第三話片想いの痛み
春の風が教室に入り込むたび、胸の奥が少しだけざわつく。
主人公の僕――高橋優也は、転校生の彼女、桜井美空を見つめずにはいられなかった。
教室の窓際で笑う美空の横顔は、まるで昼下がりの光に溶け込む花のようで、息をするのも忘れそうになる。
「……ああ、どうして僕はこんなにも惹かれてしまうんだろう」
その答えを知りたくても、心の奥底で怖くて触れられない。
美空は、僕の親友である佐藤翔太と、自然に打ち解けていた。
二人の距離は日に日に縮まっていき、僕はただ傍観するしかない。
放課後の教室。僕はノートを整理しながら、二人のやり取りを遠くから見守った。
「ねえ、翔太くん、今日の放課後、図書室で勉強しようよ」
美空の声は軽やかで、でも僕には胸を締め付けるように響いた。
翔太は笑顔で頷く。
「いいよ、じゃあ3時に図書室で待ち合わせだ」
そのやり取りを見て、僕の胸は痛かった。
「……やっぱり、僕じゃないんだ」
どうしようもなく、頭では理解していても、心が認めようとしない。
教室の端でぼんやりとノートに文字を走らせる。
「愛を捨てるって、どういうことだろう……」
まだ高校生の僕にとって、愛を捨てるなんて言葉は重すぎる。しかし、目の前の現実が、僕にそれを突きつけていた。
その日、帰り道もまた、僕は一人だった。
桜並木の下を歩きながら、何度も心の中で繰り返す。
「僕は……応援するべきなんだよな。でも……つらい」
視界の片隅で、美空が笑いながら翔太と歩く姿を見て、胸の奥が締め付けられる。
息を吸うのも苦しく、思わず地面に視線を落とした。
家に帰ると、机の上に放置された教科書を前に、ため息がこぼれる。
「今日も、笑顔で応援したんだ……。でも、やっぱり、僕の想いは……」
指先が震える。心の中で涙がじわりと滲む。
その夜、ベッドに潜り込み、天井をぼんやり見上げる。
「僕の愛は、誰のためにあるんだろう……」
孤独と痛みに押しつぶされそうになるけれど、僕は自分の気持ちを隠す。
美空を傷つけたくない。翔太との友情を壊したくない。
それでも、胸の奥の熱は消えない。
夢の中でも、美空の笑顔が追いかけてくる。
目が覚めると、また現実が僕を突きつける。
僕はまだ、片想いの痛みに縛られたままだった。
翌日も、放課後の図書室で二人は仲良く過ごしていた。
僕は席の隅でノートを開く。
「応援するって、こういうことだよな……」
涙をこらえ、僕は静かにページをめくった。
胸の痛みは消えない。それでも、僕は美空の笑顔を守りたい――
それが、今の僕にできる精一杯の愛の形だった。




