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王族の皆様にご挨拶

 朝早く泊まっていた宿屋から荷物をまとめて、朝の市場で賑わう城下町を横目に城門へとやってきた俺。

 城門を守る甲冑に身を包んだ兵士が2名。

 朝早くに訪れた冒険者を睨む。


「おはようございます。本日此方に顔を出すよう言われた冒険者のカインですが、お話は伝わってますでしょうか?」


 心象を良くしようと慣れない言葉遣いで門番に尋ねる。


「冒険者?はてどうだったか、お前知ってるか?」

「小耳に挟んだような気もするが、ちょいと待っててくれ。中の人に聞いてくる」


 門番の一人が王城へと入っていく。


「んでお前さんはどんな用事なんだい?」


 待っている間に残った門番が気さくに話しかけてくる。


「いやー、アルバート王子のおもり役を命じられまして。本日契約をしに来た次第でして」

「冒険者が王子のおもり役?学は無さそうだが」

「家庭教師って訳じゃないんですよ。遊び相手だそうで」

「なんか芸ができるのかい?」

「出来たら良かったんですが。なんせ特技もない只の冒険者でして」

「そんな奴を王子がねー」

「ねー」


 なんて他愛ない会話をしていたら城に入っていった門番が戻ってきた。ランドルフさんを連れて。


「いやはやカイン殿。朝早くに待ちぼうけをさせてしまい申し訳ありません。連絡の伝達に行き違いがあったようで。こうしてお迎えにあがりました」


 ランドルフさんは一礼をしてから俺を城の中へと案内する。


「ランドルフさん。俺に敬称は要らないですよ?」

「左様ですか?ではカインさんとお呼びしますね」

「その方が助かります。後俺、言葉遣いとか分からないのですが、大丈夫でしょうか?」

「あまりにも酷い場合で無ければ然程問題にはなりませんよ。今位の言葉遣いでしたら問題ありません」

「なら良かったです」


 ランドルフさんの案内で城内を進んでいく。

 城内ではメイドや執事が朝の掃除をしている。ランドルフさんとすれ違う度に会釈されるので少し恥ずかしい。


「こちらです」


 ランドルフさんに城内の一部屋を案内される。

 扉の両脇には兵士が1人ずつ立っている。


「ここは?」

「国王の執務室でございます」


 ランドルフさんが扉をノックして返事が来たところで部屋へと共に入室する。

 机の椅子に腰かける国王陛下が出迎えてくれる。


「おお、カイン殿。朝早くに済まんな。荷物はもう預けてあるか?」

「荷物はマジックバッグにしまってありますので身軽です。後自分に敬称は不要でございます陛下。一介の冒険者にそのようなものは不釣り合いな宝石と同様」

「マジックバッグとは良いものを持っているな。それと敬称が不要の旨了解した。ではカイン、アルバートの件について話し合いをするぞ」

「畏まりました。しかし、一つ伺っても宜しいでしょうか?」

「うむ?」

「何故ご家族総出でいるのでしょうか?」


 執務室には国王陛下だけでなく、女王陛下と王女様3姉妹、アルバート王子がソファーに座っている。


「大事な一人息子の遊び相手である。他の家族にも面通りしておきたいだろう?お前達挨拶を」


 国王陛下が促すと座っていた王女達が立ち上がる。


「レグニス王国第一王女レイラ・レグルスです。どうぞお見知りおきを」


 レイラ王女は齢18だったっけ?しっかりしているなぁ。


「同じく第二王女ティファ・レグルス。はじめまして」


 ティファ王女は15歳。成人前なのに大人びている。


「同じく第三王女アイリスです。よろしくお願いいたします」


 アイリス王女は幼さが残っている印象だ。なんせまだ12歳。


「妻のマリアンヌとアルバートは何度か見知っているから、省略する。カイン、そちらからも娘達に挨拶を」

「畏まりました。私は冒険者のカインです。よろしくお願いいたします」


 俺は王女達に自己紹介をして、国王陛下に向き直る。


「うむ。では契約内容について話し合おう」


 ということでやっと本題。

 王子のおもり役といっても具体的な内容がない。

 どこまで全うすれば良いのか不明。

 それで話し合いと言うわけだ。

 それから小一時間話し合いをした結果が纏められて、ランドルフさんが発表する。


「一つ、王子のお勉強終わりの昼過ぎ2時から夕食が始まる夕方5時までの3時間をカインさんと王子の遊び時間とする。一つ、カインさんの衣食住に関して。衣はカインさんご自身で給金から用意。食も同様に。住は執事やメイドが利用している寮に住み込む。一つ、王子の遊び時間までの間はカインさんは王子の身辺警護に当たる。具体的には朝食を済ませた後の9時から。一つ、3日おきに1日カインさんの休日を設ける。一つ、給金は一月金貨10枚とし、毎年昇給の査定を行う。一つ、カインさんの就業日数は王子が成人される凡そ6年を目安にする。以上でございます」


 ランドルフさんスゲー。綺麗に纏めた。

 しかし金貨10枚とは太っ腹だな。金貨1枚なんて一月は不自由無く暮らせる額だ。まあ冒険者は武器の手入れやら消耗品やら宿代やらで金貨3枚は稼いでおきたいけど。それでも破格だ。やったー。


「それに追加してカインにお願いがある」

「お願い、ですか?」


 国王陛下が咳払いをして王女達を見る。


「アルバートとの遊び時間にたまにで良いので娘達も混ぜてやってくれ。レイラとティファは学友もおるし1人でも大丈夫だが、アイリスは来年から学校でな。城で一人は寂しいだろうからな」

「よろしくお願いいたします」


 アイリス王女が頭を下げたので、俺は顔をあげるように伝える。


「アルバート王子は了承済みですか?」

「うん。お姉様が寂しい思いをするのは嫌だから」


 王子がそう言うとアイリス王女は可愛い弟に抱きつく。


「なんて優しい弟なのかしら!お姉ちゃんとして誇らしいわ!」

「これアイリスはしたない」


 国王陛下も流石に苦笑い。


「では本日はこれにて終いだな。カインはこれからランドルフに寮を案内して貰うと良い。おもり役としての仕事は明日から。しっかりと励むように」

「畏まりました」

「カイン、よろしくね!」


 王子がニコニコで俺に抱きついて来たので、そのまま抱える。


「アイリスに続いてアルバートまで。もう少し大人になって欲しいものだ」


 国王陛下はそう言うも嬉しそうだ。

 一人息子の願いを叶えられて良かったですね。


「では明日からよろしくお願いいたします」


 王子を降ろして、国王陛下とご家族に挨拶をして退室しようとすると、執務室の扉がノックされる。


「うむ?ランドルフ、今日は来賓があったのか?」

「いえ、そのようなご予定はございません。カインさん以外に本日この部屋訪れるお客様はいらっしゃいません」


 ランドルフさんの言葉に俺は警戒態勢に移行する。

 マジックバッグから刀剣を5本取り出して宙に浮かす。


「何者であるか?」


 国王陛下が扉の向こうへ問いかける。


「朝早くに突然の訪問失礼致します!第四騎士団副団長のアイザックでございます!入室の許可を頂けないでしょうか!?」


 扉の向こうから元気な返答。


「身内でしょうか?」

「ああ。警戒を解いても構わん」

「御意」


 俺は4本の刀剣をマジックバッグに戻し、残った1本を外套の何もない左袖に隠す。


「第四騎士団副団長に入室を許可する。入って参れ」


 国王陛下がそう言うと、執務室の扉が開き、1人の兵士が入ってきた。


「してアイザック騎士団副団長。何用であるか?」

「は!私はこのような荒くれ者が城内を闊歩するのは容認出来かねます!」


 アイザックと名乗る兵士が俺をビシッと指差す。


 面倒事?やだなー。

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