ジーク、終わったね
人を人と思わない連中から見れば……
……エリーが!?
「ぐぎゃははは! やれ、実験体9号よ!」
「Gaーーー!」
「皆! 時間を稼げ!」
「分かったわ!」
「分かったよ!」
「分かったであります!」
「ウォン!」
……さて。
「エリーを元の姿に戻す方法は?」
「知りたいか? ぎ、きゃあああ!」
俺は、魔人族の足を踏み潰す。
「エリーを元の姿に戻す方法は?」
「し、知らん!」
俺は、もう片方の足を踏み潰す。
「ぎゃあああーーー!」
「エリーを元の姿に戻す方法は?」
「実験体に、そんな慈悲は無い」
「……」
「ぎゃあああーーー!」
俺は、勢いを付けずに魔人族の左腕を引き千切る。
「エリーを元の姿に戻す方法は?」
「……無い」
「……」
「ぎゃあああーーー!」
俺は、頭の角を手刀で切断する。
「エリーを元の姿に戻す方法は?」
「実験体9号に埋め込めた器官は、普段は実験体9号の生命活動に対して助力しているから、例え完全治癒でも除去されないのだ!」
「……そうか」
「ぎゃあああーーー!」
俺は、魔人族の頭の残った角を握り、顔を上げさせると、ゆっくりと魔人族の左眼を一本抜手で突き潰す。
「エリーを元の姿に戻す方法は?」
「ぎゃあああーーー! 無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い……」
……俺は、残った右腕も勢いを付けずに引き千切り、頭の角と舌を手刀で切断し、股間を踏み潰すと、出血多量死にならない様に患部を焼いた。
「GaAAAーーー!」
「皆、頑張って! ジークが必ずエリーを元に戻す方法を聞き出してくるわ!」
俺は、クリスのそんな言葉を聞きながら皆と合流した。
「ジーク、どうだったの?」
「……」
「……そう。 ダメだったのね」
「ああ」
「どうするの?」
「痛みも死の恐怖も感じる事の無い魔法で、一瞬で終わらす」
「……分かったわ。 皆、聞いていたわね?
もうちょっと頑張って!」
「……分かったよ」
「……分かったであります」
「……分かりました」
「……ウォン」
……済まない、エリー。
俺は、普段は身体の内に抑えている魔力を全て解放して、詠唱を開始する。
「天の静謐の封印を破り、我は言の葉を紡ぐ!
我が意に従い叢雲よ、集いし空を暗く染め、稲光を轟かせよ!
……天神の代行者たる我が命じる。
我が前に立ち塞がりし罪人に、断罪の慈悲を与えよ! ……天神罰轟雷!」
俺の呪文詠唱で黒い雲が集まり、稲光を轟かせ、天地を繋げる雷鎚が振り下ろされた。
この魔法の対象は、一瞬で神経系を焼き切られ痛みも感じる事も無く、静かに死を迎える。
「……(ありがとう)」
さようなら、エリー。
「ジーク、終わったね」
「……そうだな、クリス」
魔人族は、モンスターに生きたまま喰わせると、その後はモンスターも全て焼滅させた。
俺が放った第10位階魔法「天神罰轟雷」は宮廷魔術士総員と、国宝級の秘宝の魔道具の併用で放った魔法と公表された。
……俺の名前が出る事は無かった。
その後、この騒動は表向きは終わりを告げた。
「あれから6日経つのかぁ」
「そうね、ジーク」
俺とクリスは、王都を散策している。
サラ達は、気を利かして屋敷に留守番だ。
王都の人達は、何も知らずに今日も生きている。
……でも、それで良いと思う。
それは、良い事も悪い事も、それに関わった者だけの特権だからだ。
「ジーク。 アレ、美味しそうよ」
「分かった」
俺は、クリスに言われた焼き串を2本買う。
「銅貨4枚だ」
「ほい」
「まいど!」
俺は、焼き串1本をクリスに渡す。
「……美味しい!」
「そうだな」
俺とクリスは、王都に幾つか有る噴水広場の1つに来ているが、場所的には商業エリアの近くだな。
「賑やかね」
「そうだな」
「……まだ、心残り?」
「無いと言えば嘘になるが、もう大丈夫だ」
「それなら良いの」
「ありがとう、クリス」
「どういたしまして」
クリスと穏やかな時間を過ごしていると、少女の怒声が噴水広場に響く。
「貴方達からぶつかって来たんじゃない!」
「そんな事より、ガキがぶつかったお陰で仲間が骨が折れたじゃなえか!
治療費を払って貰うぞ」
「そうだぜ!」
「金貨10枚で勘弁してやる」
「金貨10枚なんて、出せる訳ないじゃない!」
「それなら身体で払って貰おうか」
折角、クリスと2人きりで穏やかな時間を過ごしているというのに!
……潰す!
俺はクリスに断りを入れてチンピラ3人に近付く。
「……何だ、ガキ?」
「五月蝿いんだよ!」
「ひでゔ!」
「げひゃ!」
「ぼげろ!」
内臓に、それなりにダメージを与えるボディブローをチンピラ3人に入れる。
その後は、チンピラ3人から迷惑料として服と靴以外の全てを徴収した。
「ありがとうございます!」
「気にするな。 五月蝿いから黙らせただけだ」
「それでも……」
「ファリお嬢様!」
「ダリク!」
「やっと見つけましたぞ……ファリお嬢様、此方の方は?」
ダリクと呼ばれた年配の男性は、ファリお嬢様と呼ばれた少女の前に行き、俺とファリお嬢様との直線上に立つ。
「待って。 彼は私を助けてくれたのよ」
「本当ですか?」
「本当よ」
「それは失礼しました」
ダリクと呼ばれた年配から警戒の気配は薄れた。
「気にするな。 通りすがりに気分を害されたから、ぶっ飛ばしただけだ」
「左様でございましたか。 しかし、ファリお嬢様を助けて頂いた事は事実です。
是非、お礼をしたいのですが、ご同行願いますか?」
「連れが居るが、それでも良いか?」
「勿論です」
「分かった」
俺は控えていたクリスを呼び、ファリお嬢様の馬車で案内された。
勿論、馬車の中で俺達は自己紹介をした。
「馬車で、もしかしてと思ったが……」
「……そうね」
案内された場所は、商業エリアに近い貴族街の一角だった。
「改めて、自己紹介をさせて頂きます。
私、ファリル=ターザ=グェシーラで、グェシーラ子爵が三女です」
厳しくも温かいメッセージを待っています!
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