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二流作家の感想講座  作者: 白河夜舟


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39/40

その39「ラジオ的な小説について」

 久しぶりの更新。ネタが無いと書けないんですよね。

 で、ふっと思った事を、サクッと書いてみました、というコンセプトなもんで。

 

 そういえば、という感じですが、おれ、結構ラジオを聞いてる方なんだと、今さらながら思います。

 そういう感覚が、小説にも反映されているのかしらん?

 

編集「はい、始まりました企画もの第39弾。皆様いかがお過ごしでしょうか?」

白河「どうも、二流作家の白河夜舟です。よろしくお願いします」

編集「なんか、久しぶりの執筆ですよね」

白河「ですよね。何作か、書こうとして、手が止まってた状態でした」

編集「書き上げきれないって感じですか?」

白河「そんなところですね。白河は感想は書けるが、自作は書けない、とか言われそう」

編集「その辺、結構気にしてますよね」

白河「偉そうに人様の作品に感想を付ける以上、じゃあ自分はどんなのを書いてるんだよ、というブーメランは覚悟してますので」

編集「なるほど。では、本題をお願い致します」

白河「小説って、結構、ラジオに近いんじゃないかと、前々から思っておりまして」

編集「ほうほう」

白河「まあ、全く同じじゃないんですけど。近しい所があるなぁ、と」

編集「例えば?」

白河「この作品自体、ラジオっぽい構成なわけです。参考にしているのが、まさにラジオですから」

編集「確かに。対談形式の番組って、よくありますよね」

白河「アーティストをゲストにお招きして、インタビュー形式になりますからね」

編集「でも、この作品って、小説というよりはエッセイですよね」

白河「まあ、エッセイも小説の一部に入ると思えば、問題ないです」

編集「小説家になろうでも、そういうジャンルがありますからね」

白河「はい。そして会話のリズムや流れを、ラジオのように書く事を意識してますね」

編集「なるほどね。と、こんな風に相槌を打たせているわけですね」

白河「そうやって聞いてもらっていると、続きが書きやすいというのはありますね」

編集「入力のリズムを掴みやすいってところですか」

白河「思考をどれだけ文字に変換できるかが、作品のノリに繋がりますからね」

編集「ラジオでいう、会話の流れというやつですね」

白河「はい。そしてパーソナリティーによって、そういう話の流れが変わってくるのも、ラジオ的だなぁと思える要素ですね」

編集「語り手、聞き手によって番組の雰囲気もだいぶ変わりますしね」

白河「あと、ラジオは音だけなので、スタジオの雰囲気もリスナーが想像するしかない。小説も、文字だけで伝えなければならないので、読み手に想像力が求められる。そういう所も似てますね」

編集「ですね。面白い着眼点だと思います」

白河「音で伝える、文字で伝える、で言いますと、小説の中で用いる擬音語や擬態語、つまりオノマトペは、ラジオと似ているけど、小説独特の使われ方でもありますね」

編集「例えば?」

白河「小説の擬音語で、犬の鳴き声は、ワンワンです。ラジオだと、収録してあるサンプル音源を使う所でしょう」

編集「でしょうね」

白河「ただ、小説の場合だと、ただ吠えさせるよりも、状況や背景やその犬の様子なども描写する場合があるんですよ」

編集「どういうことでしょう?」



 ナオは、気配を隠しながら屋敷の中庭を見つめていた。

 番犬として飼っているらしい、黒狼の巨躯が、何かの気配を察しているようだ。

 低く、地面を振動させるように低く、抑えた唸り声を上げている。

 風下にいるナオの元に、黒狼のキツイ獣臭が漂ってきた。

 気づかれたら、終わりだ。

 だが、鋭い牙と固い爪を持つこの巨獣は、あらぬ方向にその敵意をむき出しにしていた。



白河「ワンワンなんて、グルルゥなんて、擬音語なんて使ってませんね」

編集「ですね。でも、唸り声は伝わります」

白河「昔の小説指導では、擬音語は極力使わないで表現するように、なんて項目もあったりしたんですが、今の時代にはそぐいませんね」

編集「ラノベなんかは、擬音語擬態語のオンパレードですからね」

白河「まあ、オンパレードとまでは言ってませんけどね。読者に馴染みがあれば、普通に使っていいと思いますし、作品の雰囲気に合っているなら問題はないですよ」

編集「ラジオだと、それこそ犬の声とか風の音とか、擬音語や擬態語の代わりに音源サンプルを用いますからね」

白河「わざわざ言葉で表現する必要はないですね。その辺が、ラジオとの違いになると思います」

編集「他にもありますか?」

白河「登場人物の感情、考えなんかも、小説だと細かく表現できますね」

編集「ラジオだと、難しいですか?」

白河「プロの声優さんは声で表現しちゃいますから、難しいという事はないんですけど、技術が必要ですよね。そういう表現技術を、小説の中で、文字で表現する技術が必要、というわけですね」

編集「例えば?」



 何もないはずの空間から、そいつは現れた。

 巨漢であり、たすき掛けに纏った萌黄色の布を、そのまま腰巻にしている。

 盛り上がった胸や腕の筋肉が、紅く染まりながら湯気を立てていた。

 しかし、特質すべきなのは、その顔。

 右、左、そして正面。

 三方向に、顔があるのだ。

 右は喜び。

 左は悲しみ。

 そして正面が、怒りである。

 首を捻ると、喜びに満ちた表情が現れ、下がった目じりに、上向いた口の端がくっつきそうになっており、顔の中に円を描いているかのよう。

 逆に捻ると、悲しみのあまり垂れさがった目じりに、同じように下がった口の端が、顔の表情すべてが、地面に流れて溶け入りそう。

 正面に戻ると、怒りのあまり目玉が跳びだしそうになっており、鼻息も荒く、大きく開いた口元から、今にも罵声が飛び出してきそうである。

 ソイツに向かって、黒狼が鋭い唸り声を上げる。

 身をかがめ、力を溜め、今にも飛び掛からんばかりだ。


 ナオは、息を飲んでその様子を見つめていた。



白河「三種類の感情を、表情で表現してみました。文字だけど、出来るだけ映像として浮かぶように意識しました」

編集「表情や動作で、伝えるわけですね」

白河「もう少し煮詰めると、喜びとか怒りとか、そういう表現すら要らなく出来そうな気もします。でも、それに意味はあるのかな、も思います」

編集「表情や動作で、随分と違うものですね」

白河「そうなんですよ。こういう表現を怠るとリアル感が無くなるんで、手間はかかりますが大事な事だと思います」

編集「ああ、そういうものだと思います」



 喜びの女神(喜びに満ちながら)おお、勇者ナオよ、よく来てくださいました!

 怒りの女神(怒りに震えながら)おお、勇者ナオよ、よく来てくださいました!

 悲哀の女神(悲哀に堕ちながら)おお、勇者ナオよ、よく来てくださいました!



白河「これじゃあんまりなので、(○○)は取っ払って、語尾も変えて、性格もそれぞれの個性を出しながら表現するわけです」



 ナオ、やっと私の所に来てくれたのね!

 あらお姉さま、ナオは私のものですわ。お姉さまなんかには譲りませんことよ!

 いやですわ、姉妹同士で争うだなんて。ナオは私と共に、悲しみの河を渡るのですわ。



編集「急に女神たちが、キャラクターとして動き出しましたね」

白河「最初の例は、テンプレートな登場なら構わないのですが、このまま書き進めていくのは無理ですね」

編集「でしょうね」

白河「次の例のように、性格付けや人間関係を混ぜ込んで、生きたキャラクターとして描いていくのが、小説らしい所でしょうか。

ラジオでも同じようにできるのですが、声で表す部分が大きいので、聞き直せないという制約がありますね。小説は、読み返せますからね」

編集「確かにそうですね」

白河「女神たちが主人公の人格の中に入り込んで、心の声として多重人格を織り成す、そんな原案があります。こういう場合、テンプレで描き進めてしまうと、書くのは楽なんですが、中身がつまらなくなりがちになってしまいます。

 例えば、誰が何を言ったのか、それが主人公にどんな影響を与えているのか、はっきりと書き分ける必要がありますね。

 具体的には、女神たち一人一人と主人公との関係、女神たち同士の関係性、協調とか対立とか駆け引きなど、書く事は沢山あるんですよ。

 ぐちゃぐちゃになってきても、共通の敵を出せばまとめやすいですから、原案としてはとても良いんですよね。

 後は、書き上げる力量、なんですけどね」

編集「これ、白河さんの原案、なんですか?」

白河「アハハ、読んだ作品に、そういうのがあったなあ、という訳です。だってこの作品は“感想講座”ですからね。その作品への感想を、それも直接には言えないような事を収めるのが狙いですから」



編集「さて、お時間が来たようです。また次回、お会い致しましょう」

白河「また聴いてくださいね。ではまた―」



                         (続く)


 ネタは、他の方の作品を読むことで拾えるんですよ。

 この作品、そういうつもりで書いてもいるので。

 読書の時間って、大切ですよね。

 

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