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東方現葉幻詩  作者: 風三租
第三部 いい旅夢気分
11/44

蛙鳴蝉噪、お久しぶりです




 三十年だ。


 三十年経ってしまったよ。






 私、木葉緑は命の恩人であり師匠でもある幼婆(ようじょ)龍巳神水(たつみのかみみな)の帰りを待ち続けています。半分は「明日きっと帰ってくる」という期待と、もう半分は「水が帰って来るまで絶対ここから離れない」という意地で三十年も待ってしまいました。水が死んだ等の考えは持っておりません。何しろ水は何万年も生きている妖怪ですから、そう簡単には死んでしまう筈が無いと信じております。

 水が姿を消した三十年前の、あの日に、大規模な降雨と落雷が、この辺りを襲いました。余りにも酷いものでしたから、天候が回復した後に、私は山の頂上まで上り、周辺地域の様子を見ました。すると、ああ、何たる事。麓にあるべき筈の高層建築物密集地、すなわち人間の街が跡形も無く消え去ってしまっていたのです。この出来事が起こるのは以前から知っていたので、そこまで驚かなかったのですが、もう一つ、おかしな事があり、私はそちらの方に吃驚(びっくり)しました。

 私が住んでいる洞窟と、丁度反対側に当たる山の面が、木は疎か雑草一本すら生えていない、唯の斜面となっていたのです。いえ、唯の斜面とは言い切れないかもしれません。よく見ると、そこら中に鉄の屑が落ちていたことが分かりました。その屑は落雷によって破壊された機械の破片でしょうか、――落雷で壊れた物を見たことが無かったので、推測の域を出ませんが、――それ以外にも螺子(ねじ)やら梃子(てこ)やらと、特徴的な物が落ちていたのです。

 さらには、余り思い出したく無い事なのですが、人間の死体も数体ありました。一瞬だけ見ても、それが一体何だか分からない程、真っ黒に焦げた死体でした。この光景を見た私は錯乱してしまい、死体は全て埋め、金属類は私の『等価交換する程度の能力』により、妖力を存分に使って吹き飛ばしました。それでも落ち着く事の出来なかった私は、私が住んでいる側の山の面から、植物の種を採れるだけ採り、本当に何も無くなった斜面へ()いたのです。

 私は死体と種が埋まったその山の半面を恐しく思い、それから三十年間一度も見に行っておりません。水の(ねぐら)を私の家とし、その周辺が私の行動範囲となっております。三十年の時が経ち、(ようや)く私はこの時の記憶が受け入れられるようになりました。


「ししょー。朝ごはんにしよー」

「何ですか花子さん。今何時だと思っているのです。あと二分で昼食の時間ですよ」

「あたしは一日三食とらないと気が済まないんだ! ……あと何でそんな変な喋り方してるの?」

「良いじゃんたまには。大人の女性は綺麗な言葉を使うの」


 三十年経ったけど、嫌な記憶がどうでも良くなったこと以外は、はっきり言って何の変化も生み出していない。年齢的には、私は48歳のオバサンになっているのだが、肉体的な変化は全く無い。老化をしないのは良いが、背は伸びないし顔も大人っぽくならないし胸は……。

 せめて口調だけでも大人っぽくしようと思ったが、油断するとすぐに元に戻る。

 昼食の直前に朝食をとろうと言っているのは、私の弟子である黒髪長髪二本角ナイスバディの鬼、花子だ。花子は何も成長しない私と違って、この三十年で少し頭が良くなった。平仮名でしか喋れなかった花子が、漢字も使って話せるようになり、人の話もしっかり聞くようになった。


「あとさ、前から思ってたんだけど、あたしのこの花子って名前、しっくり来ないんだけど」

「はぁ!? いきなり何言ってんの!? 三十年間ずっと花子じゃん!」

「でも、あたしの見た目からして……花子じゃないよね?」

「まぁ……そう思ってたけど……やっぱり花子だ!」


 花子という名前は元々ノリで付けたものなので、身た目と合ってなくても無理はない。しかし三十年もその名前を呼び続けたのだ。今更変えるなんてとんでもない。


「今更だなんて思うなよ。今だから変えるんだ」

「心を読まれた……」


 大変不本意だが、花子は一度決めたらそこから動かないことに定評がある生物だと何年か前に分かったので、名前決めをして差し上げる。


「……貞子!」

「あたしは幽霊じゃない」

「……陽子!」

「普通過ぎる」

「由子音子詫子園子!」

「あたしは猫でもタコでもない。何で『子』にこだわるの?」

「え、名前と言ったら『子』じゃないの?」


 男だったら『郎』で女だったら『子』を付けるのは、命名において一般常識だと思っている。だめ?


「……ししょーの名前は」

「木葉緑だけど……」

「……ししょーのししょーの名前は」

「龍巳神水」


 何故か水の名前も聞き出し、花子は一人で考え始めてしまう。


「……決めた。あたしの名前は今から木隠黒花(こよりくろか)にするね」


 数分後、花子の名前が決まった。それに至った経緯を詳しく聞いてみると、木葉の弟子ということで木隠の名字、緑に対し黒、一文字じゃつまらないから黒花という名前にしたらしい。遠まわしに私の一文字の名前を否定されたような気がする。


「水の名前を聞いた意味は?」

「参考になるかと思ったけどならなかった。変な名前だね」

「そうだね。変だね。適当に付けた感じがするね」

「それを言ったら緑もそうだ。全部七才位までに覚えられそうな漢字でできてる」

「私の名前はどうでもいいから。それにしても水って名前は変」




「……変で悪かったな。死ぬが良い」


 ここに居ない水の名前にケチをつけていると、背後から声がした。振り向いた瞬間、火炎放射が私を襲って来た。


「ぎゃぁぁぁぁっ!」


 叫びはしたが、私だってこの三十年間ボーっと過ごしていただけでは無い。花子……黒花とずっと修業を続けていたのだ。不意打ちの火炎放射に対しても、ちゃんと“妖力を使って目の前の火を消せ”と、能力を使い回避行動をとっている。私はつよい。


「ししょー! 大丈夫かー!」

「私はもう駄目だ! 逃げてくれ!」

「……師匠だと? 大層良いご身分になったもんじゃな」


 火炎放射がおさまり、発生源が見えるようになる。そこにいたのは、三十年経ってもやはり何一つ変わった所が無い、水であった。噂をすれば何とやらで、その内容が内容だけに再会の感動も喜びも焼き尽くされた。なのでやる気の無い様子で手を振ってみる。


「うっわー水だー久しぶりー」

「……長時間ここを開けていれば、緑が一人立ちすると思ったのにのぅ。それから我が死んだと思い、一人立ちした緑が偶々旅行中の我と出会って感動の再会を果たすと思ったのにのぅ」

「何だそのロマンチックな筋書きは」

「ししょー、ろまんちっくってなに?」


 水はどうやらこの変なストーリーを実現させるために、長年ここを離れていたらしい。意地張ってずっとここで待ってて良かった。まんまと策にはまる所だった。


「何万歳のばばぁにとっては三十年なんて一瞬に過ぎないか」

「……ぁん?」

「お帰りなさいませご主人様」


 私の悪口に反応した水と口論になる前に、すかさず自分でも気持ち悪く思う位の愛想笑をして、某喫茶店の名台詞を発声。


「気持ち悪い笑いをするでない。しっかり聞こえたぞ、ババァ」

「……ぅ」


 水にやり返しされた。自分がもう48歳で、立派なオバサンであることをすっかり忘れていた。しかし心はいつも18歳なのだ。


「ししょー! ばばぁってなにー?」

「Bachelor of Business Administration。経営学士って意味。それを略すとババァ。偉い人だよ」


 花子……黒花に正しい知識を教える。私は一応元受験生だ。この単語だけは覚えてた。こういう余り役に立たないような単語だけは、ずっと覚えてるんだよね。


「違うぞ。年をとった老女の事を婆あと言うんじゃ。偉くも無い人じゃぞ」


 すかさず水が黒花に問違った知識を埋め込む。特に問違った説明でも無いが、とにかく問違っているのだ。譲るものか。


「じゃああたしもババァだ!」

「……うん。まぁ、そうじゃな」


 黒花が元気よく宣言をしてしまったので、水は返す言葉が無くなった。黒花の歳は、お姉様な見た目からして、私より年下である訳が無い。


「は……黒花は何歳なの?」


 ついさっき改名をしたばかりなので、いつものように花子と呼んでしまいそうになる。花子と言い切らずに、黒花と呼べたのは上出来だと思う。


「あたしの歳? えっと、525歳ぐらいかな?」

「あ、そうなんですか。どうも」

「……?」


 黒花が予想以上に歳上で驚き、つい敬語になってしまう。それ以前に出会った当時の、黒花が495歳の時点で、喋る言葉が全て平仮名という程度の知能しか無かったのか。……まぁ、誰も教えてくれる人が居なかっただけなのだろうが。


「何万歳に525歳に48歳……。私が一番若いね。ババァ共」

「いくら若かろうが48という数字はは嘘を吐かぬ」

「ししょーがほめてくれた……!」


 一応強がってはみせたが、私の心はもうズタズタだ。48という数字が妙にリアルで、私の精神を蝕んで行く。


「……今から私の歳は48(仮)ね」

「四八括弧仮とは何だ。サバを読めば済む事じゃろう」

「じゃああたしは525歳(税込)だ!」


 段々と場の雰囲気がお遊びになってきている。このまま放って置くと私は自虐の限りを尽し、最終的に私は心が壊れた生ける屍と化してしまうかもしれない。ここでストップをかけるか一人で逃げ出すか、私の命はこの二択にかかっている。

 ここでストップをかけて、果たして会話が途切れるだろうか。幼婆(ようじょ)はそんな事で怯むとは思えないし、ナイスバディの方は「もっとほめてー」と見当違いな発言を続ける可能性がある。

 では一人で逃げ出すか。私が突拍子も無い行動をとれば、二人の集中が切れると思う。もし切れなかったとしても、ここを何日か空ければ、流石に言い過ぎたと思い始めた水が、私を探しに来る筈だ。奴は寂しくなってここに戻って来たのだと私は予想しているからね。

 逃げてみよう。突然の奇行など、私にとっては日常茶飯事だったのだ。失敗する訳が無い。これからしばらく、本当の本当に一人暮らしだ。余裕余裕。さあよーいどんで走り出すぞ。よーいどん!


「……ちょっと旅に出てくるから探さないでくださーーーーい!」

「分かった。さらばじゃ」

「ししょー! 一人で修業するのか! またねー!」


 ……あれ?




・・・・・・・・・・・




 水の所から逃げ出して数日経った。さらばと言われて、戻るに戻れない気持ちになっている。そこで、もう妖怪に襲われても対処出来るし寿命で死ぬことも無いだろうしこのまま旅しても良いんじゃね? という考えが出現したので私は旅立つことを決心した。現在地は、どこかは分からないけど水の山が見えなくなる位の所だ。結構高かった山が見えなくなったので、随分と遠くまで来たと思う。何百キロ歩いたんだ。

 私が妖怪になって、身体能力と五感が素晴らしい事になった。動き続けても余り疲れず、遠くの物がくっきり見え、小さな音でも聞き分けられ、匂いに敏感になり、暗くても周りの障害物の存在を肌で感じとり、食べ物を味わって食べるようになった。妖怪って便利だね。


「ん? この臭いは?」


 ふと、進行方向から異臭が漂ってくるのに気付く。


「う、臭っ! (自主規制)だ! (自主規制)のにおいだ!」


 臭いの強さから言うと、私の近くには(自主規制)は無い。遠くに発生源がある筈。そして、ここまで漂ってくる程の強い(自主規制)の臭いがするならば、この先に生物の集団がいるのだろう。個体がこの異臭を放つのは不可能だ。


「ついに原始人が見られるの……!?」


 淡い期待を胸に、私は獣道を駆けて行った。

 私と原始人の出会いのきっかけは、(自主規制)なのであった。




・・・・・・・・・・・




「てっつてっつてつてつてつー♪」


 わたし――洩矢諏訪子は、新素材の発見で、今すごく機嫌が良い。そうでなくても機嫌が良い。

 この世界に神として発現して早千年。全ての物事が順調に進んでいてうひゃひゃひゃひゃ。信仰はガッポリでわたしはどんどん強くなり、力が強くなれば信者にしてあげられることも増えて、またまた信仰が強くなってと、無限ループ最高。

 で、今日は鉄という新素材を見つけたんだけど、これ便利だね。丈夫だし変形できるし大量生産できるし。鍋作ったり武器作ったり用途は色々だ。

 ある日私が治めている集落の外を散歩してたら、地面に見慣れない物体が落ちてたんだ。それが鉄と私の出会い。すごく小さな鉄で、表面に『⊥∀』って絵が書いてあった。その時は鉄の存在を知らなかったからね、面白い物見つけたーと思って持って帰った。

 何がきっかけで鉄を精錬するようになったのかは忘れた。でもここまで来るのは長かった。民と協力して頑張った。

 こんな良い素材を見つけたのは偶然だけど、まあわたしは神だから、偶然じゃなくて必然だったのかもよ? 神だからね。神だもん。


「……んん?」


 集落の中に何かが入って来た気配がする。人間……にしては違和感がある。卵の殻のような薄い妖力の膜に包まれているから。たぶん妖怪なんだろうけど、あれで隠しているつもり? 

 知能が低くはなく、高過ぎでもない中妖怪と言ったところか。でも集落に入られる前はそいつの気配を全然感じとれなかったし……。うむ、分からん。

 何はともあれ、妖怪は追い出さなきゃ。民がびっくりしちゃう。

 人前に出るときの正装、今着てる白い服の上にもう一枚、カエルの絵が描いてある紫色で袖無しの服を着る。さらに自慢の大きい帽子をかぶって準備完了。元気百倍。さあ出発だ。


「いってきまーす」

「いってらっしゃーい」


 神社をよく掃除してくれるアヤコさんに別れを告げて、わたしは妖怪探しを始めた。場所はとっくに割れてるから、探す内に入らないか。特に目立った動きはしてないようだし、のんびり行こうか。


 しかし、よくここまで発展したな。何も無い所が小さいながらも立派な村になったんだから。民達はか、み、さ、ま、の、わたしを頼り過ぎな所があったり妙に、か、み、さ、ま、の、わたしに対して友好的な印象もあったりするけど、そのおかげで今がある。生きてるって素晴らしい。


「あ、いた」


 前方に黄緑色をした人型の生物を発見。その生物は緊張感のかけらも写していないのんきな顔をして、道の端っこをちまちま歩いている。謙虚だ。

 自分が妖力を垂れ流しているのに気付かないのか。そして神! 様! のわたしからあふれ出ている、この神気にも気付かないのか。すごい弱そうな妖怪だ。

 接触を試みるかいきなり殴りかかるかどっちにしよう。まあわたしはエライから、いきなり殴りかかるなんて卑怯なことはしないよ。考えてみただけ。


「おーい」


 素直に声をかけるが、黄緑色の妖怪は振り向かない。


「おーい!」


 大声を出して呼ぶが、相手はまるで聞こえていないかのようにのんびり歩き続ける。


「おーいってば!!」


 地団駄を踏んで腕をパタパタさせながら呼ぶが、奴はわたしを意識して無視しているかのごとく、ペタペタと歩き続ける。

 挑発してるの!? かっみっさっまっのわたしを挑発してるというの!? わたしは心が広いからもう一回呼んであげるよ。耳元で。


「おらぁっ!!」

「えっ!? 私!?」


 何か変な言葉になったけど気にしない。やっと気付いてくれた。


「……我が領地に土」

「うわっ! 諏訪子だ!!」


 わたしの威厳たっぷりの忠告をさえぎって、こいつはわたしの名を呼び捨てにした。


「なんでわたしの名前を知ってるの?」




・・・・・・・・・・・




 (自主規制)の痕跡をたどった私は、予想通り人里を発見した。よし乗り込むぞ。


「こんにちはー」

「こんにちはー」


 入り口に立っている第一村人に華麗に挨拶を済まし、村の中に侵入した。思っていたより原始っぽくなくて残念だ。木造の家が、ポツポツと乱雑に建てられている。

 願わくばこの村に数ヵ月間滞在したいと思っている。急ぐ旅ではないので、一つの場所に長く留まり、地域の見聞を広めたいのだ。


「おーい」


 子供か何かを呼んでいる声がする。平和だなあ。


「おーい!」


 相手が反応しなかったのだろう。より大きな声で子供が叫ぶ。


「おーいってば!!」


 あれだけ大きな声で叫んでいたのにもかかわらず、標的は反応しなかったようだ。わざと無視しているのだろうか。かわいそうに。


「おらぁっ!!」


 子供が私の耳元でおかしな言葉を発した。さっきから呼ばれていたのって……。


「えっ!? 私!?」


 どうしよう。わざと無視していたと思われているかもしれない。謝らなきゃ。


「……我が領地に土」


 振り向くとそこには奇妙な目玉付き帽子。こんな帽子をかぶっている人は一人しか心当りがない。


「うわっ! 諏訪子だ!!」


 そう。守矢神社で奉られている神、守矢諏訪子だ。神奈子ちゃんは何処だろう。


「なんでわたしの名前を知ってるの?」




 立ち話も何だし神社に行こー、と私が提案すると、諏訪子は首をかしげながら渋々神社に案内した。

 畳が敷かれていなく、机と座布団だけがある部屋で座って待ってろと言われ、待つこと四十五分。緑茶と水を持った諏訪子が現れた。


「はいこれおみず」

「あ、ありがとう」


 普通はお茶を差し出すと思ったが、それを指摘するのは図々しいと思い、お礼しか言えなかった。


「で、あなた誰?」


 諏訪子が私に自己紹介を要求する。そうか、ここは過去だからまだ私の事を知らないんだ。


「私は木葉緑と申します。はじめまして」

「緑? 見た目通りの安易な名前だね」

「名前のことを言うのはやめなさい」


 私も水と別れる前に、さんざん水の名前をバカにした気がするが、知らないふりだ。


「……わたしは洩矢諏訪子、ってもう知ってるんだよね。何で?」

「痛い所を突かれた。家庭の事情、とでも言っておこうか」


 本当の事を言うと面倒な事になりそうなので、便利な言い訳をする。すると諏訪子は眉をひそめてため息をつき、机に肘をのせる。


「家庭の事情? 意味分からないよ」

「あなたの事は全て分かっております。ここ守矢神社の神様の片割れ、守矢諏訪子様ですよね」


 これは余計な言葉だったかな。諏訪子が不審者を見る目ですごい見てくる。


「……ここは守矢神社でもないし、わたしは神の片割れでもない。もう一つ違和感があるような気がするけど分からない。神違いなの?」


 神違いと言われてもどう見たってこの幼女は諏訪子だ。名前も同じだし。私の知っている情報と細かい違いがあるが、誤差の範囲内としておこう。


「まあいいや。それで話があるんだけど」


 分かってくれたようで何よりだ。流石神様。飲み込みが早い。呆れただけだろうが。


「……妖怪は村から出てって」

「えー私は妖怪じゃないよー」


 不味いバレてる。ちゃんと妖力隠したのに。


「妖力隠せてないって。何を企んでんのか分からないけど、わたしが黙っている内に出てった方が身のためだよ」

「私はわるい妖怪じゃないよ。いじめないで」


 正体が分かっているというのなら作戦変更だ。媚びてやる。


「良い悪いの問題じゃないんだ。妖怪はこ」

「諏訪子さまー。来訪者ですよー……はっ! お邪魔しましたー」


 諏訪子が言い切る前に、神社に勤めている人が部屋に入ってきた。だが、私達の姿を認識した瞬間に、出ていってしまった。


「民の皆さーん!! 諏訪子さまに春が訪れたようですよー!!」

「アヤコさんが面倒事を……」


 外からアヤコさんなる人の大声が聞こえる。それを聞いた諏訪子がものすごい落担を示し、机に頭をぶつけた。

 数十秒後、ドドドドという足音と共に、大多数の人間が神社に集まってきた。


「ワシの諏訪子ちゃんに恋人だと!?」

「諏訪子さまもそんな歳かー」

「相手は誰だ!?」

「イケメンなの!? イケメンなのね!」

「神様が増えるとは、目出度いこった!」

「わー、きっかけは何だろう」


 村人の色々な声が聞こえる。どうやら私と諏訪子がお見合いをしていると思われているらしい。という事は、私は今男だと思われているのか。またか。

 あれか、発言か。さっき私が(自主規制)(自主規制)って連呼してたから駄目なのか。ほとんど心の中の声だったのに。くそう。


「とは言え、これで私は出られなくなったな。諏訪子よ。私をここに置くが良い」

「何でそんなにふてぶてしいんだよ。……もう、分かった。今追い出したら面倒な事になりそうだし、騒ぎがおさまるまでここにいていいよ。一週間位だと思うけど、その間は神社から出るなよ。あと、変な気も起こすなよ」

「やったー」













 思いがけないことから始まってしまった旅だけど、何とか上手くやっていけそうだ。

 私の人生はこれからだ。妖怪緑の生き様、見せましょう。







のどが痛くなって寒気がして鼻水が出て頭が痛くなって咳が出ている気がしますが、気のせいですよね。

遅くなりました。



東方神霊廟のノーマルがクリア出来て最高な気分です。下手なので。紅魔郷のイージーが出来ない程度です。

……ダブルスポイラーはエクストラまで出したのに。



「室」と書こうとすると、無意識に「窒」と書いてしまうのが嫌だ。

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