」




 恐る恐る振り返って、声の主を確かめる。

 黒髪。長髪。長身。美しく整った体躯。頭に足りないパーツがある気がするが、この人は間違いない。


「……黒花?」

「左様でございます」


 木隠黒花(こよりくろか)

 私がこの過去に来てすぐの時、いきなり襲ってきた鬼。色々あって黒花は私の能力を開花させ、その時からなぜか私を師匠と呼ぶようになり、数十年の間私と共に暮らした。慕ってくれているが、本当にお世話になっているのは私の方であった。黒花がいなければ、私は数十年間孤独だったのだ。

 私が住処を出て守矢神社に滞在している間に、黒花は人間と妖怪の関係性を調べると言って旅立った。その実験場所がここ、人間が集まる街なのだろうか。

 出会った時は救いようのない程のバカ、別れた時は成長して幾分マシになったけどやはりバカ。でも今の黒花の言動からは知性が溢れ出している。それが見た目と合わさって、非常にデキる人に見える。私、こんなのに師匠とか呼ばれるって……。


「…………えと、その」


 何を言ったら良いのか分からない。大きいお兄さん方に囲まれている中、きれいなおねーさんに師匠と呼ばれるこの状況。これが混乱せずにいられるか。


「師匠、あちらに席を用意させてます。再会の喜びはそこで盛大にやりましょう」

「…………うん」


 こういう時って敬語で話せば良いのかいつも通りに話して良いのか分からず、結果的に無口になってしまう。

 黒花の先導で、両端で正座をしているお兄さん方の間を抜け、広間の最奥、一段高くなっている席に座れと言われた。一段高いのでお兄さん方がよく見える。大変見晴らしの悪い場所だ。


「お前ら、この方は私の師匠であり、この組の名の元にもなっている、木葉緑様だ。しっかり目に焼き付けておけ」


 黒花がお兄さん方に告げると、周囲がざわつき始める。なんでこの組の名前を私の名前にしたの? やめて欲しい。


「黙れ! 文句ある奴は手前の力で示せ! 私を凌ぐ強さを持った、この木葉緑様が直々に相手してくれる! ……ですよね?」


 いいえ。

 しかし黒花の一喝は効果覿面だったらしく、お兄さん達は黙り込み、私は戦わなくて済んだ。


「く、組長、酒のご用意が」


 私を誘拐したお兄さんが酒瓶と盃を携え、頭を下げて差し出した。


「よし。お前達も飲め。今日は師匠が帰還した目出度い日だ。皆で祝おうじゃないか」

「は、はい……!」


 黒花の一言で、張り詰めていた場の空気が和やかになった気がする。お兄さん方は私が嫌でも宴会は好きなのか。


「さあ師匠、盃を持ってください」


 ちょっと持ってください。私はお酒を飲めません。

 でも、私の心は弱いんだ。こういう場所で盃を断ったら絶対酷い目に遭う。法が及ばないこの業界では礼儀が全てなんだよ。


「…………お願い、します」


 今日ばかりは断れない。一度幼女に騙されて飲んでしまい、気を失ったことがあるが大丈夫だろうか。少しずつ飲めば生還できるかな。盃はあまり大きくないし。

 黒花は私が持った盃に、丁度良い位に酒を注ぐ。ここはおっとっととでも言うべきか。


「さあ師匠、ぐいっと」


 残念ながらそれはできません。

 私は亀のような鈍さで盃を口に近づける。そんなことすると飛んでくるアルコールが目や鼻に入って痛いのだが、緊張感がそれをかき消す。盃を口につけ、息を止めながら少しだけ傾ける。


「…………ぁぅ」


 一滴だけ舐めたそれは、ただの消毒液だ。口に入れるものじゃない。

 だが、ここでやめることができない私は、勇気を振り絞って一気に盃を傾ける。流れ込んでくる酒の味を認識しないように目を瞑り、再び息を止め、味覚を無にして通過させる。のどが焼けるように痛いのを我慢し、飲み干したらすぐに新鮮な空気を取り込む。


「師匠、良い飲みっぷりです」


 空になった盃に、黒花はすかさず二杯目を注ぐ。

 忘れてた。この人鬼だった。

 私、死んだ。




・・・・・・・・・・・




 案の定私は気を失っていたようだ。

 目を覚ますと、私の周りには死体が横たわっていて、立派だった家は跡形もなく消えていた、なんてことは無い。良かった良かった。

 辺りはもう真っ暗で、お兄さん方は大いびきをかいて雑魚寝。かく言う私もその一人だったのだ。私の周りには一升瓶が何本も転っている。……え?

 隣で今もちびちびと呑んでいる黒花に聞くと、私は大量の酒を飲みながらどうしようもない位ずっと泣いていて、黒花に甘えていたらしい。自分の組長に甘える私の姿を目の当たりにした大きいお兄さん達は、私のことを黒花より強い偉大な人だ、と認めざるを得なかった。これでお兄さん達は私に手出しをしなくなる、といった内容をすごい笑顔で言われた。酔っていたとは言え、情けない姿を晒してしまったことは人生最大の汚点である。記憶にないから余計に怖い。


「頭が……」

「二日酔いですか? 師匠お酒は初めてで……?」

「水に騙されて一回なら……」

「じゃあ本格的に飲んだのはこれが初めてですね。それなのにこの飲みっぷり。やっぱりあなたはあたしの尊敬できる人です。永遠にあたしの師匠です」


 もうやめて。私をこれ以上持ち上げないで。


「そうだ、黒花……」

「ん」


 聞きたい事はいっぱいある。一つずつ質間だ。


「角は?」

「ああ角の事ですか?」


 黒花は頭に手をやり軽く叩く。

 ついでに丁寧な言葉だと違和感しかないから、昔のような喋り方をするように頼んだ。


「この角はね……、へへ、何だかなつかしいな」

「黒花が変わり過ぎなの」

「そうだね。昔のあたしはあたしじゃなかった。……話を戻すよ。この角は私の能力で隠してるんだ」

「やっぱり能力か」

「あたしの能力は、『変化する程度』さ。それを使って人間としての木隠黒花に変化してる」

「変化……。便利そうだねぇ」

「便利便利。あたしらは顔をあまり知られたくないから、その時にね」


 こんな特殊な職業をしなければいいのに。


「なんでこんな事やってるの?」

「この職のこと? それはね、師匠とあたしのためだよ」

「……私?」

「妖怪としての力を強くするには人間の恐怖が不可欠だって最近分かったんだ」

「知ってる」

「さすがあたしの師匠……。それで、人間の恐怖を集めるにはこの職業がぴったり。圧倒的な力をもつことにより、そこに存在するだけで人間の恐怖心を駆り立てることができる、この組を立ち上げたんだ」

「なぜ木葉組……」

「師匠の名前が入っていれば恐怖の対象は木葉に、師匠に向かうんだよ」


 守矢神社みたいな仕組みだ。あそこは諏訪子が仕切っているが、信仰の一部は神奈子に向かっている。異なる点は、人間が持つ感情が信心か畏怖か。私は何もしていないのに恐れられるのか。


「ありがたいけど、複雑な気分」

「師匠、妖怪というのは、そういうものなんだ。基本的に神や人間とは相容れない」


 神奈子諏訪子、人間ヤマメや水橋清里など、極稀に仲良くなれる程度のものか。でも今まで何不自由なく街で暮らしているし、絶対相容れないなんて印象は受けないな。


「今はまた小っこい組織だけど、数百年もしたら裏世界を牛耳る大きな組織になるよ。そしたら師匠もあたしも強くなれる」

「悪いことをするなとは言わないけど、程々にね?」


 黒花が身を滅ぼすのなら、私は強くならなくてもいい。


「分かってる。引く時は引く。そうじゃないと簡単に潰される」


 人類を敵に回したようなものだしね。


「……でも、参ったなー。私がそっち関係との交流をするとは思っても見なかった……」

「あたしは組長と呼ばれてるけど、本当の組長は師匠だからね?」

「終わった。私終わった。バレた時にちゃんと目に黒い線をいれてくれるかな」

「大丈夫だって。いざとなったら知らない振りをしてもいいから。あたしが勝手に始めたことで師匠を困らせたくない」

「今も少し困ってるんだけど……」

「師匠、それだけは我慢して欲しい」


 黒花は持っている盃を置き、私に向き直って真面目な表情になる。こんな黒花、今まで見たことない。


「このままだと、妖怪は絶滅する」


 頭の中に、科学にまみれてオカルトが笑い話になった末来の光景が。


「陰陽師、という妖怪退治の専門家が最近現れている。それはつまり、妖怪への対処法が明らかになった訳だ」

「う、うん」

「今現在は、街の人間が不快に思った程度の小さな妖怪を退治して回っているだけ。でも時を経るにつれて陰陽師が力をつけ、対処法が体系化され、究極的には誰もが妖怪を退治できるようになると思うんだ。それで怖いものが無くなったと分かった人間達は、住処を広げるようになり、退治されたくない妖怪はどんどん隅に追いやられ、やがて全てが人間に埋め尽くされるだろう」

「そうだね」


 末来の世界。

 道はアスファルトで舗装され、どんな場所だって迷わず行けるように張り巡らされている。家を出て少し歩けばすぐに民家がある。街灯のおかげで夜も堂々と出歩ける。恐怖することと言えば、スリや不審者のことであり、妖怪みたいな訳の分からないものは最初から頭にない。

 怪奇現象は、人間の見間違い・特殊な物理現象が起こったなどという理由で、全て片付けられる。偶に本当に取り憑かれているような人も出てくるが、それは本人の病気だと、世間からは冷たい目で見られる。恐怖が存在する余地がない。

 神様だってそうだ。縁起が良いという性質上、形だけ神社や寺などの施設が設置されているが、信仰など無いに等しい。参拝するのは年一回の初詣ぐらいで、目的はお守りを買ったりおみくじを引く方に傾いている。

 人間にとっては快適だ。私がそこで実際に生活してきたから、自信を持って言える。しかし、妖怪にとっては地獄だ。その地獄から逃れるために誕生したのが幻想郷だったと思う。


「向こうが体系化された手法を使ってくるなら、こっちだって体系化された恐怖の種を作ってやらなきゃ駄目だと思うんだ」

「それがこれか……」


 確に怖いよ。これは。

 幻想郷とは全く違う方向の考えだ。


「黒花、本当に頭良くなったね」

「約千年振りのほめことば……!」


 現実に対抗するために、幻想を現実に変える。その現実で幻想を生かし続ける。これって矛盾してないか。難しいのぅ。


「……一応、認めるよ。その方法がどれだけ通用するか、私に見せてよ」

「あ、ありがとうございます……!」


 こうして私は、道を極める人達の名前だけ組長となってしまった。



















☆秋姉妹的てやんでぇ


「静葉です!」

「さとりです!」

「やってらんねーわ!」

「そんなこと言われなくても分かってますよ!」

「穣子は村人と一緒に祭りができるし緑は何だかんだ言って一人になったことは無いし!」

「ふざけてますよね! あいつら孤独の意味が分かってないんじゃないんですか!?」

「さとり! あなたもよ!」

「な、なんですってー」

「年がら年中動物達に囲まれていっぱいもふもふして!」

「ちょっと位いいじゃないですか!」

「私は一人で紅葉を見るしか能がないのよ!」

「でも静葉さん! 思い出してください! 私達には、誇れる妹がいるじゃないですか!」

「誇らしいわよ……、ええ誇らしいわよ! 私達姉よりも力が強い妹を持っているなんてね!」

「……そうでした」

「……」

「……」

「スカーレットさんの家もそうよ……」

「姉って辛いです……」

「……今夜も飲み明かしましょう……?」

「……はい」



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