2話 不穏な爪痕
ー地獄にも季節はある。炎桜舞い散る春の初め。
清忠と道正はゼーライとネークの指示の元、怪師の元へ向かっていた。
「ここまでしてくれるなんて、ほんと親切な悪魔もいたもんだね。」
「俺は俺の好きなようにしているだけさ。安心しな!敵対するつもりはないし!」
そんな会話をしているうちに、清忠の一行は大きな大樹に到着した。
名前をルー大樹というらしい。
「ここに自然の怪の怪師がいる。俺が紹介したから大丈夫だ。」
「ありがと!ゼーライ!三日後ね!」
そう言い放つと、清忠はさっそうとルー大樹の中へ消えていった。
清忠を見送った道正の一行は、林を抜けた先のマラスコ峡谷に差し掛かった。
すると何者かが峡谷の上から声をかけてきた。
「ネークゥ!しぶりだなぁ!」
「おオ!父ちゃン!」
「親子二人そろって特徴的なんやな...」
どうやら時の怪の怪師はネークの父親のようだ。
「俺の友達が時の怪をもってるみたいなんダ!稽古つけてやってくれヨ!」
「こんにちは!北海道正です!よろしゅうお願いします!」
「おうぅ(泣)」
「何泣いとんのやw」
「よろしくなぁ!」
二人を見送ったゼーライとネークだったが、ゼーライはネークを開けた針山の麓に案内した。
ナンゴス山脈の一角、ギールの針山という山の麓だ。
「ネーク、君には俺が稽古をつけてやろう!光栄に思いな!」
「やってやろうじゃないカ!」
こうして清忠はルー大樹、道正はマラスコ峡谷、ネークとゼーライはギールの針山にて修行を始めた。
~ルー大樹にて~
自然の怪師は白髪の老悪魔だった。
「私ははタイランじゃ。清忠君。君は一人ではないぞ!自然の怪を持つ少女が修行をしている。」
タイランの話によると、15歳程度の少女も自然の怪を持っているようだ。
能力を生まれた時から使いこなす秀才であったとか。
修行場に向かうとそこには美しい黒髪の少女が木の葉を操っていた。
「君が清忠さん?あまり歳は変わらないみたいだね!」
「よろしく!名前を聞いてもいいかな?」
「あ、ごめんねw私はスズラン!よろしくね!」
「話は済んだみたいだな。二人とも、仲良くするんじゃぞ。」
清忠たちはまず昼食をとることにした。
「これは自然の怪の力で実らせた果実よ!青花というの!」
「はえぇ...なんでもありだなこの怪。」
そんな中、タイランは怪の発動条件を話し出した。
「怪はじゃな、怪を発動させるための条件がある。それが、自分の血液を取り込むことじゃ。体力を消耗しないために、始めから血液の入ったカプセルを懐に忍ばせておき、戦闘時に飲み込むという手法が主流じゃな。」
「だからあの時!刺された時に、たまたま血液が口に入ったのか!」
「そうと分かれば今すぐ!血液摘出をするぞ!」
「え?」
~マラスコ渓谷にて~
「俺はブルーンだぁ。よろしくなぁ。というわけで、今日からこいつも仲間だぞ、エレゼぇ。」
「よろしくね。頭の悪そうな人。」
「お、おう...。」
時の怪の修行者、金髪で少し塩対応な8歳くらいの女の子だ。
「すまんなぁ。あん子はあん子でいろいろあるのやぁ。許したってぇ。」
「そうか、まぁいろいろあるんやったらしゃあない。」
小屋での昼食時、道正も清忠と同じ怪についての説明を受けた。
「つまり、血を取らなあかんのか!?」
「あぁ、あっちだからいくぞぉ。」
「いやや!エレゼさん助けてや!」
「は?汚らわしい。そんなこと言って、あれやこれやを考えてるんでしょ?ああ男って気持ち悪い。」
「何言ってんねん...。ヒス構文かよ...。」
小声でつぶやきながらブルーンに奥の医療室に連行されていった。
~ギールの針山にて~
二人は夕暮れまで戦っていた。ネークは特殊な血筋で、空を飛べるため、空中で激しい攻防が行われていた。
「なかなかやるなネーク!」
「そういうお前こそナ!」
「だが...。」
「...?」
「俊敏さは持ち合わせていないみたいだな。」
ゼーライは一瞬のうちに背後に回り込み、強烈な蹴りを入れた。
「無限脚撃!」
黒い稲妻とともに針山が衝撃により2°傾いた。
「ぐあぁぁぁぁァ!」
地面に叩つけられてもネークは立ち上がった。
「体力だけは昔からあル。」
「俺の無限脚撃を食らってまだ立つとはな。一度夕食にしよう。」
ゼーライたちは針山の横のレストラン『カーミン』で夕食をとっていた。
「お前の種族は空が飛べるんだったな。」
「俺たちの種族は生まれつき飛行の怪をもって生まれてくるんダ!ほら、血液カプセルもあル。」
「あれは怪だったのか...。」
「お前たちのような上級悪魔は怪ではなく、飛行能力をもって生まれるんだったナ。」
「俺は落ちこぼれのビリ野郎だけどな。」
「そんなこt...」
その時だった。カーミンと書かれた看板が突き破られ、何者かが店に来店した。
「普通の...来店者では...ないようだな。」
「あれは閻魔直属の兵器部隊、炎鳥隊の【爪】、ウータソだナ。」
ウータソは2メートル超の爪を振りかざした。
「ッチ。なんでワイが出来損ないの相手せなあかんのやろか。ゼーライ。」
「黙れウータソ。殺されたいか。」
「こっちのセリフや、ウゼーライ。」
「何をしに来た!」
二人は店の外で戦闘を始めた。その衝撃は客たちを吹き飛ばすほどだった。
「これが...上級悪魔と炎鳥隊の戦イ...。とんでもないナ...。」
~マラスコ峡谷~
エレゼは庭で剣を振っていた。その隣で道正はブルーンに怪の説明をしてもらっていた。
「時の怪は扱いにくいんだぁ。まず、物体の動きを完全に停止できるぅ。」
「つまり隕石の落下を一時的に止められる、みたいなことか?」
「あぁ。でも使うものの魔力の消費量が物体の体積に比例して大きくなるんだぁ。」
「つまり隕石ほど大きなものは数秒しか止められねぇってことか。」
「さらに、記憶を引き継いで時間を巻き戻すこともできる。」
「それそれ!めちゃんこ強くねぇか?」
「一応十時間までなら巻き戻せるんだがな...負担が大きすぎるぅ。」
「どのくらい...なんや?」
「完全回復に7時間43分かかるぅ。だからあくまでこれは最終手段だぁ。」
「なんでそんなややこしい数なんや...。」
「少し練習してみようぅ。」
「できねぇ。」
「もっと魔力を集中させるんだぁ。上達すれば止めた物体を引き裂いたり、捻りつぶしたりできるようになるぅ。」
「みっともないのね。8歳の私に負けてむかつかないの?あ、頭が終わってる上に下半身にしか脳みそのないゴミだから感情とかないか。ごめんなさいね。」
「なんだとこのガキ...。」
練習する事2時間ほど。
するとネークがこちらに走ってきた。
「おおおおおおおイ!」
~ルー大樹~
「おはよう!いい朝じゃな!!!」
「う...うるせぇ...。」
「スズランはもう修行しとるぞ!」
清忠は朝食をとった。やはり少し時間がたっても地獄の飯は口に合わない。
「これが自然猛じゃ。」
タイランはそういうと、ものすごい量の魔力をため、手を突き出した。
すると地面から手が突き出、猫だましをするかのように一本の木を叩き潰した。
「すげぇ...。」
「きーよ!怪の基本は魔力をためるところから始まるの!」
「へぇ!ってかきーよってなんだよw」
「あだ名のほうが呼びやすいでしょ!」
「戦闘では冷静さを失うこともある。そんなときは、一度胸に手を当て、魔力の集中に全力を注げ。」
「わかった!」
その時遠くから道正とネークの声がした。
「清忠!!!!!!!!」
「どうしたんだ?集合は明日のはずだろ?」
「ゼーライが大けがをしたんダ!」
「え?」
「襲撃された!」
「いったい誰に...。」
「閻魔の幹部ダ...。」
「俺たちを...狙ってるのか?」
ー謎の奇襲とゼーライ。炎鳥隊の実態。事態はどう変わっていくのか。
そして清忠たちはゼーライの元へ向かうのだった。
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