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東方現葉幻詩  作者: 風三租
第三部 いい旅夢気分
19/44

粟散辺土、旅行だそうです


「ねえねえ、街に行ってみたいなって思うんだけど」


 村長に対する恐怖心からヤマメの家で目立たないように生活すること数日、暇すぎる。木の板で分厚いトランプを作ってみたけどヤマメが昼間は出かけていないので、一人で七並べするしかない。そんな光景を見たヤマメが、私に優しく笑いかけてきた記憶が妙に残っている。

 これ以上ここで生活してたら、どんどんかわいそうな子供になっていく気がする。この村はなるべく出歩きたくないから、他に思い付く場所を言ってみた。一人で旅立っても良いのだけれど、無計画で歩き回ると、次に人里を見つけられるのが何十年後になるのか分からないので、ヤマメに聞くという安全ルートを選んだ。


「はあ!? あそこは私達の敵しかいないんだよ!? 無理に決まってんじゃん!」


 怒られた。


「……いや、でも、たまには潜入して情報を集めてくるっていうのも……」


 と思ったら、一人でぶつぶつ喋り出した。


「……相手の戦力とか武器とか分かってると便利だよな……」

「(あなたは街に行きたくなーる、あなたは街に行きたくなーる)」


 迷っているようなので、耳元で応援してあげる。


「……村長に聞いてみようかな。それで駄目だったら諦めてもらおう……」

「聞くだけじゃない! 説得するんだ! そういう受け身の態度ばっかりとってると、将来自主性のない人間になってしまうぞ!」

「……? 富山の言ってる事がよく分から……、ああ……」


 何かに気付いた素振りを見せたヤマメは、にっこりと笑いかけてきた。良い笑顔だけど最近なんでそんな表情を向けてくるの? まるで痛い子を見守っている時のような顔じゃないか。


「大丈夫だからね。時間がある時はちゃんと構ってあげるから、今はゆっくり心を落ち着かせるんだぞ」


 やさしい声で喋りつつ、私の頭をなでてくる。どうして急にやさしくなったの?


「じゃあ私は村長の所に行ってくるからね」

「はーい」


 一人で七並べをする時間だね。

 私は木製トランプを道具箱(ヤマメが作ってくれた)から取り出し、シャッフルを始める。

 そんな私を、ヤマメは穏やかな、それでいて悲しみもこもったような表情で見届けて、出て行った。




・・・・・・・・・・・




 いつものように一人で遊び始める富山を見届けて、私は外に出た。

 富山はばちょんをされてから精神的に病んでしまったんだ。あれから富山は毎日毎日トランプとかいう積み木を並べるのに夢中になり、話したと思えばさっきのように意味不明で不安定な言動をとる。

 それだけ精神的な傷が深いんだろう。幸い暗闇を恐がるという症状は出なかったが、やはり日に日に心が荒れている気がする。真っ暗闇の中、薄笑いを浮べながら黙々と積み木を並べる富山の姿を見た時は、流石の私でも涙を隠し切れなかった。

 そんな富山に私がしなければならないことは、ただ見守ってやることじゃない。もうそれだけでは取り返しのつかない状態だ。今は、富山が願ったことをどんな些細なものでも叶えてやって、心を満たさなければならない。


 富山がこうなってしまったのも、元はと言えば私が獲物と間違えて切りかかってしまったのが原因だ。私がこの村に連れてこなければ、富山が病むことはなかったのだ。

 そんな私は富山を最後まで面倒を見てやらねばならない。それはいつになるか予想もつかない。しかしこのまま捨てるというのは人間のすることじゃない。街の人間は、私達を土蜘蛛だと言って妖怪扱いをするが、私は人間だ。それは間違いない。人間を助けられる人間は、立派な人間じゃないか。


 ……一人になるとらしくないことを考えてしまうね。村長を探して歩いているのに、前が見えてないよ。

 村長は家にいることが少なく、一日中どこかを歩いている。決まった順路はなく、用があるならあちこちを探し回らなければならない。しかも背後から話し掛けるとばちょんされるから、必ず正面から遭遇しなきゃいけない。まあ小さな村だから、どちらもそこまで苦じゃない。


 と思ったら発見。ちゃんと前を向いてる。いやー良かった良かった。


「村長ー」

「ん、ヤマメか。どうした」

「相談があるんですけど」

「言ってみろ。聞いてやるぜ」

「……富山が、街に行きたいと言ってたんですが、一緒に行ってもいいですか? ほら、潜入捜査的な意味で」

「富山? あの緑色をした少年か」

「そうです。この前の一件で精神的に参っちゃったみたいで」

「ほー。……良いんじゃないか?」

「え?」

「街に行っても良いんじゃないか、と言った。もちろんヤマメも込みで」

「そ、そんなあっさりと……?」

「行ったとしてもどうせ何ともないだろ。向こうは我ら一人一人を土蜘蛛と見ているのではなく、この村の中にいる者のみをそう見てるのだからな」


 言われてみればそうだね。こっちだって敵の顔を一人一人覚えてる訳じゃないし。


「せっかくの機会だ。敵地では難しいとは思うが、楽しんできたらどうだ。うまいもんでも食って来い」

「あ、ありがとうございます?」

「土産も忘れるなよ。木刀とか木彫りの熊とかしーさーとかを期待しているからな」

「は、はい。それでは……」


 街で売ってるのなんて、木刀ぐらいしかないと思った。






 あっさりとれた朗報を胸に家の戸を開けると、「最初から七が四枚ある!」と言って大声で笑う富山の姿があった。私と同じ位の少女が、たかが積み木であそこまで笑えるなんて、ああ、なんて不憫な子なのだろう。もう見てらんない。五日使って武器の整備をしてから街に行こうと思ったけど、それはやめにして明日すぐ出よう。

 はやく富山が元気になってくれないと、私まで病んでしまいそうだ。大きい人二人で黙々と積み木をしている光景は、なんともまあ奇天烈なものなのだろうか。そうならない為にも、一刻も早く富山に日常を取り戻してもらおう。


「富山、許可とれたよ……」

「え! とれたの!? じゃあ街に行けるんだね!」

「うん。明日にでも出ようかと思ってる。準備は……しなくて大丈夫」

「なんで断定?」


 現実を失ってしまった富山に旅行の準備をさせるのは、荷が重過ぎる。だから富山には安静にしてもらって、私一人で二人分の準備をしよう。


「富山は明日のためにもう寝るんだ。街までかなり歩くからね」

「いや寝ろったって、まだ午前だよ!?」

「富山、旅路を舐めちゃあいけないよ。寝られなくても目を閉じる真似ぐらいはしてみるもんだ。日々の疲れは意外としつこい」

「全く外に出ない日々のどこに疲れる要素があると!? むしろ代謝を促進させるために軽い運動をするべきだと思うよ! ……まぁ、怖いから外出たくないけど」


 富山がよく分からないことを言い、また暴走し始めた。


「分かった、分かったから富山! 早く寝るんだ!」

「寝過ぎも体に毒だと思うよ! 血管が圧迫されて色々とごちゃごちゃするから!」

「富山、もういい……。君がそこまで頑張る必要はないんだ……!」

「全然頑張ってないよ! 自分の準備は自分でするよ! そうすることでホルモン的なものが分泌されて興奮が高まり、明日の旅行を一層楽しめるようになるかもしれないからね!」

「こ、興奮だなんて……、ああもう! 富山しねぇ!」


 いきなりとんでもない事を言い出す始末。私は富山を黙らせるために、常備している短剣で富山のおでこを突いた。


「ぎゃああああぁぁああぁぁぁ! 血があああああぁぁぁ…………」


 よし死んだ。これで今夜は平和に過ごせる。私の心を休める時間も、たまには必要だ。




・・・・・・・・・・・




 目を覚ました時にはもう、外が薄暗くなっていた。夕方まで気を失っていたのか、と思ったら、荷物の準備は整っているようだし隣でヤマメが寝ているしで、夕方を通り越して朝方まで眠ってしまったのだと判断する。




 ――それはすなわち、もうすぐ外に出られるということ。




「――っ!」


 言葉にならない感動が、私の中を駆け巡る。

 長い、生活(たたかい)であった。

 これで私は、自由に生きられる。

 これまでの日々が思い返される。

 ヤマメにもらった木の板でトランプを作り、一人で七並べをする日々。

 ヤマメが妙にやさしく接してきて、身動きがとり辛かった日々

 勝手に掃除しないよう釘を刺され、汚れ行く家をただ見守ことしかできなかった日々。

 ヤマメの言動につっこみを入れ過ぎると、刃物で襲われ、気絶する日々。

 トランプ以外の事をしようとすると、ヤマメに止められる日々。


 ――ああ、私はヤマメに頼りきりだったんだ。


 そんなにも、私の中でヤマメの存在は大きかったのか。


 私は感謝をしなければならない。

 大事に想って養ってくれたヤマメに。

 最初に殺そうとしていた私に尽くしてくれるヤマメに。

 天使のような微笑みを見せてくれるヤマメに。

 不自由な生活をさせてくれるヤマメに。




 私は怨を返さなくてはならない。




「ヤマメ、今までありが――」

「おはよう富山。一体何をしようとしていたのかな」


 寝ているヤマメの鼻に色々夢を詰め込もうとしたら、瞬間でうしろに回り込まれた。


「チッ……」

「その手に持っているおはしはなーんだ?」

「……夢、ですいたいいたいごめんなさい」


 正直に答えたら固め技をされた。立っている状態で。


「富山はかわいそうな子供だね」

「やめてそんな直接的な言葉」

「だから私は守ってあげたくなるんだよ」


 ヤマメは締める力を強める。


「わ、わかってる、感謝してるよ、離せ」

「今日から二人旅なんだから、大人しくするんだよ」

「チ、カ、ラ、を強めるなぁ……!」

「富山は私がいないと駄目なんだからねぇ……!」

「う、ぎ……」


 こいつ絶対病んでる。精神が悲しいことになってる。私がちゃんとしてケアしていかないと!


「ヤ、マ、メ、な、お、す……」

「さあ! もう一眠りしようじゃないか!」


 苦しいです。




・・・・・・・・・・・




「やー、いーてんきだねー」

「富山、お天道さまに体力持ってかれないように気をつけるんだぞ。危なくなる前に水を飲むんだ。でも飲み過ぎには注意だ」

「台無しだ」


 毎日かぶりのおそとの空気を堪能しようとしたら、ヤマメがうるさくて無理。

 そんなの気にする程でもないのに。私はこんな調子で二十年間にほ〇中を歩き回ってたんだから。君とはスペックが違うんだよ。


「富山、言う事を聞いてくれ」

「あ、うん」


 とは言え、病んでしまったヤマメを下手に刺激するのはよくない。まずは相手の要求になるべく答え、徐々に現実を受け入れられるように考えを誘導させてあげなければ。


「街に着くには十日かかるね。途中途中で小川があるから、そこで野宿していこう」

「はい」


 先は長そうだ。前に見えるのは相変わらず草原とか森とか、見慣れているものばかりなので、道中は退屈しそうだ。こういうときに植物図鑑なんて持ってたら、面白そうだなー。






 適度に休憩をはさみつつ。運良く野生の妖怪にも猛獣にも会わずに、ぺたぺたと二人で歩き、夕方になる頃には見覚のある小川についた。


「って、これ水の家の近くじゃん」

「どうした富山。何か面白い石でも見つけたの?」


 帰ってきちゃったよ。どうしよう、ついでだし寄っていこうかな。


「ヤマメ、こっち」

「え、何を言……あ、うん」


 一人で歩こうとする私にヤマメが何か言おうとするが、素直に従ってくれた。なぜだろう。


 少し歩くと、そこはもう私の馴れ親しんだ場所だ。でっかい滝の裏にうっすらと見える水の洞窟。漢字で見ると『みずのどうくつ』と読めて、なんだか水を使ったカラクリ満載のダンジョンを思わせるが、正確には『みなのどうくつ』だ。ただ水が住んでいるだけ。


「滝が見たかったんだね。無邪気だなあ富山は。でもあまり近付かないようにしなよ。ここには神様がいるって昔からの言い伝えがあるから」


 神? 神なんていないよ。ここにいるのはただの幼女だ。


「ほらほらついてきて」

「あっ! もう、今日だけだぞ?」


 ヤマメの手を引っ張って滝の中に連れ込む。もろに滝に打たれる形になり、「あ、バカ!」と言われたが、我慢してもらう。


「洞窟だよ」

「な、なんかここはマズそうな雰囲気がするよ。はやく出よう」

「そんな私の手を握っちゃって……まさか怖いの?」

「こ、怖くなんてない! あー分かった。今日はここで夜を明かそう! 富山こそ大丈夫なの!?」

「うん大丈夫」

「くぅ……」


 実家で寝るのに恐れも何もないよ。

 で、ヤマメが勝手な決定をしたとき、暗がりから幼女が手でおいでおいでしているのが見えた。ヤマメはこちらを向いていて気付いてない。


「ヤマメ、ちょっとここで待ってて」

「お、奥に行くの!? 君の好気心は底が知れないね! わわ私はちゃんとここで待ってるから」


 ヤマメは入り口ぎりぎりの所に座って、奥を見ないようにじっと滝を見つめ始めた。かわいそうに、何にそこまで怯えているんだ。心が不安定なんだな。


 そんなヤマメを私はやさしい目で見てから、洞窟の奥に進んだ。


 そこにいたのは案の定、ただの龍巳神水だった。


「おいこら緑、何を連れて来たのじゃ」


 本名を呼ばれるのがひどく懐かしい。富山柴左衛門でいるのも当たり前のような気がしてたからね。


「何って、人間」

「阿呆者! ここは我の家じゃ! かんけーしゃいがいたちいりきんしじゃ!」

「関係者でしょ。私の……友人? だし」

「我にとっては何でもないではないか!」

「一日だけだって」

「嫌じゃ! 我はその、人間の前では姿を現さない主義じゃからな!」

「一回街行ったじゃん! えっと、コンクリートジャングルに!」


 何百年か前にそんな所に行った覚えがあるが、あまり良い記憶じゃなかったのか、ほとんど忘れている。


「それは気のせいじゃ! ねつぞうじゃ!」

「そんな訳……あるかも」


 コンクリートジャングルなんてこんな時代、ましてや数百年前にある訳ない。きっと前世の記憶とこんがらがっているのだろう。


「な、じゃあ出てけ」

「……分かったよ……」


 嫌がっていることを無理におしつけるのはかわいそうだ。ここで寝ても野宿しても寝心地はあまり変わらないので、交渉しても意味がない。


「食べ物もらってくよ」

「帰ってきたと思えば知らぬ人間を連れ、食い物をあさってさようならか。不良じゃな。我は緑をそんな風に育てた覚えはないぞ」

「育ててもらってない!」


 不良って言われたのが結構ショックだった。


「……じゃあ、何も貰わないで出てくよ。確か、山頂に温泉あったよね。そこは使うよ」

「温泉は消滅したぞ」

「ええっ!?」

「この滝を見よ。ここも色々変わったのじゃ」

「うぅ……。長生きって、つらいね」

「つらいのぉ」

「はぁ……。またね」

「さらばじゃ」


 さて、ヤマメを連れて出るか。


 入り口付近に戻ると、ヤマメは相変わらず滝を見ていた。その背中は、そこはかとなく哀愁を帯びていた。

 そんなヤマメを、私はやさしい目で見つめながら声をかける。


「ヤマメ、出るよ」


 その声に気付いたヤマメがこちらを向く。


「満足したかい。ところで、奥で誰と話して……ああ、何でもない。富山はいい子だから」


 そう言ってヤマメはやさしい目を向けてくる。二人共やさしい目で見つめ合っている。


「ふふふふふふ」

「ふふふふふふ」


 二人で手をつなぎながら洞窟を後にした。


「(……あやつら、狂っておる……)」


 遠くから幼女の声が聞こえたが、空耳だろう。




・・・・・・・・・・・




 つ、疲れた……。

 あれから一週間かけて、目的の街が見える所まで来たけど、精神的につらい……。ヤマメを剌激しないよう、気を使いながら二六時中行動を共にするのがこんなにきついとは……。

「ヤマメちゃん、疲れてないかなぁ????」

「大丈夫だよお。富山ちゃんこそ、足いたくないぃ????」


 ヤマメも限界が近いようだ。今日こそは、ちゃんとした宿に泊まれるだろうか。


「ところでヤマメちゃん、お金は持ってるのかなぁ????」

「ごめんねぇ、一銭も持ってないのぉ」

「使えないね!」


 本当、ここまでの道を知っていること位しか取り柄がないね。私の心を削ってくるし。


「富山ちゃんは、何か目的でもあるのかなぁ????」

「いや???? 特にはないよぉ」

「今までの時間を返せ!」


 二人ともかなりきている。


「返せないよ!」

「じゃあ私の心を返せ!」

「それはこっちのセリフだ!」

「なにをーー!」

「やるかーー!」


 まさに一触即発。街まであと少しなのに。


「グルルルルル」

「ガルルルルル」


 と、そこに、


「女の子が二人も!」


 派手な衣装をまとった、優男が現れた。しかし今はそれどころじゃない。


「ヤマメいい加減にしろよコルァ!」

「富山は黙っていればいいんだてやんでぇ!」


「ああ、二人とも一瞬で僕の魅力に気付いてしまったんだね!」


「ヤマメェ……。今日こそは決着をつけてやる」

「富山ェ……。貴様が私に勝ったことがあるか」


「やめて! 僕の為に争わないで!」


「……」

「……」

「……ヤマメ」

「……富山」

「まずはあいつを殺そう」

「そうだね、一瞬で殺そう」

 あの優男の言葉は、私達の誠実な話仕合の邪魔になりそうだ。


「二人共、まずは僕の家に来てぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」




・・・・・・・・・・・




「いやー、悪いねー。無料で泊めてくれるなんて嬉しいよ。誰かさんがお金を持ってないからさ」

「あんたは街の人間なのにいい人だ。誰かさんと違って」

「僕は女の子の味方なのさ!」


 私達が男を断罪している途中、なんと何泊でも食事込みで泊めてくれるというので、甘えさせてもらうことにした。いきなり現れた男の家に行くなんて問題がある気がするが、この人は心がキレイだと判断したし、いざとなったらこちらは二人なので、きっと大丈夫だ。


「私はこの人がいい人だって、最初から分かってたよ? だって一発で私のことを女って見抜いてくれたし」

「ははは。そんなの理由になってないね。私はこの人の内面を見て判断したんだ。富山と違って」

「それこそ可笑しいね。人の内面なんて見られるものじゃないし」

「なにをーー!」

「やるかーー!」

「だからやめて! 僕の為に争わないで!」

「…………」

「…………」

「……ヤマメ、一時休戦だ」

「……そうだね、今だけ」


 この男がいると調子が狂う。男と離れるまで勝負はお預けだ。


「えっと君達、僕は君達のことを名前で呼んであげたいのだけれど――」


 もしかしてこれってナンパだったかな。自分がされるとは思ってもみなかった。実際されてみると、何か嫌だ。






「――僕の名前は水橋清里(みずはしきよさと)。君達は?」






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