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『これは、どういうことか説明できるんだろうな』


 一段高い玉座から冷めた目の王が見下ろすのは何も分からず突然城に連れてこられたギルド長。


 これとは、デュオが持ってきたギルドの受付に置いてあった自動魔力吸収魔法具。見た目はただの箱だ。


『ギルド長心配しないでー僕がちゃーんと解析したから国王陛下は、この箱がどんな機能で、どんだけすごいか、理解してもらったからー。


あとは、なんで?ギルドに置いてあって、普段どうやって?使ってたか説明するだけだよー。簡単、簡単』


 デュオは床にひれ伏すギルド長の目線にわざわざ腰を下ろし、親切そうにゆっくりと話す。





 つい一時間ほど前ギルド長は一等区にある自宅にて仕事をしていた。

 自宅執務室に執事が速達魔法で城より手紙が届いたと知らせに来たと思ったら、同時に玄関から『王より直ちに城に来るようご命令だ。同行せよ』よく訓練された聞きやすく高圧的な声が屋敷に響いていた。


 手紙を開く時間もなく、説明もなく、ギルド長は城へと連行され謁見の間に通された。

 そこには宰相と魔法士団副団長、それから見るからに不機嫌そうな目つきの国王陛下。と、ここにあるはずのない自作の魔法具が置かれていたのだった。




『で、これはなんだ? 言え 』


 王の声は静かに重くギルド長の脳内に響く。



『そ、それは…!』


 そしてギルド長は、魔商ギルド内で近年どんどん減っていた魔力不足を補うために必要で、職員から補っていたということをぐちゃぐちゃと誤魔化し取り繕いながら懸命に説明した。


 話していくうちに咎められないと分かるやいなや、いかに自分が頭を使い絞った知恵でどうにか頑張っているかを語り出し、その場にいた全員が殺意を抑えるのに努力が必要となった。


 つまり魔力が足りなかったから自分たちでどうにかしようとした結果の箱だった。



『それでは何故、数日前に魔力が足りなくなったというのだ』


 無意味に喋りまくるギルド長を遮り国王は先日の魔法師団長を派遣しなければならなくなった件について尋ねた。


『え?…あ、それについては私にもさっぱりでして…』


 これについては本当によく分からないようで、誤魔化すような真似は一切せずに彼は記憶を一つ一つ取りだしながら話した。



 いつも箱もとい魔力吸収装置から吸い取られた魔力はギルドの地下にある魔力タンクに送られ貯蔵していた。そこから街の結界や他の魔法具に使用していたという。


 あの日の、魔法士団長を呼び出す前日の朝に満タンになったのを確認したのを最後にタンクの魔力がどんどん減っていった。その原因も突き止めることができておらず、本当に分からない。

 ただ前日から魔力がなくなっていった、と。




 あの日の前日。


 一月に数回しか顔を出さないギルド長は久しぶりに朝から職場に来ていた。


 変わりのないギルドの様子にさっさと帰ろうと昼頃には支度を始め、帰る前にちょっと見回りをしてみるかと思い立ち偉そうに巡回した。


 昼過ぎのギルド内は朝とは違い、雰囲気が重く職員の動きが鈍い、仕事も回っていない様子であった。弛んでる!と憤慨し喝を入れなければとねちねちとミスを挙げ連ねながら歩いた。



 叱責しながら見回りを続け、まともな奴はいないのかと歩き見つけたのが空に近い魔力タンクだった。


朝には満タンだった…確かに確認した。なぜ?!


 結界の異常を確認したが、そちらは問題がなく通常の魔力量で稼働していた。訳が分からなかった。タンクが四分の三以下に減ることなど見たことがない。


『おい!なぜこんなに魔力が減っているんだ!?』あまり来ないギルド長の怒鳴り声にざわつくが誰も答えられない。


 そんな中1人の男性が手を挙げた。


『あーそれが…普段みんなで使ってる魔法具の魔力が空になっててぇ入れたら減っちゃって』へらへら笑いながら言うのは上級魔法士のはずの男だった。


 なぜ自分の魔力を入れないのか魔法具がなぜと疑問だったが、いつも朝には満タンになるため今だけだと思いギルド長は、魔法士や魔力が多いものに魔力を注ぐよう命じて自分もタンクに直接魔力を送った。


 ちょっとだけメモリはあがった。


 他の魔法士たちも装置に触れているのを確認しギルドを出た。次の日の朝には満タンのはずだと。



 だが、念のため出勤した次の日に見たのは空になったタンクだった。


 焦った彼は結界に支障が出る前に、城へ連絡を入れ魔法士団を派遣してもらった。

 これがあの日起きたことです。と先ほどよりさらに頭を低く下げた。


 魔力吸収装置がなくなっていたのは不具合を調べるためにギルド長室で確認をしていたそうだ。

 隠す意図はなかったらしい。



『なるほどねぇー。で、ギルドに置いてあったコレ、魔力吸収魔法具がさー周辺のだいたい半径500mくらい?の魔力吸ってたっぽいんだけど、知ってるー?』


 ギルド長はデュオの言っている意味が分からないようで、目を丸くし口が少し空いている。可愛くないなーとデュオはその顔を潰したくなったが、我慢し続けて聞く。


『これ。街の人からも魔力取りやすい人から魔力吸い上げちゃってたよー?


お前。てか魔商ギルドは、俺らと戦う気なの?』


 ぽかんとした顔が見る見るうちに青くなり次に真っ白になる。ちが、ちが、まさかと何か言っているが、何を言っているか誰も聞く気はない。


 意思があろうがなかろうが、国に許可なく周囲から魔力を集め溜め込む行為は戦争の準備をしていると言われても仕方がない。弁明の余地など許されない。


 王がそうだと言ったら、そう、なる。



 ギルド長は、顔から色々な水分を流しながら王に謝り続けた恥とか立場を投げ捨てて。



『魔商ギルドは国を民を守る機関だ。

   驕 る な  』


お前に与えられた役目を忘れるな。


 脳に刻みつけられたギルド長は『…はっ!』と若干怯えた声であったがはっきりと応えた。



 ふらつく足で出て行ったヨレヨレの男が退出するのを皆で見届けた。


『これでとりあえず大丈夫そうですかー?陛下』


 国王は、深く椅子に座り直し『多分な』と笑った。



『あいつは、すぐにサボるのが難点だが意外とやれと言われたらやるやつだ。これからは大丈夫、だな宰相』


『そうですね、あいつは本当に相変わらず…まったく。

前ギルド長に連絡いたしました。腰痛も落ち着いたと聞きましたし』


 鬼の前ギルド長がくれば、ギルド長も動くだろう。

そして気づく、どれだけ優秀な人間を身勝手に追い出したかを。

 その時に後悔すればいい。



 国王たちはその日を楽しみにしている。

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