それでも好きだから
2〇〇○年の日本。少子高齢化が進み、街は静けさを増していた。公園のベンチには年配の人々が集まり、若者の姿は少なくなっていた。政府はこの状況を打破するために「運命の赤い糸」と呼ばれる相性診断プログラムを導入した。若者たちの恋愛や結婚を促進するため、科学的に導き出された相性によってペアリングを行うというものだった。若者たちはこのプログラムに従うことが求められ、恋愛や結婚の選択肢が、狭まっていった。
しかし、相性のいい相手と確実に出会えるということもあり、この制度はすぐに広まり、常識となっていった。
美咲はその制度によって、相手を決められるということに不満を抱いていた。
桜井美咲は17歳の高校生。明るく社交的な性格で、友達も多いが、心の奥底では自分の運命を他人に決められることに不安を感じていた。そして、彼女は、他人に人生を決められることが本当に幸せなのか疑問を感じていた。彼女は毎日、学校の友人たちと一緒に過ごし、笑い合う日々を送っていたが、「運命の赤い糸」が彼女たちの未来を奪うのではないかと心配していた。
友人たちは次々と相性診断を受けて相手を決めていく中、美咲は自分の運命を他人に決められることに抵抗を感じ、「運命の赤い糸」を受けずにいた。
「美咲、相性診断受ける?」と美咲の親友の高橋麗が尋ねる。
「うーん、まだ考えてないかな。自分の未来を他人に決められるなんて、なんか嫌だよね」と美咲は答えた。
麗は少し驚いた表情を浮かべた。「でも、みんな受けてるよ。運命の相手を見つけるチャンスなんだから、受けた方がいいんじゃない?みんな一回やってみたら、好きな相手ができるてるし。」
美咲は心の中で葛藤した。彼女は本当の愛を求めていたが、相性診断がその愛を奪うのではないかと恐れていた。
美咲には幼なじみの佐藤健がいた。彼は冷静で理知的な性格で、いつも美咲のことを見守っていた。美咲は健に心を開き、彼との友情を大切にしていたが、彼もまた相性診断に疑問を持っていることを知っていた。
「美咲、相性診断を受けるつもりはないのか?」健が尋ねる。
「うん、受けたくない。自分の運命を他人に決められるなんて、信じられないよ」と美咲は答えた。
健は頷きながら、「俺も同じ気持ちだ。家族の期待があるから、受けざるを得ないかもしれないけど…」と少し沈んだ表情を見せた。
美咲は健の言葉に胸が痛んだ。彼もまた、自分の運命を他人に決められることに苦しんでいるのだと理解した。
ある日、美咲は決意を固めた。「「運命の赤い糸」に逆らおう」と。彼女は健にその思いを伝え、相性診断を受けない道を選ぼう。自由な恋愛を求めて、冒険しよう!と宣言した.
健は驚いた表情を浮かべたが、次第にその決意に共感した。「それなら、俺も一緒に行くよ。運命を自分の手で切り開こう。」と健も美咲に賛同してくれた。
二人は、「運命の赤い糸」に抗うための冒険を始めた。彼らは街を巡り、様々な人々と出会い、友情を深めていった。そして、「運命の赤い糸」なんてなくても友情は育めるし、きっと恋愛もできるだろうと確信し始めていた。美咲は、政府の方針に逆らい、自分の心の声を信じることができるのか、そして健との絆を守ることができるのか、心の中で葛藤し続けた。
美咲と健は、「運命の赤い糸」に逆らう中では、様々な葛藤があった。ある日、親友の麗が運命の相手を見つけたと報告してきた。彼女は嬉しそうに話すが、美咲はその姿を見て複雑な気持ちになった。
「美咲、私、運命の相手と出会ったの!彼は素敵な人で、私たち相性もバッチリだった!」麗の目は輝いていた。
美咲は微笑ながらも、心の中では嫉妬と不安が渦巻いていた。彼女は健との関係が変わってしまうのではないかと恐れていた。
「良かったね、麗。幸せになってね」と美咲は言ったが、心の中ではこのままでは自分も「運命赤いの糸」に縛られるのではないかという恐れが強まっていった。
ある日、彼女らは小さなカフェである男の子、涼と偶然出会った。彼は明るくて、とても優しい笑顔を持っていた。美咲は彼とすぐに意気投合し、友達として楽しい時間を過ごした。
涼との時間は、美咲にとって特別なものになっていった。彼といると、心が弾むような感覚があった。運命の糸がなくても、こんなに素敵な出会いがあるのだと実感した。
「美咲、君といると楽しいよ」と涼が言った時、私はドキッとした。彼の言葉が、私の心に響いて、鼓動によって胸が壊れそうなほど心臓が鳴り出した。運命の糸がなくても、私たちの関係は特別だと感じた。
しかし、幸せな日々は長くは続かなかった。ある日、政府からの通知が届いた。運命の糸に基づいて、私と涼は相性診断を受けることになったのだ。私は恐れと不安でいっぱいになった。
「美咲、どうする?運命の糸に従うのか、それとも…」健が心配そうに尋ねた。
私は深呼吸をして、決意を固めた。「私は、自分の運命を自分で選びたい。涼と一緒にいることが幸せだと感じているから、相性診断は受けたくない!」
健は微笑んで頷いた。「それが美咲の選択なら、俺も応援するよ。」
美咲は涼に自分の気持ちを伝えた。「涼、私は運命の糸に縛られたくない。あなたと一緒にいることが幸せだから、相性診断は受けたくないの。」
涼は驚いた表情を浮かべたが、すぐに優しく微笑んだ。「美咲、君がそう思うなら、俺も同じだ。運命を自分の手で切り開こう。」と、賛同してくれた。
美咲たちは手を取り合い、運命の糸に抗うことを決意した。周りの人々がどう思おうと、私たちの幸せは自分たちの手の中にあるのだと信じた。
私たちは自由な恋愛を楽しみながら、互いの絆を深めていった。運命の糸に縛られずに出会った涼との関係は、私にとってかけがえのないものになった。
「美咲、君と出会えて本当に良かった」と涼が言った時、私は心から幸せを感じた。運命の糸があったとしても、私たちの愛はそれを超えていた。
私の物語は、運命の糸に抗い、自分の幸せを見つける少女の成長の物語。運命は自分の手で掴み取り見つけるものだと、私は信じている。
ある日、私たちは運命の糸に関する集会に参加することになった。政府が主催するこの集会では、運命の糸の重要性が強調され、参加者たちはその制度に従うことが求められていた。
「運命の糸に従うことで、幸せな未来が待っています」とスピーカーが言った。周りの人々は拍手を送り、賛同の声を上げていた。しかし、私はその光景を見て、心の中で反発を感じていた。
「美咲、どうする?」健が私に尋ねた。
「私は、自分の運命を自分で選びたい。運命の糸に従うことが本当に幸せなのか、疑問に思う」と私は答えた。
健は頷き、私の決意を理解してくれた。「俺も同じだ。運命を自分の手で切り開こう。」
私たちは集会を離れ、自由な恋愛を求めるための行動を起こすことにした。私たちは運命の糸に抗うためのキャンペーンを始め、同じように感じている若者たちを集めていった。
「私たちの運命は、自分たちの手の中にある!」と私たちは叫んだ。周りの人々は私たちの声に耳を傾け、共感を示してくれた。そして、それは広まっていき、「運命の赤い糸」は世論の批判によって廃止されることとなった。