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『で、ギルドから強奪してきたと?』


 第一王子ルディアシスと側近のシヴァンは黙々と不正だらけの書類をようやく片付け、ティータイムをしていたところ。そこにゴミを引っ提げでデュオがやってきた。

 次から次へとなんなんだ。



『えーだって、この前ギルドが魔力が足りず魔法具が動かせませんて泣きついてきたから城壁の結界張りに団長が行ってさー。

僕も、なんかギルドに魔力込めに行ったんだけどーなかったんだよねーこいつ。

隠しやがって最悪じゃなーい?』


 むかついたから持ってきたー悪いー?と全然悪びれず言う姿に腹が立つ。秩序は守れ。



 話を聞くに、ギルドは無断で職員から魔力を吸い取っていて恐らくだが魔力量が多い魔法士たちは取られないように対策していたようだと。最悪だな。害悪か。


『最悪すぎる…

国王に一旦報告する。その間に魔法士団で魔法具の解析をできるだけ頼む』



学院に行ったほうが楽だったな…

あー失敗した。



 ルディアシスは重い腰をあげ『シヴァン街へ行くぞ』と言うとメイドを呼びお忍び用の服の用意を頼んだ。

 メイドは手慣れた様子で、どこにでもいそうな少し裕福そうな服を二着持ってきた。


 着替える時に、僅かにごわつく軽い服の感覚に力が抜ける。その瞬間がルディアシスは好きだった。



 ちなみにシヴァンは服は着られればいいので特にはなんとも思っていない。




 運搬道の門から業者を装い、見た目は普通中身は最上級の馬車で城を出る2人。一等区の入り口付近で降りた。


『今日はどこに行くんだディー?』


 "ディー"とはルディアシスの街歩き用の名前だ。この名を使い一等区以外の店に顔を出して時折遊び…偵察に行っている。


『妹の器が消えた場所に行って見ようと思う』


 妹のアリナーデは器で散歩中に、魔力が切れて魂だけで街を彷徨った。その器が消えた場所。


 器の王女は影に見守られていたが、急に目の前で消えたと報告があった。

 いつもより長い散歩をしていたために王女の魔力が単に切れたのだろうと推測されていたが、魔力を吸収する魔法具を見て他の可能性を考えるべきでは?と疑問に感じた。

 自分の目で、その場所に本当に何もないのか確かめたい。



『報告によると、この辺ですかね』


 一等区から少し出た、ここ。

 メイン通りを真横に交差する道を超えたところで器が消えた。


 報告された場所からゆっくり道を歩き観察する。

 人通りも多く、どの店も活気があり繁盛していそうだ。ガヤガヤとうるさいのに気分が高揚する雰囲気は賑やかで、一月前に来た時と同じ街並みだった。


 歩きながら魔力を少し放出してみるが問題もなさそうだ。街の人たちの笑顔を見ながら王子は、気苦労だっただろうかと緊張を解いた。

 念の為にもう少し見回ることにした。



 小型の魔法具を起動させ耳にはめる。人々の声や物音を拾う便利な道具だ。


『おや!久しぶりだねぇ元気してたかい?』

    『あらこんにちはー』

『なんだかこの2.3日くらい体が重くてねぇ。さっき急に体が軽くなった気がして、外に出てきたよ』

  『わっははは』

『なんだ!あんたもかい!さっき角の奥さんも似たようなこと言ってたよ。風邪がねぇ…気をつけんだよ

     『今日は天気がいいねー』

『なんかさっき急に体が軽くなってよー』『へぇ〜』

 『あれ買ってぇー』

『昨日からひどい肩こりだったのにさっき治ったの』

『そうなんかい、良かったねぇ』




 街の喧騒に耳を傾けると、別々の場所にいる人たちから数日体調不良が続き、先ほど治ったという話が聞こえる。




 シヴァンにも聞こえたようだ。顔が強張っている。


『ディー…これは……』


『ああ、あの店に入ってみよう』


 ちょうど目についた昔から商いをしていそうな佇まいの食事処に入ることにした。

 店内は早めの夕食を食べる人などで埋まっていて会話をするに困らない程度にざわめいていた。


 注文を取りに来た店員にシヴァンは尋ねる。


『最近疲れやすくてね、なにか疲労回復に良さそうな軽くつまめるメニューはあるかい?』


 『それなら!コレがおすすめですよ』にこやかに、ガリックの包み焼きを指した。

 一昨日からそういいお客さん多くて〜あっでも今日は少ないですけど、と教えてくれた。注文を悩むふりをしながらルディアシスもにこやかに、最近の様子を訪ねていく。


 周りの客の会話からも"今日は疲れにくい、体が軽い"と似たような声が聞こえる。


 注文したガリックの包み焼きとトマトー二のエッグがけを頬張りながら情報を整理する。


『最悪だ…』

『…最悪だな』


 早く帰って王に報告せねばならない。


『帰るぞ』


 賑わい付いた街並みに染みついた汚れを払うため2人は城へと急いだ。





『ルディアシス先ほど魔法士団より報告があった。街の様子はどうだった?』


 王子たちは報告書にまとめるのも時間が惜しいと王の執務室に直行していた。

 そこで、魔商ギルドについてルーズから聞いた話、街での様子を報告した。


 王はそれを聞くと、顔を歪ませ『ギルド長を呼べ』と。そしてその場にいるものに命じる。



『魔法士団と騎士団は今回のことに関わった人物及び証拠品の捜索をせよ。


ただし、見つけても手を出すな。

まだギルドには働いてもらわねばならない』


 王子はすぐにでも解体してしまえばいいのではと王に物申したが、王はルディアシスに残るように言い、他のものを下がらせた。



 王は重いため息を吐くとルディアシスを真っ直ぐ見つめ話し始めた。


『100年はもうすぐだ。ルーズより優秀な魔法士だと自負してるならその分働いてもらう』


もしも、のときは人数がいる。

それまでは…


 首輪に繋がれてることは思い出させておけばいい、と王は終始淡々とした口調だった。一度目を瞑り、開かれた視線は遠くを見つめ複雑な色を持っていた。


 ルディアシスには王の心情を読み取ることができなかったが、頭を下げ命に従う。


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