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魔宝の旅人  作者: ネブソク
第5章 【ドラマチックフィルター】
37/55

第5章 【ドラマチックフィルター】 後日談 & 設定 & 第6章 【崩界ノ針】 0話 神の住む山

この話の前半は第5章における後日談、設定のまとめです。

第5章未読の方はご注意ください。


なお、他の章に既に登場した人物の設定も追加されます。


後半は第6章の予告のようなものです。

物語の内容に大きく触れませんが、物語のカギとなる言葉は少しあるかもしれません。読まなくてもOK、直接物語を読み進めたい方は飛ばしてください。






 第5章 【ドラマチックフィルター】 後日談



 ――――――――――ステラ魔法学園


 魔法学校の名門として名を馳せたこの学園も、『あの事件』のおかげで、廃校にまで追い込まれてしまった。というのも、今回、捜査に入った法治機関『ルーラ』の上位組織『カタラベ聖団』により、学園長による数々の問題行為が明らかにされた事で、この学園全体に問題があった事が判明したからである。


 数々の危険な教育プログラム、この国『シェンディア』においては違法とされる『魔宝』の所持、歴史的に重要な書物の無許可所持。そして、最も問題視されたのは一部特殊教育プログラムを受けた生徒が殺害したであろう無数の死体が地下より発見されたことである。


 その非人道的な教育は学園長ストローガの独断により行われたものであり、その教育を受けた一部生徒は、現在、重度の精神的ダメージにより、医療施設にて保護されている。


 『怪盗カタヴェリゴ』、たった一人の怪盗は、目的の品を盗みはしなかったものの、思わぬものを世間に解き放ったという訳である。


 多くの学生たちは、他の魔法学校へ転校することとなった。これは『ルーラ』によってしっかりと権利を保障されている。

 しかし、教員達はというと、他の学校に雇われることとなる者もいれば、行き場をなくした者もいて、『ルーラ』による保護は行われなかった。


 もう誰も残っていない、ボロボロになった学校を見上げ、教員の一人、グレルは目を細めた。


「あら、グレル先生。まだ残っていたんですか?」

「ヘレン先生……ネムラス先生……」


 寮から荷物をまとめて出てきた二人の女教員に、グレルは頭を下げる。


「……お二人はこれからどうするか決まりましたか?」


 グレルの問い掛けに、ヘレンは複雑な表情を浮かべ、困り気味に返答した。


「ええ……わたくし、暫く自分を見つめ直す時間を取ろうと思いますわ。今まで、自分の悪い所は分かっていたのに、ずっと目を瞑ってきましたから……その愚かさを矯正しようと思います。今回の『怪盗の一件』で身にしみて分かりましたので……慈善活動でもしながら各地を回ろうかと」


 『怪盗の一件』。その時、彼女に何があったのかはグレルは知るよしもなかったが、深くは踏み込まない。


「…………私は、『アストレア魔法研究所』から、前から、お誘いを受けていたので……其方へ、行こうかと…………今まで、決心、付かなかったが……いい機会、ですし……」

「ほう、それはすごいじゃないですか。あの『デフィーネ・フィナン』の研究所にスカウトされていたとは」

「…………そこで、じっくり、今の研究、完成させますかね……」


 ネムラスは詰まり詰まり話を続ける。


「グレル先生はどうなさるのです?」


 ヘレンの質問に対して、グレルは苦笑いしながら答えた。


「私は今回、自分の教師としての未熟さを思い知りましたからね。生徒もロクに守れず、ただ外部の人間に全てを任せただけ……これでは教師を続ける事はできません。生徒に合わせる顔が無い」

「そんな事は……グレル先生は誰よりも生徒の心配をしてたではないですか……わたくし、知ってますよ?」

「いえ……まだまだです。だから、私はもっと教師としての心構えを学ぼうと思います。旅をして、多くを知って、より強くなった時、再び生徒と向かい合える気がして……」


 グレルは非常に厳しい教師であった。しかし、他のどの教師よりも生徒の事を思って日頃行動していた。故に、生徒の『模範』であろうという彼の志が、今回の一件を終えて、彼に教師をそのまま続ける事を許さなかった。


「では、これで……またいつか、会える事を願ってますよ」


 グレルは荷物を引き、二人の教員に手を振った。


「ええ、ではまた」


 ヘレンも手を振り、別れを惜しんだ。


「…………お元気で」


 ネムラスはあまり動きを見せずに、小さな言葉だけを残して背を向けた。


 三人の教師達は、それぞれ別の道を行く。すでに誰もいなくなった学校に別れを告げて。この後、彼らには怪盗のショー以上に劇的な人生が待ち受けているのだが、それを語るのはまたの機会に。




       ***************



「怪盗が逃げたぁ!?」


 『ゲートの館』の一室、ゴーガンに与えられた部屋で、バッカルゲンから渡された手紙を開いてゴーガンは素っ頓狂な声をあげた。その手紙は『ルーラ』から送られてきた報告だった。


「……あの男の奇妙な力は『魔宝』によるものじゃなかったのか?何故、あの『ルーラ』から逃げられるのかの?」


 館に怪盗の一件の報告で来ていた狐の面の女、月狐が出された茶菓子を仮面の隙間と顔の隙間に突っ込みながら首をかしげる。


「……まあ、何にせよ、再び調査の依頼が来ているのは事実ですから動く必要がありますね、先生」

「ふっふっふ!これで怪盗にリベンジしてやる機会ができた!」

「やめておけやめておけ。子供はあまり危険な事に足を突っ込むな。今度という今度はわっちも手助けできんぞ」

「子供扱いするなぁ!」

「駄々捏ねて人を部屋に引きずり込んでおいて、子供扱いするなと言われてもな」

「お菓子に釣られて入ってきた癖に!」

「失礼な。わっちは『忍』。物になど釣られぬ。子供の我儘を仕方なく聞いただけじゃ」


 ギャーギャーと喚きだすゴーガンを横目で見て、バッカルゲンは呆れながらも少しだけ安心した表情を浮かべた。


 ああ、今日もゴーガンは生きている。


 幾年か前、ゲートに拾われるよりもずっと前、自分達が人らしい生活も送れなかった時の事を思い浮かべながら、バッカルゲンはゴーガンが今を生きる事ができるということの有難味を改めて実感した。しかし、この当たり前の幸せも長くは続かないだろう。『ゲートの元に居る限りは』。


「……どうした?浮かない顔をして……何か悩みでもあるのか?」

「……ええ、ちょっと上司の事で悩んでいるんですよ。今度相談に乗ってもらえませんかね?」


 表情の曇りを月狐に読み取られたバッカルゲンは月狐に冗談を言う様に軽い口調で、しかし意味深な含みを持たせて、適当な事を言う。ゴーガンのような単純な人間には、理解できないであろう『メッセージ』を読み取ったように月狐は静かにバッカルゲンの方をじっと見た。


「おい!バッカルゲン!上司って私の事か!文句があるなら直接言ったらどうだ!」

「………いいじゃろ。人生相談なんて柄じゃあないが、憂さ晴らし相手ぐらいにはなってやるか。……まあ、また今度の機会にな」

「ええ!?私の居ない所で何話す気!?私の悪口か!絶対、私も付いていくぞ!」


 駄々を捏ねだすゴーガンを適当にあしらいながら、バッカルゲンと月狐は、『相談』の約束を結ぶ。それは全てバッカルゲンの仕組む『シチュエーション』。ゴーガンが幸せに生きる為の布石。誰もその事を知る由もなく、名探偵とその助手は再び日常へと戻っていく。




   ***************



「全く……魔宝などなくとも何とかなるものだ。『昔取った杵柄』……と言うんだったか?」


 ぼんやりと光の宿るその手の平を見つめて、『仮面』を失った怪盗は溢れそうな笑いを堪えた。もはや華やかな衣装もない。顔を隠すと同時に、『怪盗カタヴェリゴ』である事の証明であった仮面すらももうない。監獄から大分離れた森の中で、怪盗はぶつぶつと呟きながら歩いた。


「……さて、最早私は『怪盗カタヴェリゴ』でも何でもないのだが……何と名乗ろうか?」


 『元』怪盗カタヴェリゴは悩む。名前の事もそうだが、まともな衣服も欲しいし、食料も欲しい。以前は何処かから盗めば事足りたのだが、もう『怪盗』では無い自分が盗みをするのはどうだろうか?そんな事を考えていると、道の向こうから一人の少年がやってきた。ボロボロの服を来た、そのみすぼらしい姿に驚いたように少年は目を見開いた。


「お兄さん、どうしたの!?そんな恰好で……何かあったの?」

「ん……?いや、何もない……事もないな。腹も空いたし、喉も渇いた。もうヘトヘトだし、眠気もひどい。このままでは野垂れ死ぬかもしれないな」

「ええ!大変だ!僕の家に来て!ご飯、食べさせてあげるから!」

「……少年よ。見知らぬ大人を無暗に家に誘うモノじゃないぞ?」


 元怪盗は、柄でもない事を言って少年を窘めた。勿論、ここで助けてもらいたくはあったが。


「……じゃあ、お兄さんは誰なの?それが分かればいいんでしょ?」

「……おお、まさかここで素姓を尋ねられるとは」


 元怪盗は悩んだ。その時、思い浮かんだのは、あの男の台詞。


「……名乗る名など無いのでな。強いて言うなら……私は通りすがりの『浮浪人』だ」

「何それ?」


 元怪盗、改め浮浪人は得意げな表情で胸を張った。


 『悪』であろうとした男は、今は『悪』でも『正義』でもない『浮浪人』。どっちつかずで彷徨う彼はこれからどんな道を歩むのか?それはこれから先のお話。誰にもわからない。




       ******************




~~登場人物~~




 【旅人】 ~『魔宝』を求めて旅する男~

・年齢:?   ・性別:男   ・好きなもの:名探偵   ・嫌いなもの:酷い扱い


◎本作品の主人公(?)

 『怪盗カタヴェリゴ』とは因縁がある。やっぱり何処か抜けている。実は魔宝なしでもそれなりに

 強いらしい?相変わらずのヒーローファンで、名探偵からもきっちりサインは貰っている。頭の

 帽子は結構重い。

 *所有魔宝:『独裁者どくさいしゃ経典きょうてん




 【クロ】 ~今回は出番少なめ~    

・年齢:19   ・性別:女   ・好きなもの:読書  ・嫌いなもの:怪盗


◎旅人に付き添う、黒髪黒目黒服の真黒少女。

 今回は、怪盗に監禁され出番少なめ。そのせいで楽しみにしていた大魔導師シゲンの書物『古代魔法

 秘集』を見損ねたので、非常に不機嫌だった。結局、事件が解決した後も、足早に学園を去ったので

 本に目を通す事ができず、不機嫌。下着泥棒にあってさらに不機嫌。

 *所有魔宝:『うしくぎ




 【ロザ】 ~怒ると怖い~

・年齢:19  ・性別:女  ・好きなもの:知らないもの全般 ・嫌いなもの:『負の感情』


◎『十三呪宝』の『赤黒い靴』の所有者。

 楽しみにしていた『学校見学』をこなせずに落ち込み気味。怪盗との対面時、『ドラマチックフィル

 ター』の効力のせいか、かなり感情的になっていた。いきなり怪盗に蹴りを入れた自分を、恥じてい

 る。その光景をバッカルゲン伝いに聞いた旅人から余計に怖がられている事には気づいていない。

 *所有魔宝:『赤黒い靴』




 【ゴーガン】 ~名探偵ゴーガン~

・年齢:?  ・性別:女  ・好きなもの:格好いいもの   ・嫌いなもの:子供扱い

 

◎言わずと知れた名探偵。

 しかしその実態は、ただの変な趣味を持った少女。モノクルとパイプだけは手放せないお気に入りグ

 ッズ。的外れな推理ばかりだが、状況によってはその自慢の『嗅覚』によって意外な真実を見抜く事

 もある。結構バカ。『ゲート』の手下でその中でも幹部クラスに位置するが、『門』には厄介

 がられている。『門』大好き。事件後、クロさんを非常に恐れている。手に持つパイプには不思議な

 力があるらしいが詳細は不明。

 *所有魔宝:???



 【バッカルゲン】 ~名探偵の助手~

・年齢:?  ・性別:男  ・好きなもの:?  ・嫌いなもの:?


◎名探偵の助手。

 しかしその実態は、ゴーガンに変わり事件を解決してきた優秀な男。蝶ネクタイスーツの紳士。『シ

 チュエーション』を把握し、それを誘導する事で危機の回避や事件の解決に繋げる。しかし、今回は

 『ドラマチックフィルター』の効力により混乱した状況を読み取れなかった。ゴーガンを守る事に全

 てを賭けており、その為なら敵と手を組む事も厭わない。よく名探偵と間違えられる(あながち間違

 いではない)。ちなみに『バッカルゲン』はゴーガンに付けられた仮の名(由来は「自分よりもバカ

 に見えるように」という滅茶苦茶なもの)。

 *所有魔宝:???



 【ゲート】 ~魔宝愛好家~

・年齢:?  ・性別:男  ・好きなもの:魔宝  ・嫌いなもの:?


◎魔宝愛好家。

 旅人とは因縁がある。何を考えているのかいまいちわからない男。ゴーガンに好かれており、しつこ

 いまでのラブレター攻撃に頭を悩ませている。数少ない彼の悩みの一つ。しかし、それなりに結果を

 残している彼女を切り捨てるのももったいないと思い、中々解雇に踏み切れずにいる。

 *所有魔宝:『次元門ザ・ゲート



 【月狐ゲッコウ】 ~忍~

・年齢:?  ・性別:女  ・好きなもの:お菓子  ・嫌いなもの:ゲート


◎『ゲート』に仕える『しのび』の生き残り。

 今回は裏で色々立ち回る。監禁された旅人達の解放や、窮地のバッカルゲンを救ったりと忙しかっ

 た。学園内で偶然接触した教員、ティアと結託し、学園に潜入していた。その魔宝の力は謎が多く、

 『周囲の地形を変形』させたり『変身』したり『地面に潜る』、『怪我を治す』など多彩。旅人

 一行には、『希望喰ユメハミ』の一見で負い目がある。残酷な一面も持つが、子供や弱者には

 意外と優しい。

 *所有魔宝:『妖孤奇面ヨウコキメン



 【怪盗カタヴェリゴ】 ~大怪盗~

・年齢:?  ・性別:男  ・好きなもの:?  ・嫌いなもの:?


◎名の知れた大怪盗。

 神出鬼没で、魔宝の力を借り、『あり得ない動き』であらゆる人間を惑わせる。虹色シルクハット、

 白黒スーツ、マント、目隠し仮面という奇抜な格好。『悪役』を演じる事に固執しており、その為

 ならば手を汚す事も厭わない。エンターテイナー。『ある女性』の目的を果たしたかったらしい。

 自身も予測できなかったシチュエーションのせいで、早くに正体を明かす。そのドタバタのせいで、

 すっかり盗む予定だった品の事を忘れていた。

 *所有魔宝:『煽動者アジテイター』=『ドラマチックフィルター』




 【ストローガ】 ~学園長~

・年齢:57  ・性別:男  ・好きなもの:魔宝、力  ・嫌いなもの:邪魔者


◎ステラ魔法学園の学園長。

 ゴーガンに依頼を出した。しかし、その目的は、宝を守る事では無く、怪盗を確保し、その所有する

 魔宝を奪う事だった。旅人達の魔宝の所有を知った途端、彼らを襲撃する。特別な教育プログラムを

 施した強力な魔法使い『生徒会』を従えている。旅人達を襲おうとしたのには『ドラマチックフィル

 ター』による影響もあった。

 *所有魔宝:なし



 【グレル】 ~厳格な教師~

・年齢:30  ・性別:男  ・好きなもの:生徒  ・嫌いなもの:学園の害となるもの


◎呪文語法教師。

 非常に厳しい性格で、真面目。その指導の厳しさから、陰で生徒に暴力を振るっているという噂が

 立っていた(事実ではない)。それが学園長の耳に入り、『怪盗事件』に巻き込まれる。本当は生徒

 想い。風神に関する『信仰魔法』を得意とする。ちなみに、呪文語法とは、魔法使用時に詠唱する呪

 文を文法的に解釈して、読解、組み立てを

 する学問である。

 *所有魔宝:なし



 【フェルマ】 ~陽気な教師~

・年齢:29  ・性別:男  ・好きなもの:自由  ・嫌いなもの:規則


◎魔法解析学教師。

 怪盗の協力者。学園で出会った怪盗に協力する事で、学園の秩序の崩壊をもくろむ。規則というもの

 に嫌悪感を抱いている。得意魔法は『岩人形ゴーレム』。これは媒介を用いる事で、岩を人形

 として構築し、操るものである。体の一部を作る事も可能で、腕にまとわせて攻撃するなどの応用が

 できる。彼が主に媒介に用いるのは『魔力を込めた砂』。砂時計内の砂には魔力を込めやすいらし

 い。ちなみに、魔法解析学とは、魔法を様々な観点から解析し、その構成を調べる学問である。

 *所有魔宝:なし



 【ヘレン】 ~優雅な教師~

・年齢:25  ・性別:女  ・好きなもの:女の子  ・嫌いなもの:なし


◎魔法歴史学教師。

 上品な雰囲気漂う女性教師。おっとりしている。しかし、『女の子が異常に好き』という特殊な性癖

 を持っており、下着泥棒にまで及ぶかなり危険な女性。その魔法『魅了芳香グッドスメル』も、

 女の子を自分に引き付ける為に開発した物という危険っぷり。怪盗の事件時に、自らの下着泥棒がば

 れた事で猛省。自分を見つめ直す事を決意。ゴーガン達には見逃された(正確には忘れられた)。

 ちなみに、魔法歴史学とは、文字通り魔法の歴史を学ぶ学問である。

 *所有魔宝:なし



 【ネムラス】 ~不気味な教師~

・年齢:30  ・性別:女  ・好きなもの:?  ・嫌いなもの:?


◎魔法薬学教師。

 長い髪で顔を隠し、喋りも少ない暗い教師。生徒達からも不気味がられている。しかし、一部生徒に

 はその研究のレベルの高さから非常に尊敬されている。『黒化フォーリンダウン』という、体

 が黒くなり、身体能力が一時的に向上する魔法薬を研究中。その魔法薬の研究により、『アストレア

 魔法研究所』からスカウトを受けていた。ちなみに、魔法薬学とは、魔法を組み込んだ特殊な魔法薬

 を生成する方法、その効能を学ぶ学問である。

 *所有魔宝:なし



 【ティア】 ~謎起き教師~

・年齢:28  ・性別:女  ・好きなもの:?  ・嫌いなもの:?


◎信仰哲学教師。

 穏やかな性格だが、説教臭く、道徳的な事などに非常に厳しい。噂では怪しい宗教に関係していると

 言われいた。黒い十字架を持つ『ヴィレフ教団』の信者。奇妙な魔法を用い、その笑顔は何処か寒気

 を感じさせる不気味なもの。フェルマを殺害した?事件後、行方を晦ます。ちなみに、信仰哲学とは

 『信仰』を糧に、超自然的な存在から魔法を借りる『信仰魔法』に携わる思想を学ぶ学問である。

 *所有魔宝:???



 【カーネル】 ~生徒会長~

・年齢:18  ・性別:男   ・好きなもの:力  ・嫌いなもの:弱者


◎生徒会長。

 生徒会会長を務める、真面目と評判の生徒。真面目に見えるが、実は弱者をとことん見下す冷酷な

 男。ストローガの優秀な手下で、特別な教育プログラムによって、強大な魔法の力を持っている。

 ストローガと共に、魔宝を手に入れ、さらなる力を手に入れようと企む。実質、ステラ魔法学園で

 最強の力を持っている。

 *所有魔宝:なし





~~魔宝・関連用語~~



 【煽動者アジテイター】 ~彩る仮面、煽るモノ~


◎目元を隠す奇怪なデザインの仮面。その正体は、周囲を無差別に巻き込み、あらゆる魔宝の中でも最

 も不規則な力を持った最強の魔宝『十三呪法』の一つ。

 通常時は何の効力も持たないが、これを付けた人間の周囲一定範囲内でその効力は発揮される。

 これを付けた人間の周囲では、感情が昂り易くなり、人々は暴走気味に行動を開始する。さらに、

 イメージした事象が現実に現れ、周囲一帯が世界の法則から解放される。これにより、周囲を夜に

 変える事や、身体能力を異常な域まで跳ね上げる事も出来る。

 成り立ちは、とある国のテロリストが国民達を煽動し、優れた武器を授ける事で、国家の転覆を目論

 んだという事件。その時のテロリストが付けていた仮面がこれ。

 人間をあらゆる束縛(理性、能力)から解放し、本能を暴走させる。その特性故、強力だが制御が効

 かないという問題がある。ちなみに『ドラマチックフィルター』は『怪盗カタヴェリゴ』が勝手に名

 付けた名前。





    **************





 第6章 【崩界ホウカイハリ】 0話 神の住む山



 『神の住む山』


 その呼び名で広く知られるその山の名は『アクバハル』。そこに生える木は何故か白く染まっており、周囲から見たその山は一面雪の積もったように白一色に見える。その光景から神聖なものを感じる人間も少なくない。


 しかし、その神々しい見た目とは裏腹に、その中は魔法の力を持つ危険な獣、『魔獣』が潜む薄暗い世界。その危険性故、『一般人が許可なく立ち入る事』は禁止されている。

 果たして本当にこんな生物と共に『神』は暮らしているのか?誰もがそんな疑問を抱く程に、ここに住む『魔獣』達の姿は恐ろしく、禍々しいものである。


 だが、『神』は確かにいる。数々の人々が事実、この山に入り、『神』との対話をしている。彼らは皆、きちんと『許可』を得て、この山に入っていくのである。


「ようこそ、『アクバハル』へ」


 『神のお告げが聞きたい』。そんな目的を持って今日ここを訪れた男を迎え入れたのは、麓の村に住む少女。麓の村の名は山と同じ『アクバハル村』。そこに暮らす民族は『ハルムリ』と呼ばれた。男を迎え入れるその少女はひらひらした布を無数に纏い、あちこちに煌びやかな装飾品を纏っていた。


「君は?」

「私は『巫女』の『ハルカ』。本日、神の元へ貴方を案内させていただく者」


 顔を覆う布を持ち上げて、その少女、巫女のハルカはその無機質な表情を露わにした。彼女が神の代弁者、山の案内人。村人たちは総出でその男を迎え入れてくれた。


「ようこそ!」

「ようこそ!」

「ようこそ!」


 男は驚きを隠せない。何故、自分のような者がこんなにも歓迎されるのか?何の取り柄もない自分が。しかし、その理由もすぐに分かった。


「お兄さん!山に登る前にちょっと見てきなよ!」

「帰りにお土産なんかどうだい!」

「神様に持っていくお土産はいらないかい?」


 彼らは『神』を尋ねる者を『観光客』として迎え入れていた。そんな観光客達が彼らの生活を繋ぐ、重要な収入源らしい。男は自分が歓迎される理由を理解し、そしてその事に付いて疑問を抱かずには居られなかった。周囲の誘いに耳を傾けつつも、男は山の方へと歩いていく巫女に付いて行きながら、声をかけた。


「神様を金儲けの道具にして、お怒りは買わないのかい?」


 巫女は顔に被さる布を持ち上げながら振り向いた。


「神は細かい事は気にしません。多少、冗談を交えながらお話をしても喜んでくださいますよ。あまり固くならずに」


 緊張しているのを見破られ、男は黙ってしまう。巫女ハルカはその様子を見て、くすりと微笑む。


「気持ちは分からなくもないですが。大丈夫、今まで如何なる場合でもお怒りになった事はないくらい温厚な方ですから」

「へえ」

「ただ……」


 『ただ』。その不吉な繋ぎを残し、ハルカは言葉を止める。男に緊張が走る。


「……『遊ばれないように』、気をつけて下さいね?」




    *************



 白い木に囲まれた山の中、案内した客人を待つ巫女ハルカの元に明るい声が響く。


「ハルカちゃ~ん!もう帰っていいよ~!」

「……あの方は?」

「う~ん、『もう外に出たくない。一生、隠れて生きていたい』って!」

「それで、『止めて』差し上げたのですか?」


 くすくすと笑い声が響く。それは無邪気な子供の笑い声。


「ししし!うん!」

「あまり遊ばないで下さい。客人は村の収入源でもあるので」

「そっか、ごめんね~?でもさ、ウチの楽しみはこれくらいしかないのさ!」



「……『人の心』の『揺らめき』を眺める事くらいしか……ね♪」


 ハルカの視線の先の霧がぼんやりと晴れていく。その先には、先程案内したばかりの男の姿があった。しかし、男は動かない。まるで『人形』であるかのように。


「さぁ~て、次は誰が来るかな~?」

「もうとっくにご存じなんでしょう?」

「ハルカちゃんも意地悪だなぁ~。少しくらいお喋りに付き合ってよぉ~!」


 『神』はくすくすと笑う。無邪気な子供のような笑い声で。



「……さて、そろそろ何をお話するか考えとかないとね!そうだ!ハルカちゃん、後でお酒でも持ってきてくれるかなぁ?」

「珍しいですね。ジュースじゃなくて宜しいのですか?」

「むむ!子供扱いしないでほしいな!……まぁ一応ジュースも宜しくね~♪久しぶりに沢山お話できる客人が来るからね~!」

「……珍しいですね」


 『神』はくすくすと笑う。無邪気に、優しく、そして残酷に。


「お話しようか。『魔宝』のお話。さてさて、彼らはウチからこの『魔宝』を手に入れられるかな?」


 『神』はその『魔宝』をゆらゆらと揺らす。それは恐らく最も不思議で危険な『魔宝』。世界さえも変えてしまうであろう強力な『魔宝』。



「『崩界ホウカイハリ』、試してあげよう!彼らの『心』を『意志』を『信念』を!」



 待ち受けるは『試練』、『真実』、そして『神』……



 『神』は語る。ただそれだけ。




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