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 王族3人が絡む混沌とした騒ぎを収めたのはキーラ宰相だった。


『ボルデティオ殿下失礼致します。

先程は出迎えに行かず失礼を、お時間があれば少しよろしいですかな?』




 その場から王子を連れ出した。ペイルも後を追う。


『サフィールお姉様。私のために嬉しいですが決闘は悲しいです。おやめ下さいね?』


 可愛く妹から注意されサフィールは了承し、婚約破棄騒ぎは終着した。






『キーラ宰相さっきアリナーデ王女に聞きましたが、よい魔法の教師を雇われたとか?

ぜひうちの魔法士に会わせたいですね』


(報告されてなかったが、どういうことだ?

会わせろよ?)


『ああ、お聞きになられましたか。

ええ、ええ実に良い人物がおりましてね。

ええ、ええ、いつかお会いできると良いですね』


(言う必要ありましたか?

あーはいはい。

いつか、な)


来賓と上司が嘘くさい笑顔で会話をしているのを後ろから眺めるペイル。視線をすっと下げ空気になる。


アリナーデ様から勝手に会うなと釘を刺されたというのに、自分ではなく魔法士に会わせるという口実で会おうとするの引くんだよなぁ…


あ、なんか王子が振り向きそうな雰囲気がする…!



『宰相。ウツギの部屋の準備が整った頃合いですので私もあちらで待機いたします。では』



 いかにも仕事ができそうな顔をして逃げていった文官を王子は面白そうに見ていた。


『彼いいね』


『…あれもこれもあげませんからね。

まぁ準備ができたようなので我々も早く行きますよ』






 ウツギの部屋は、密談用に作られた応接室。

 防音効果と記録魔法具の使用が妨害され、とても重宝されている。



『ボルデティオ殿下お呼び出ししてしまいすみません』


 宰相たちがウツギの部屋に入るとすでにルディアシスと騎士団団長ら、それから隣国の騎士2人が席に着いていた。

 部屋はぴりっとした空気が流れていたがルディアシスはゆったりにこやかに話し出した。


『今回お土産でいただきました、魔物について詳しくお聞きしたいのですがよろしいですか?』


『ええ、もちろん。ですがまずは…』


 ボルデティオは自分たちがなぜ急遽インダスパにやってきたのかを説明した。


 ボルデティオは昨夜、隣国周辺の見回りをしていた。

街から少し離れたところに魔物の群れが出たと報告があったのだ。


 隣国は自然が多く魔物が出ることは珍しいことではなかった。いつも通りの魔物退治の任務、誰もがそう思った。



 しかし、異変を感じたのは見慣れた魔物の体格が僅かに大きかった。そして、魔法が効きにくい、剣が深部まで刺さらないという特徴があった。

 それが一体なら特別な個体だと思っただろうだが群れ全ての魔物が、だった。



 いつも通りの戦術が効かず最初こそ苦戦したが慣れてくれば問題なく倒すことはできた。



 このことを国に帰り報告すると、そのまま隣国へと南下せよと命を下されこちらに来ることになったそうだ。



 ついでに魔物を倒しながら南下をしていると、やはり僅かに倒しづらい魔物が混じっていた。

 こちらは群単位ではなく個体差ではあったが数が多かった。強い個体は良い素材になり一月に一体出会えたら運が良いと言われている。



 中でもカメに似た魔物には苦戦を強いられた。

 甲羅はブラックダイヤモンドのような硬さで魔法も剣も弾き、動きは素早く、なんとか生捕りにし退治に至った。


 周囲にはいつも出会うのっそり歩く可愛らしいカメの魔物が悠々と泳いだりしており、倒した一匹だけが異常個体だったようだ。



『そうやって倒したカメの甲羅をお土産としてお持ちしました』



『どう思われるか?』


 話を黙って聞いていたキーラがボルデティオの隣に座る隣国の騎士団に問う。


『は!

我らの王は、すぐではないが一年以内だと』




 大体100年周期で現れる魔物の変異種。

 どこにいたのか突然現れ気まぐれに破壊し尽くす巨大な災害。姿形は毎回違うようだが、巨大な魔物ということだけは歴史書のどの時代にも共通している。


 魔物が100年かけて変異種になるのか、魔物がある日突然変異種になるのか詳しくはわからない。

だが変異種が現れる前兆に特別な個体の魔物が多く発見されていると両国の資料には書かれていた。



 変異種が現れるのは隣国モダーナリ。破壊し終わると川沿いに移動しインダスパにやってくる。


 100年に一度の災い。





『一年以内…』

 誰が呟いたのかわからない声。いつか来る、と理解していたものが目の前に突きつけられた現実に体が震えた。

 それは恐怖か武者震いか本人にも分からなかった。



『国王に報告に行ってまいります』


 キーラは立ち上がると、インダスパ側の人間を下げさせた。同時にボルデティオはモダーナリの騎士を退出させ、ウツギの部屋には両国の王子だけが残った。






『なー、義兄殿。

サフィール殿に俺の婚約を破棄させないよう頼んでくれない?』


『ボルデディオ殿毎回言ってるが義兄はやめて欲しいのだが…サフィールについてはこちらこそ申し訳ない。アリナーデが止めたらしいから大丈夫だろう』



『アリナーデ王女が…そっかそか、なら良かった。


ああ。王太子になったら次期国王様って呼ぶけど?』


 ならないのかい?と笑顔で聞いてくるボルデティオ。




 世間では、ルディアシスかアリナーデどちらかが王だと思われているが実は違う。


王の智の資質をもつルディアシスか

王の力の資質を持つサフィールか


 どちらになるかまだ分からない。決めるのは現王。



王家に伝わる人を従わせる言葉の魔法。

それを使えるのはサフィールのみ。



 ルディアシスにも受け継がれているが弱く、アリナーデは王妃の力を受け継いだため持っていない。




 ボルデティオの婚約者は本来サフィールであった。しかし強い魔法が発現されたため、まだ幼いアリナーデに変更された経緯があった。



サフィールを外に出せなくなったインダスパ、ボルデティオを外に出す気のないモダーナリ。



 両者じゃあしょうがないよね、と本人の了承はなかったが互いの国にとって大変都合の良い婚約者の変更となった。



『…それは私の判断では決められないからね。

お互い王(親)の言葉には逆らえないだろう?』



『ああ。確かに』


 目を合わせて笑い合った。




 お互い意志が強い親を持つ者同士。苦労も似ている。早く酒を酌み交わしたいと思う2人だった。

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