良かった。 お会い出来て!
主人公、通常運転。
翌日、我が母上ジーナが到着した。
「ジーク、自重していた?」
「はい!」
「それなら良いわ」
既に悟りを開いた母さんは、俺に対して「大人しくしていた?」とは聞かず「自重していた?」と聞く様になった。
例えが悪いが、Tレックスが、地響きをさせずに歩けるか?
そういう事だ。
母さんは午前中に到着して、昼食後に機動した。
「さあ! ジークの晴れ舞台の衣装を決めるわよ」
「お手伝いしますわよ、ジーナさん!」
「助かります、レティシア様」
「ジーナさん。 公の場ではないのですから」
「そうね。 助かるわ、レティ」
……着せ替え人形は疲れたよ。
大体は決まっているが、まだ間に合う部分を煮詰めたいみたいだった。
「お疲れ様です、ジークハルト様」
「シルヴィア、お茶」
「はい、ご用意いたします」
俺は、部屋の中にある簡易キッチンから聞こえてくる、シルヴィアの準備の音を聞きながら一息ついた。
「……美味しいよ、シルヴィア」
「ありがとうございます、ジークハルト様」
因みに、シルヴィアに何度言っても「ジークハルト」呼びを止めてくれなくて「ジーク」呼びを諦めた。
それならと、坊ちゃま呼びは止めさせた。
それで、自分の部屋でシルヴィアの淹れた紅茶を飲んでいる時に、ヴィルナーグ公爵家からの使者が来たみたいで、謝罪訪問は3日後になったらしい。
翌日からは、披露宴まで日が近いという事で王都の散策をせずに、タウンハウス内で過ごす事になり、図書室で読書や、裏庭でダナス達と鍛練したりした。
そして2日後に、ヴィルナーグ公爵が謝罪訪問に来たけど、内容は聞いていない。
政治的な事も含まれているかもしれないから。
とりあえず、俺はベルティア嬢に対して、今回の件で、無理に下に立つ必要は無いとだけ聞いた。
そして、翌日は俺とダナスとアザミで、ドランの工房に行って、ドランが言った通りの出来栄えだった。
「流石はドランだ! 期待以上だ!」
「言っただろ。 期待以上にすると」
「そうだったな! それで幾らだ?」
「要らねえ」
「いや、そういう訳にはいかないだろ?」
「記念って言っただろ。 言わば贈り物だ。
贈り物で、金を取る訳にはいかないだろ?」
「……分かった」
「そん代わり、今度、何か買う時は高く買って貰う」
「ああ、分かった」
俺はタウンハウスの自分の部屋に帰ると、ドランからの贈り物である「武器」を見ていた。
「貴族の子息が所有するには、あまりにも無骨だし装飾が一切無い。
それでいて、武器としては『業物』だ」
「そうなのですか、ジークハルト様」
「ああ。 本当に、ドランから良い贈り物を貰った」
「良かったですね、ジークハルト様」
この「武器」は、暗器としての顔も有る為に短剣ではなく、忍者の「苦無」に近いから、隠し持つ武器としては申し分もないな。
数日後、王家主催の「披露宴」の当日となった。
「……大丈夫か、ジーク」
「大丈夫です、父上」
当日の朝は朝食後から戦場だった。
母さんとレティシアさんが陣頭指揮を取り、披露宴での俺の準備に奮闘した。
因みに、付き添いの親父はタウンハウスのメイド長が担当した。
王城に向かう馬車の中で、正に一仕事を終わらせたかの様になっている俺に、親父は聞いてきた訳だ。
「さて、王城に到着してからの説明をする」
「はい」
「先ずは書記官に到着の報告をした後、会場に入りジークは自由にしなさい」
「……は?」
「ジーク、自分の年を忘れたのか?
幾ら高度な教育を受けていると言っても、まだ10才だ」
「……はい」
「正直な所、自分の名前を他の貴族達に、きちんと言えれば問題ない」
「……分かりました」
……マジか!?
異世界系ラノベだと、そうではなかったぞ。
やはり、事実は小説より奇なりと言う事か。
……まあ、きちんとやれば、親父や母さんの品格も良く見られるから、礼儀正しくやっとくか。
この後、王城に到着するまでに、色々と注意事項を教えて貰った。
そして、王城に到着すると言われた通りに自由行動になった。
俺の将来の展望としては、成人後は領地か王城で、文官か騎士になるのが順当かな。
ニーナとは、まだ婚約を正式に公表してないけど、結婚するから就職しないといけないが、実家が上位貴族の辺境伯だから大丈夫だろう。
冒険者稼業は、親父が爵位剥奪されない限りは、生活の保障だけはされているから保険扱いだな。
会場で1人立っていると声を掛けられた。
「ハルト様!」
「ニーナ!」
俺の可愛いニーナだ!
「良かった。 お会い出来て!」
「僕もだよ、ニーナ」
それにしても……
「ハルト様?」
「今日のニーナは、いつも以上に可愛くて綺麗だ」
「ハルト様!? ……もう!」
「本心だよ」
「……」
真っ赤になって俯くニーナが可愛い!
「ニーナ、一緒に回ろうか」
「はい、ハルト様!」
……良い笑顔だな。
……くぅ~。
「……!?」
「ニーナ。 俺はお腹が空いたから、少し付き合ってくれないか?」
「はい、ハルト様」
まあ、元社会人で現貴族の子息だからな。
これくらいの気配りは当然だよ。
「ハルト様、これ美味しいですね」
「ああ、美味しいな」
ニーナと美味い料理に舌鼓していると、会場の入り口辺りが騒々しくなった。
厳しくも温かいメッセージを待っています!
そして、星の加点とブックマークをお願いします。




