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第9話

「いつも見ても、アリシアの蝶は綺麗だね」

「お兄様も出せるでしょ」

「でもアリシアみたいに、あんなに大量には出せないよ。俺が出せる数は、せいぜい二匹程度だからね」


 そう言われてしまえば、アリシアは何も言えない。これがルフィナ家の後継者の力だから。


「私から一つ提案があるの」

「なんだ?」


 アランがパンをちぎりながら聞いてくる。


「ある有名な公爵令嬢が、賭け事で遊んでお金を散財しているという噂を流して欲しい」

「――それはいい案だね。父上、俺はアリシアの案に賛成です」

「分かった。リカルド」

「はい。承知いたしました」


 これで、今後の動きは相手次第になった。蝶とこの噂で何か釣れるはず。久々に思いっきり体を動かせる! と内心アリシアはウキウキとしていた。


「そうだアリシア。何かあっても、くれぐれも大暴れしないようにするように」


 アリシアの様子を察したのか、アランから指摘が入ってしまった。そんな事を言われても、久々の大捕り物になりそうだし、なにより最近はここまで大きな案件はなかった。予想では荒くれ者もいるだろうから、ストレスをぶつけるつもりだった。

 アリシアが「わかりましたーー」と心はこもっていない返事をした。アランとヴィンセンはしょうがないなという感じで、それぞれ溜息を零していた。




 金持ちの令嬢が、賭け事に嵌って遊び回っているらしい。令嬢が訪れた店は、一夜で二年近くの売り上げを作っている。そんな噂が十分に回った頃、アリシアはフードを被り、仮面で顔を隠しながら蝶で目星をつけていたいくつかの賭博場に足を運んでいた。でもあまり収穫はなかった。

 テレローザから聞いたトビーという男。きっと名前は偽名だろうから、名前を出してもどこも反応はなかったしなあ。アリシアはこの際だからと、ある名前を出す事にした。


「モークリー男爵をご存じ? その方から面白い賭博場があると聞いたのだけど」


 モークリー男爵を餌に、行く先々の賭博場で、この話題を出した。それでもいい反応はない。表では普通に賭博をして、見込まれた人が違法賭博への参加を促されるかなと思っていたのに、誘いが来ない。自分の考えは間違えていたのかと、アリシアの溜息は多くなっていった。

 それに蝶もそれらしき場所を特定できないのが気になる。アリシアは空振りだった店を出て、少し離れた場所に止めてある馬車に向かって歩いていた。


「あんたが最近、賭博場で遊びまくっている令嬢ですかい?」


 釣れたっ! 思わずガッツポーズをしそうになるのをグッとこらえて、アリシアは令嬢らしく優雅に答える。


「さあ、どうかしらね。大したお金を使っている訳ではありませんので遊んでいる、とは言えないかもしれませんわ」


 公爵家にすれば、使っているお金は本当に大した金ではないが、平民の中で開かれている賭博場にすれば大金なのは分かっている。公爵令嬢でも平民の金銭感覚を知る事は、ルフィナ家の仕事では当たり前の事。だから賭博場を回り始めてから流れた噂は、真実でもあった。


「うちの店に来やせんか? もっと大金を掛ける事ができますぜ」

「どうしようかしら。もう今日は遊んで疲れましたし」


 すこし焦らして相手の出かたを見る。


「そう言わずに、見るだけでもどうだい?」


 自分を店に引き入れたいのだろう。ならアリシアはそれに乗るしかない。


「まあ、少しだけでしたら」

「ええ。少しの時間でも構いませんで」

「では、ほんの少しだけお邪魔いたしますわ」


 ニタアと汚い笑みを浮かべる男に案内されて着いたのは、地下にある賭博場だった。

 入口は空き店舗になった店の裏口で、その建物の地下に裏賭博場があった。入る時、扉を五回ノックしたあと、合言葉を聞かれていて案内役の男が答えていた。

 なるほど。地下なら蝶が気付けなかったのも頷けた。それにしても、とアリシアは賭博場を見回した。

 地下に作られた賭博場は、貴族や金持ちが好きそうな内装が施されていて、飲みものを運ぶウエイターまでいる。それに自分のように仮面をした紳士や婦人もいる。身なりから同じ貴族の人間もいた。そして聞こえてくる金額は、桁が一桁二桁違った。ここで決まりだ。


「ポーカーにルーレット、カードゲームなど、掛ける金額に上限はありやせん」

「面白そうね。他の一般のお店では、上限が決められておりましたの。ここのお店は、上限なし。腕がなりますわね」

「そうでしょう、そうでしょう。勝てば、掛け金の数倍が手に入りやすから」


 アリシアには分かっていた。適度に客を勝たして、その快感を覚えさせた頃に負けさせる。ここで行われている賭博は、イカサマだという事を。人を中毒にさせるための、よくある手口だ。


「いいわね。次回からお邪魔してもよろしくて?」

「もちろんでございやす! 毎日、夜の八時から営業をしておりやす。入口は入ってきた扉です。ノックを五回した後に合言葉をきかれやすんで、水を飲みに来たと言ってくだせえ」

「わかったわ。一つよろしいかしら」

「何でしょう」

「こちらはツケはできますの?」


 さっきの十倍は醜い笑みを、男が浮かべた。


「ええ、できやす。その際は、書類に記載してもらったりします」

「分かったわ。明日の夜、遊びに参りますわ」

「はい! お待ちしておりやす」


 書類に記載って、きっとロクなものではないだろう。でもツケをするということはその時には既に、金回りが悪くなっているとはず。アリシアは店にいる貴族らしい人間に蝶を付けて屋敷に戻った。


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