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東方現葉幻詩  作者: 風三租
第三部 いい旅夢気分
24/44

一竿風月、スリル満点です

あとがき。


輝夜のお話は他の筆者の方々が書いてくれていますので、あまり引き延ばさないことにしました。


今回初めて三人称を用いてみたのですが……あれは難しい。もっと練習しなきゃ。





 かぐやさんが配置につくと、外で待っていた貴族が簾で仕切られた隣の部屋に入ってきた。その数五人。大勢並んでいた割には少ないと思ったが、『竹取物語』の内容を思い出すと、求婚してきたのは確かに五人だったと自己解決。


「ようこそおいでくださいました本日はお日柄も良く絶好の求婚日和となっておりますのでご用求を聞かせて頂きましょう」


 棒読みである。

 かぐやさんが言い終わると五人が好き放題に喋り始めた。簾の妨害によって誰が喋っているのかは分からない。


「世にも美しきなよ竹のかぐや姫と婚約の契りを交わしとう御座います」

「貴女様の美しさは私めが最も良く知っております故、どうか私を選んでくれませぬか」

「長く艶のある美しい御髪に白雪を思わせる瑞々しい肌。私の心には貴女様の姿形が染み付いて離れませぬ」

「私の愛はこの中で群を抜いております。この熱は一生覚めやらぬことにございましょう」

「私を好きになっても良いのだぞ」


 と、皆愛の込もった告白をする。ああ、どこかにエチケット袋ないかな。

 かぐやさんは途中何度も舌打ちをしていた。身代わり人形を覗き見られただけでここまで言われているのだから、その怒りも理解できる。ただ、こんな感情表現が豊かな人がかのかぐや姫だと思うと、私の中で確立していた清楚な姫のイメージが木っ端微塵に砕け散る。

 最後の人の挑発ともとれる発言が終わると、かぐやさんは手に力を込めつつも、丁寧な話し方で返答する。


「その要求は喜んでお受けいたしましょう。ただし条件がございます」


 おっ! これはあの「無理難題」が始まるシーンじゃ……!


「今から私の祖父が貴方様に渡す紙に、私の要望が書いてありますので、それを叶えられた方のみとの婚約を受け入れましょう」


 奥でおじいちゃんらしき人影が紙を配っている。中身を見たいと思うと、かぐやさんが下書き用紙らしきものをを取り出して私に見せてくれた。




 ◎虹の霊刀(ATC2500)

 材料

 火鼠の皮衣  ×1

 蓬莱の玉の枝 ×3

 竜の頸の玉  ×2

 仏の御石の鉢 ×1

 燕の子安具  ×3

 ↑

 盗むじゃないと取れない!




「…………。…………あ、そう」


 ゲームのメモ書きだった。これから強い武器でも合成するのだろう。下の方にあるかぐやさんの手書きコメントが妙に生々しくて困る。私の中でのかぐや姫が次々と爆発していってる。

 かぐやさんってば本当にやる気が無いんだね。偉い人に対してここまでいい加減になれるかぐやさんが羨ましいよ。


「注意点は一つ。必ず自らの力で問題を解決することです。では皆様方、健闘をお祈り申し上げます」


 かぐやさんがさっさと締めると、貴族達は一秒でも早く課題を終わらせたいのか、我先にと言わんばかりの勢いで帰って行った。


「……ふぅ」


 面倒事が終わって、ほっと一息のかぐやさん。


「木葉、私これから婚約を断わる言い訳を考えなきゃならないの。あいつらたぶん金の力で課題を解決してくると思うから。そんなわけで今日も対戦はできそうにないわ」

「いいよいいよ。いいもの見せてもらったし」


 特等席で歴史の流れを見届けるという前代未聞の体験をしてしまった私。もうお腹いっぱいだ。


「じゃっ! 帰るね!」

「ほーい。あ、いつ貴族が来るか予想できないから、当分の間はウチに来ちゃだめよ」

「決着つかないじゃん!」

「残念ね……。いっそのこと逃げ出そうかしら」


 今後の予定としては、貴族が課題をクリアしてかぐやさんがそれを嘘だと見破り解散。そしてすぐに帝が求婚にやって来て、それを断わる前に月からかぐやさんの迎えが来る。帝は阻止しようと兵を送るが願いは叶わずかぐやさんは昇天する、というストーリーを辿るはずだ。だとすると、私とかぐやさんが会える日は残っていない……? 月のゲーム機を見ることなく、私はかぐやさんと別れなければならないのか。

 しかし私にはどうすることもできない。歴史を変えるなんて、ちっぽけな私が為せるものではないのだ。無念だよ。


「かぐやさん、次の満月の晩にお別れを言いに行くから……!」

「木葉はなんで私の予定を当ててくるの?」


 かぐやさんの言葉に返答するのは難しいので、私は聞こえないフリをしておじいちゃんに挨拶して家を出た。




・・・・・・・・・・・




「……緑さん、どこに行ってたの……?」


 水橋清里の家に帰還すると、新メンバー・未だ春が庭で散歩をしていた。


「噂の美女のところに行ってた」

「……! あの、藤原って人いなかった……? 美女に求婚した人なんだけど……!」


 未だ春が過剰反応した。あれか、その藤原って人が未だ春に関係しているのか。


「五人いて誰が誰なのか分からなかったよ。ちなみに美女のかぐやさんに無理難題を出されてみんな出かけたよ」

「……くっそあのジジイが……! 緑さん、私の正体を教えましょう」


 なんで私に教えるの?


「私の本名は藤原妹紅(ふじわらのもこう)。あのジジイの娘。今から帰ってジジイを殴ってくるから、清里さんによろしく言っておいて!」


 寡黙キャラが一転して元気娘に。そして藤原ジジイさんを殴るべく、未だ春改めもこーは走って行ってしまった。うむ。展開が早過ぎて理解が追い付かぬ。


「……そうだ。ヤマメと遊ぼう」


 今の一連の出来事は無かったことにした。

 水橋清里の家に入ったばかりの設定である私は、最初から何も無い庭を百メートル走って自分の部屋に入る。ヤマメの気配が一つ。


「ヤマメー、あーそーぼー」

「お帰りー。遊ばないよ」


 ヤマメに拒絶されてしまった。苦楽を共に経験してきた仲なのに、きっぱりと拒絶された。


「私とヤマメはその程度の関係だったんだね……」

「何を言ってるんだ」

「……っ!」


 ヤマメが喋り終えた瞬間、背後から息を飲むような音と皿を落として割ったような音が聞こえた。振り向くと少女の姿と足元にお皿の破片が。


「お、少女。なんでお皿割ったの? 嫌がらせ? 私に踏ませる気なの?」

「あ、あんた達、ずっと一緒にいると思ったら……、そういう関係だったのね……! ばっちいわ」

「違うよ! みど……、富山は頭がおかしいのは前から分かっているだろう!?」


 ヤマメさんのナイスじゃないフォロー。


「そそそうね。……つまらない」


 最後の一言はよく聞こえなかったが、どうせ私への暴言だろう。

 ヤマメは遊んでくれない、名も無き少女は私をいじめる……。再び一人孤独に空を眺める生活が始まるのか。次の満月の日が待ち遠しいね。




・・・・・・・・・・・




 日々の無駄遣い。ほぼ不老の私だからできる芸当である。

 つまり今日――満月までの一箇月間はボーっとして過ごした。掃除しろだの洗濯しろだのとうるさかったヤマメと少女は、最近諦めたような目で私を見るようになった。

 まあそんなことはどうでもいい。今夜はかぐや姫の昇天の日だ。私はヤマメと少女に別れを告げ、かぐやさんの家の近く、全体を見渡せる木の上に座ってみた。


「おーい! かぐやさーん!」


 多くの兵士で混雑していて、私の呼び声は届かない。

 こんなに数をそろえても、月の科学力の前では役に立たないだろう。残念だったね。


「来たぞ! 配置につけい!」


 兵士の一人が大声で命令すると辺りは一気に静かになった。聞こえるのは虫の音と頭上でけたたましく鳴るエンジン音。


「エンジン音!?」


 空を見上げると、黒塗りの高級車が群れを成して近付いているのが分かった。もっと他に良いのは無かったのか。最初から最後まで、ことごとく私の夢を打ち砕いてくる。

 私ががっくりしている間に、兵士達は空飛ぶ車に向かって弓を引き絞り、放つ。

 その一部は車に当たるが大したダメージにはならず、車はどんどん地上に近付く。


「一群は除染、二から四群は近辺にて待機。以降は上空にて様子を見よ」


 車から感情を失った人の声がする。

 一群と呼ばれた車三台は、ただちにかぐやさんの家の敷地内に着陸し、窓を半分開けて何かを投げた。

 瞬間、それらは爆発。車の外で攻撃するのを忘れ、呆然としていた兵士は文字通り色んな方向に飛散ってしまった。すごく残酷です。手で目をふさぐが指の間から見続けちゃう。

 爆発が収まると車から白の防護服を着た人が降り、L字型の武器――銃で残った兵士をあっと言う間に撃ち殺す。すごく残酷です。遠くからだから見ていられるのです。

 掃除が終わると、車の中からもう一人、ナース服の女性が出てくる。言わずと知れた、八意永琳ヤツイグループ会長である。

 私は危険を顧みずにかぐやさんの家に接近する。車の後ろに隠れて会話を聞いてやるのだ。


「姫。お迎えに参りました」

「永琳……、私、帰りたくないよ……!」


 かぐやさんが中から顔を出して、会長と会話を始める。


「ですが姫様、ここは穢れ切った地上です。月の民が暮らすような場所ではありません」

「じゃあ私は穢れたんだ。今の生活が楽しいんだもの」

「いいえ姫様。貴女は今この時より地上の穢れを纏わぬ月人なのです。なぜなら罪の償いを終えたから」

「穢れ穢れって言ってるけどこの世界は全然汚くないよ!」

「穢れています。姫も心当りが無い訳ではありませんよね? そう、今周りを見ても分かることです。姫を独占しようとした地上の人間が金と権力で人を動かし、このような状況になっているのでしょう? これらの主は今頃別の場所で座り、ゆっくり酒でも飲んでいる事でしょうね」

「うっ……」


 言葉につまるかぐやさん。言われてみると確かに穢れている。武力に物言わせ、必死に生きるヤマメ達の村を潰した政府。金に物言わせ、会長の言うようにかぐやさんを独占しようとする帝や難題を無理矢理解決しようとした貴族達。権力欲しさに、はるか昔の街で、会長をやめさせるべく罠に嵌めようとした会社員達。

 確かにキタナイ。でもそれとは別に水橋清里みたいな優しい人とか、守矢神社の温かい家庭とかも存在しているのだ。私の能力がそうであるように、「汚いものがあるかわりに、美しいものがある」という交換が成り立っているのである。

 プラスとマイナスが合わさってできるゼロなのか、プラスもマイナスもないただのゼロなのか、問題はそこなのだろう。


「さあ姫、綺麗な月に帰りましょう」

「……い、いやだっ!」

「…………」

「永琳! チャンスをちょうだい! あなたがここでしばらく暮らすことができれば私を連れ帰らないで! 耐えられなければ一緒に帰る!」

「…………」


 かぐやさんの説得に会長は頭を垂れ、深い溜め息をつく。


「…………本当、姫は昔から物事を良いように言い包めるのが上手です。私は何度、それに心を動かされたことか……」

「永琳! お願い!」

「こうなったら姫は意地でも動かないのでしょう? 姫のお願いは強制です。ずるいです」


 会長は私に背を向けていて、どんな表現をしているのか分からない。しかし昔を懐かしむような彼女の物言いから、察することはできるだろう。

 会長は頭を上げてかぐやさんと見合う。


「……良いでしょう。それもまた一興」

「永琳!」

「車に乗って下さい。これから一っ走りしますよ」

「そのまま連れ帰らないでよね!」

「私がそんな穢いことをするとでも?」

「いいえ!」


 なんだか和解したようだ。


「おじーちゃーん! おばーちゃーん! 今までありがとー! 元気でねー!」

「手土産として不死の薬を差し上げます。姫を育ててくれたことを感謝します」


 ご家族の方にも別れを済まし、軽い足どりで私が隠れている車の方に来る。おばあちゃんっていたんだ。


「姫、これから他の月人を撒かなくてはなりません。覚悟と準備はよろしいですか?」

「オッケーよ!」


 かぐやさんは私の反対側にあるドアから中に入るが、運転席はこちら側だ。高級車なのに右側ハンドルだ。

 そうなれば必然的に、会長と私の目が合う。


「……あら」

「こんばんは」


 挨拶は大事。

 動きを止めた会長を見て不思議に思ったかぐやさんは、車内からこちらを覗く。私の姿を発見したかぐやさんは、半分だけ開いてる窓を全開にした。


「木葉! 来てくれたのね!」

「やあ」

「姫のお友達……? あの、これからこの乗り物で走り回るんだけど、轢かれる危険性があるわ。だから、乗る?」

「あ、はい」


 行き先不明。どうなるか分からないが轢かれるのはごめんだ。

 かぐやさんがドアを開けてくれたので、そこから乗り込む。会長も運転席に座り、エンジンをかける。すると防護服を着た月人達は、慌てた様子もなくこちらに駆け寄って来る。ロボットみたいな人達だ。


「うわー久し振りだー……!」

「私は十数年振りね」

「話は後よ。今は一気に逃げることに集中」


 言い終わるや否や、会長はいきなりエンジン全開で走り出す。同時に前後左右と空で待機していた車が動き始める。


「姫、銃の扱いは?」

「大丈夫よ。ここ何十年で鍛えてあるから。ゲームで」

「じゃあ姫、近くの車を撃って!」


 会長は片手でハンドルを捌きながら、もう片方の手で引き出しから銃を取り出し、かぐやさんと私に投げて渡す。


「タイヤを狙うのが早いわ! トリガーを引くだけで撃てるから!」

「分かったわ! 木葉、あなたも手伝って!」


 ……まじですか?

 挙銃なんて持ったことないのに。この重みが、生々しい。

 と思っているそばからかぐやさんは開いている窓から接近する車を撃つ。


「木葉早く!」

「はいはいやりますよ!」


 ちゃんと、ね、人を撃たないように。タイヤだけを狙う。

 目を瞑ると狙いが変な方向に向いて危ないので、よく見て人差し指でゆっくり引き金を引く。少し手が震えているのが分かる。

 引き金の抵抗がなくなったと思うと、耳が痛くなるような銃声と共に近くの車のタイヤが空気を吐き出し、バランスを取れなくなってくるくると回りながら減速。……あれ、た、たのしい。


「うおーーーー!」


 変な火が点いてしまった。一度やって無害だと分かるともう止まらない。調子に乗って後方の車二三台と上空の車三台をバンバン撃ち落す。はるか後方で爆発音が聞こえたが見ない振り。


「姫! 前も頼むわ!」

「了解! 木葉も気付いたらお願い!」

「うおーーーー!」


 竹林の狭い道に入り、追っ手は私達の横につけなくなる。前の車を撃って減速したものと衝突しないよう、会長は巧みなハンドル操作で避ける。避けると言うよりかは無理に突っ込んでる印象も受けるが、それでも車が壊れないのは、矢を弾く強化ボティのおかげだろう。


「永琳! あと何台位!?」

「上空二十に後方五。前は片付いたわ」

「よし! すぐに終わる!」


 そんな会話中にも私はドカドカ撃つ。一気に五台減った。もちろん全部タイヤを狙って撃ってるよ。

 数秒で追っ手は半分に。狭い道を抜け前方に見えるは私の拠点となっている街。


「木葉、平城京から来たんでしょ!? 送ってくわ!」

「うん、ってあれ平城京だったの!?」


 余裕が出てきた所で新事実。納豆食べたい。


「永琳、あそこで一回止まって」

「時間はあまりとれませんよ」

「木葉を降ろすだけだから」


 ばーんばーんばーん、と最後の三台がスリップして停止する。あっけなかった。


「木葉、あなたとゲームしたかったよ。また、またいつか会えるよね!」


 止まる時間は無いので車内でお別れ会だ。


「私も月のゲーム機が見てみたかったんだけどねぇ」

「そういえば木葉、ゲーム機は知っているのに月のことは分かってないみたいな言い方するし、私が今日月に帰るのを知っていたみたいだったし……。木葉って――」

「着いたわよ。早く降りて」


 言葉の途中でタイムリミット。言われた通りに素早く降り、小さくじゃあねと言ってドアを閉める。

 かぐやさんは窓に貼り付いて私を見る。そんな時間は一秒も持たず、車は再び猛スピードで発進した。


「…………何ともまあ、アグレッシブなかぐや姫だったのでしょう」


 静寂が訪れた平城京の前で、私は今日の出来事に「KAGUYA〜逃げのびる少女〜」と、洋画のようなタイトルを付けたくなった。




・・・・・・・・・・・




 かぐや姫が従者と共に脱走した翌日。

 僅かに欠けた月からひらひらと布のような物が落ちてきました。

 ゆっくり、ゆっくりと地上に落ちるそれは、白く光る蝶の姿でした。

 ゆっくり、ゆっくり落ちた先は、日本一高いと言われる不死の山。

 そこには一つ、二つ、人影があります。


「月の残した運命に翻弄されるのは誰ぞ、誰ぞ」

「……」


 喋っているのは美しい女性。その身で花を表す程の、美しい女性。

 対して黙っているのは少女。白銀の髪が風に揺られ、悲しげです。


「美しさは穢れから生まれる。穢れは美しさから生まれる。それは理想、野望、恋愛、嫉妬、憧憬、羨望」

「……」

「無からは無しか生まれぬ。それを有とし美と名付けるか、無は無のままで在るべきか」

「……」


 山の頂で、二人は月を眺めます。


「おまえはこの世界と月の世界、どちらが正しいと思うか」

「…………私は」


 少女が初めて発した言葉を、女性はやさしい表情で聞きました。




・・・・・・・・・・・




 KAGUYAの一件が終わって数十日後、遊び相手が旅立ってしまい再びヒマになった私は、ヤマメと少女と一緒に団子を食べていると、変な人が敷地内に入り込んできた。


「清里さーん! いるー!?」


 遠くの庭で清里を呼ふ声がするのだ。すぐに三人で様子を見に行ったが、誰もいない。


「きーよーさーとーさーん!」


 違う。庭の白石と同化していて、遠目からだと気付けなかっただけだ。

 侵入者は白石のように真っ白な髪を生やし、真っ赤な瞳を持った少女だった。


「あ、緑さんにヤマメさんに……名前が分からない少女さん」

「誰?」

「誰だい?」

「紅い目……っ! か、かっこいいわ……!」


 向こうは私達を知っているようだが、生憎私には白化個体の友人はいない。


「私だよ。藤原妹紅だよ」

「藤原さん!?」


 ずっと前にいなくなってから一度も現れず、やっと帰ってきたと思ったら真っ白に。夏休みを終え二箇月振りに会った友人が、髪を黄色く染めピアスをズボズボ刺し、見違えてしまった時の気分である。ただもこーとはあまり話したことがなく、友人とまでは行かないが。

 これはきっと、偽名の時と同じノリだ。体を張って自分を偽っているんだ。私よりも重度の人見知りなの?


「正体を現せ!」

「正体? ……ああこの姿?」


 もこーは悟ったように上を向く。空には何もないね。


「私、不死になったからよろしく」







☆秋姉妹的カーチェイス


「魔理沙だせ!」

「穣子です!」

「来ちゃったぜ」

「お姉ちゃぁぁぁん! わたしのお姉ちゃんはどこ!? 返してよ!」

「静葉は今ごろさとりと酒盛りをしているだろう」

「なんで!?」

「孤独同士思うことがあるんだろう」

「お姉ちゃんにはわたしがいるじゃん!」

「あ」

「な、なに?」

「あけおめだぜ!」

「あ、はいどうも。あけましておめでとうございます」

「……」

「……」

「……」

「いいからお姉ちゃんを返して!」

「次回、『もこたんぐれる』。ここから歴史は始まる……」

「変なタイトルつけないでよ!」


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