……しかも、書類系は既に提出済み。
ちょっと長文です。
孤児院の件から更に約5か月が経過した。
あれからは、特にイベントや事件も発生せずに領主代行の仕事をしながら、自己鍛錬の毎日を送っていた。
「それにしても、あの時の複数の書類はなんだったのだろうか?」
「そうですね」
約1か月前に、書類の中身を確認させない様にしてから、名前を記入させられた複数の書類はなんだったのだろうか?
母さんからは、領主代行としての書類じゃないと言っていたし、俺や周りに一切、問題も迷惑が掛からないと言って、無言の圧力の中で記入させられた。
記入すると、見た事が無い程に喜んでいた母さんが居たが、何だったのだろうなぁ。
あんなに喜ぶ母さんを見るのは、ニーナの婚約披露宴の時に着る衣装選びの時以来だな。
そして、日本なら4月が終わろうという時期に、王都に居る親父から手紙が来た。
内容は、王命で俺のお嫁さんが決まったらしく、名前は「クリスティーネ=ベルガ=ゾフィーリア」で、公爵令嬢だ。
……って、あのクリスティーネ嬢か!?
王太子の婚約者だった筈だ!
送られた手紙には、クリスティーネ嬢が王太子の婚約者として、あるまじき事を繰り返した事が原因で、卒業式の後のダンスパーティーで、婚約破棄の宣言をされた上に、同時に男爵令嬢との婚約を新たに宣言したみたいだ。
その流れは、悪役令嬢のアレじゃん!
……この世界は、乙女ゲームだったのか!
アレ?
手紙、2枚目も有った。
なになに……
クリスティーネ嬢は専属侍女1人を伴って既に向かっている上に、到着予定日が今日だと!
しかも、この事は母さんには報告済みぃ!
道理で、3日前から母さんが上機嫌でメイド達に、色々と指示していた訳だ。
母さんには、「クリスティーネ嬢は、理想の貴族令嬢で、王太子の婚約者として最も相応しい」と、クリスティーネ嬢の誉め言葉しか言っていなかったからなぁ。
自分の息子が理想と誉める令嬢が俺と結婚する。
つまりは、義理とは言え、自分の娘になるなら、そりゃあ上機嫌にもなるわな。
しかも、公爵家とも繋がりが出来たから、母さんの実家にも自慢出来る話だ。
……しかも、書類系は既に提出済み。
そして、親父とアルセリアさんも帰ってくるみたいだし、友好国の王立学園に通っている弟妹2人も、1週間後に到着するみたいだ。
こうして、貴族としての宿命にしみじみしていると、突然ドアが開けられ、次期メイド長のシルビィアが入って来た。
「シルヴィア、一応はノックしようよ」
「ジークハルト様に、そんな気遣いは無用です」
色々と、やらかした結果の対応だよ。
「それで、何か有ったのか?」
「手紙は読みましたね?」
「あ、うん」
「では、準備を始めます」
シルビィアが、そう言って指を鳴らした途端に、数人のメイド達が入って来てドナドナされ、歓迎会の準備として風呂から始まり身嗜みを整えられて、紅茶を飲んで待っていると、到着の報せが来た。
「ようこそ、我がランフィリアへ。
俺の花嫁さん」
「お久しぶりです、ジークハルト様。
この度、ジークハルト=フォン=ランフィリア様に嫁ぐ事になりました、ゾフィーリア公爵家が長女クリスティーネ=ベルガ=ゾフィーリアです。
末永く、幾く久しくよろしくお願いいたします」
「専属侍女のアイラです」
この後、母さんの熱い歓迎を受けたクリスティーネ嬢、いや、結婚しているのだから、愛称のクリスで良いか。
クリスは、旅の疲れと汚れを落として貰う為に自慢の我が家のお風呂(前世の3つ星ホテルや高級老舗旅館を参考)に入って貰い、我が家の自慢の夕食(此方も高級老舗旅館の和食を参考)を食べて舌鼓を打って貰い、今日はゆっくり過ごして貰った。
クリスティーネside
ジークハルト様が、王立学園を去られてからは、頼れる方が居なくなり大変ですが、王太子殿下を支え、未来の王妃として頑張らなくてはいけません。
でも、そんな中で私の耳に入る噂話で、養子縁組で貰われ平民から男爵令嬢となったマーガレット様と、王太子殿下が何時も一緒に居るとか。
……王太子殿下も、いずれは国を支える国王となる方です。
それまでは自由で居たいのでしょうから、王妃となる私が、その分を背負えば問題はありません。
王太子殿下も、私に任せると言ってくださるし、信頼されているのですから期待に添えるべく頑張らなければ。
……ですが、それは私の独り善がりな妄想でした。
お父様からの忠告を受けて私も頑張ったのですが、次第に王太子殿下の私への態度が冷たくなり、周りの私への対応が素っ気なくなっています。
「エドワード殿下、この書類なのですが……」
「五月蝿い! お前で処理しろ!」
「……分かりました」
「その程度の事で、私を煩わせるな!」
「エドワード殿下ぁ、早く行きましょう」
「そうだな、マーガレット」
そして、卒業式の後に開催される卒業パーティーで、私は王太子殿下から冤罪を被せられ婚約破棄をされ、例の男爵令嬢マーガレット様との婚約を宣言されたのです。
……その後の事は、あまり記憶にありません。
でも、そんなある日に、お父様から提示された私の今後について書かれた書類の中に、以前、お世話になったジークハルト様との婚約が書かれた書類を見て、私はいつの間にか、その書類を胸に抱いていました。
そこからは早く、国王陛下と王妃様も加わった話し合いで、私とジークハルト先輩との婚約……を通り越して王命の下、正式に結婚が決まりました。
「厳しい事を言ってきたが、向こうで幸せになりなさい」
「ありがとうございます、お父様」
「クリスティーネ、向こうで頑張るのですよ」
「はい、お母様」
「それと……」
「はい、持っていきます」
「大丈夫です。 私が保障するわ!」
「はい、お母様」
「何だ?」
「母と娘だけの秘密ですわ」
「秘密です」
お父様は呆れながらも、私に優しく言ってくださいました。
「帰りたくなったら、何時でも帰って来なさい」
「お父様。 お母様。 今まで、ありがとうございました」
こうして旅立ったのですが、様々な気持ちが私の中で渦巻く中、信頼する侍女のレイラだけを連れてジークハルト様が居る、辺境の都市ランフィリアに到着したのです。
そして、その夜、私は、お母様から渡された最新の「勝負下着」に着替えて、扉をノックしたのです。
厳しくも温かいメッセージを待っています!
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