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83.5

影のお話


読み飛ばしても大丈夫です

 隣国で100年に一度の天災と呼ばれる巨大な魔物が発見されたらしい。


 仲間の影が見に行ったら、大地の割れ目の谷底にでっかい魔力の塊があったそうだ。

 近づくだけで吐き気がして、あそこに天災があると知らなければぜっっったいに見に行かない場所だったと言っていた。


 隣国の筆頭魔法士はあんなとこに何しに行ったんだ!?怖い。天災よりそいつが怖い!と喚いていた。


 本当何のためにふらふら歩いてるんだと思ったら、ルーズさん家に届いた荷物にものすごい魔法がかかった何かが送られていたのを確認した。


 ルーズさんについている影の護衛としては確認しなければ、と手を伸ばそうとして気付く。

 ルーズ以外が開けると腕が飛ぶ仕様だった。


 うっわ!あっぶねー。思考が。あいつまじやべー。


 アシェルが送ったらしいので危険ではないだろう、まぁ良いか。


 その夜、手紙を読むルーズの顔が青ざめ、図書室に向かうのを見届けた。天災について知ってしまったのだろう。

 宰相と部屋に戻ってきたルーズが、送られてきた箱を開け中から宝石のような魔石の指輪を取り出したのを見てアシェルがなんであんなやべーところをふらついていたのか合点が行った。


 アシェルさんやっぱやべー奴すぎっすわ…




 図書館に日参するルーズを見守って1週間。

 ルーズが動いた。


 イリアが城に呼んだらしい。


『あっれー今城入れるっけ?』

 と心配してたら案の定門前払い。だがさすがルーズそれくらいではめげなかった。


 裏門で馬車を降りたあたりから嫌な予感がして、仲間に伝達した。


『ルーズさん侵入しそうっす!多分空!各自スルーで』


 緊急伝達を使い、ルーズが城に侵入する前に各部署に空を飛ぶルーズを攻撃ダメ!と連絡が入った。

 

 危なかったぁ…


 ルーズが城に出入りし始めた頃は確かに空からの警戒ゼロだった。ありえねーと。

 だが、アシェルが空を飛んで侵入したことから警戒区域を地下、地上さらに上空に改めたばかりだった。

 ほとんどの人間は、人が空を飛ぶことに懐疑的で必要性を疑問視していたため今回の侵入は丁度良かったかも知れない。


 そんな地上の様子など知らずに、すいーっと空を飛ぶルーズ。


 ほんっとルーズさんすごいっすわ…



 アリナーデのとこに行ったのを見届けてから影はルディアシスの元に向かう。


『ルーズはやはり戦う、と?』

『そうみたいっすねー。戦う義務なんてないんすけどね…』


 王子の執務室は重い空気に包まれる。

 義弟のシヴァンは手で顔を覆った。いつかはそうなるんじゃないかと思っていたが、義姉が答えを出すのが早すぎた。


『そんなために公爵家に来てもらった訳ではないのに…』

 呟きはやけに大きく部屋に響いた。


『彼女は守られるために、魔法を学んだのではないのだろう。己を知っているからこそ選んだ道を我々は感謝し送り出すのみだ』

 王族としてのルディアシスを強い視線でつい見てしまう。が、彼の拳は震えているのに気付き情けない顔になってしまった。

 

 貴族は、誰しもがいつか来る日を覚悟し生きる。


 だが建前だ。本当の覚悟など持っていない。自分が死ぬかもしれない覚悟はあっても家族がいなくなることは考えていない。



 影は2人のやりとりを、ただ見ていた。


 自分はルーズのそばで守れば良いだけ、と。




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