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…あり、とは?


 よく分からないが急に出来た義弟に認められたようで安心した。"シヴァンくん"言い慣れないが頑張ろう。



『ではそれでお願いします。


義姉上、これから時間ありますか?』








 今私はシヴァンくんと一等区にあるブティックに来ている。


 掃除する予定があると言ったはずが、あれよあれよと馬車にエスコートされ連れてこられた。

 あまりのスムーズさに馬車から降りたときにやっとおかしな事になっていると理解した。



『父から義姉上が仕事に必要なものを揃えてこいと言わたので今日"は"この店で"とりあえず"買い物しましょう。

あ、支払いは全部父が出しますので気にしないでくださいね』



 そう言われてもルーズに気にしないという選択肢はないが買わないという選択肢もあるわけもなかった。

 言葉の節々の違和感に気づくこともできず、ただ思考を止めて頷いた。





『ようこそいらっしゃいました。本日は普段着を、とキーラ様からお伺いしております。

こちらのカタログから好きなものをお選びください』


 お店に入ると通されたのは服が一着も置かれていないカフェの個室ような雰囲気の部屋だった。

 違うのは大きな姿見があることくらいだろう。



『義姉上、カタログから選んで鏡の前に立つと試着した姿が映されるから。何着も着るのは大変だからね。


試しに好きなのを選んでみたらどうかな』


 へぇーそんな魔法具があるのか。人の手を煩わせないならいいかもしれない。


試すだけなら…


『じゃあ…』




 気軽な気持ちでページを捲ったルーズは後悔した。そういえばここは一等区のブティックだったと。



まっっっって?

金額が書かれていないうえに、こ、これは普段着!?




 焦ってシヴァンを見るが、なぜルーズが急に顔を上げたのか分からないようで首を傾げた。

 ここは、最近若い大人の女性に人気の比較的(貴族基準で)リーズナブルでありルーズも買いやすいだろうと選んだ店だった。


 どうしたものか双方悩む。




『もし宜しければ、こちらのページの服はいかがですか?』

 そこに入ってくれたのはカタログを持ってきてくれた女性店員。何かを察したようだ。さすが接客のプロである。


 優しく勧めてくれたのは、派手さがなく落ち着いた形の比較的普段着と言えなくもないワンピースのページだった。1人でも着れそうな感じがとてもいい。



『あ、これ可愛い…』


 思わず呟いたのは、花の刺繍が入ったリボンが背中についている服だった。


『じゃあこの服と似たものを含めていくつかお願いする』

 すかさずシヴァンは店員に試着を頼むと、ルーズは鏡の前に立たされた。




 近くで見てもただの鏡のようだったが、店員が触れると僅かに光り鏡にはルーズだけが映った。


『どの角度からでも映りますのでご自由に動いてみてください。

ドレスを買うときにダンスのターンの裾の広がり方を確認する方もいらっしゃいますよ』


ほーそんなとこまで気にするのか、貴族は。へぇ…



 ギルドの貴族出の女性職員たちはいつも『ドレス買わなきゃ』と言っていたが、細部にまでこだわって買っていたのかと知り、すごいなぁと改めて思った。




『それでは映像に切り替えますね』そう言うと、鏡の中のルーズは落ち着いたワンピース姿になっていた。


 後ろを向くと、花の刺繍が入ったリボンが揺れた。

 本当に、着ているような自然な映像に感動する。魔法具の技術力が高すぎる。


『すごいですね!この鏡。

それに靴やアクセサリーも髪型も提案してくれるなんて!』


 すごいすごいとはしゃいでいる間に次々とルーズは新たな服を試着していった。

 後ろでシヴァンが、全てに頷いていたのも知らずに。





『はー!ありがとうございました。こんな楽しい魔法具を見せていただいて』


 さて、洋服だがどうしようかと考えなくてはならない。

 一着買っていただいて、あとは自宅近くの一番いいお店で変えばいいか。とシヴァンに伝えようとした。


『ありがとう。

じゃあ義姉上行きましょうか』


??


『ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております』



 あれ?今日は買わなくてもいいのかな…なんてこの時は考えました。そんなわけないと少し考えれば分かることだったのに…



『楽しかったです。あの、シヴァンくん連れてきていただいてありがとうございました』


 まだぎこちなさがあるが名前を呼べた。

 シヴァンは嬉しそうに『こちらこそ楽しかった』と言ってくれ少しだけ義姉弟の距離が縮まった気がした。




 帰りの馬車で『これ受け取ってください』と小さな紙袋を渡された。

 中身を見るように促され開けると、青緑色の飾りがついた髪飾りが二つ入っていた。



『これは、私のカブスボタンのガラスと同じものなんです。

義姉上にひとつと、妹さんがいるって聞いたのでもうひとつはその子にも、良ければ…。


2人姉妹の中に割り込む形になってしまいますが、その中に私も入れて貰えたら嬉しいな、と』



 思いまして…と最後の方は小声で聞きづらかったが照れたように笑うシヴァンにルーズは思わず抱きついた。



『シヴァンくんありがとう!

ヤユも絶対喜びます!本当にありがとう』


 シヴァンがルーズの家族も家族だと考えてくれていることが嬉しかった。本当に家族が増えたのだと。



 それに妹のヤユは今年14歳になるおしゃれ大好きなお年頃だ。こんな素敵な髪飾りもらったと知ったらシヴァンに懐き倒す未来が見える。


『本当にありがとうございます。ヤユに届けますね』


 突然抱きつかれ困惑したシヴァンだったが、妹と呼べる存在が出来そうなことに顔が緩みっぱなしだった。


早くルディアシスに自慢しよ。



 シヴァンは兄姉も欲しかったが、王子が会う度に妹自慢をしてくるため妹に憧れがあったのだ。

 その願いがルーズによって叶えられた。義姉上ありがたい。


 2人は家族っていいな、とほくほくしながらルーズの家に着いた。


『今度はゆっくりお茶でもしましょうね。今日はありがとうございました。

それでは』



 最後までスマートな振る舞いのままシヴァンは去っていった。


 すごい義弟が出来てしまったと夢心地で家に入ると、先ほど行った一等区のブティック名義の品物が配達サービスで大量に届けられていた。



うそでしょ!?

試着したやつ…全部??


靴もカバンも、ぼ…帽子!?は試着してないよ?なんで…


 ルーズは部屋の真ん中で愕然とした。



 シヴァンは服とかよく分からないので店員が進めたもの全部買った。




 無限収納魔法具も一緒に届けられ、大量の服などの置き場所には困らなかった。流石気遣いが出来ている。

 困ったが困らなかったことに釈然とせず片付けながら唸ったルーズだった。

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