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『今日は初日だし、そんな色々難しく考えなくてもいいのよ?ルーズちゃんなら大丈夫。自信持ちなさい』


 イリアはそう言ってルーズを第二王女宮に送り出してくれた。



 おかげで彩り楽しい庭に建てられた東屋で花々を眺める今余裕を持ってアリナーデを待つことができた。


 しばらくして現れた王女は騎士団のようなパンツルックだった。凛々し可愛らしい姿が花々に溶け込み今日も芸術品のよう。癒しである。



『ルーズ先生お待たせいたしました。

本日はよろしくお願いします』


 胸に手を当て軽く目線を下げる。

 ドレスの時の挨拶のような華やかさは無いが、少ない動きに姿勢の良さが際立ち、惚れ惚れする格好の良さ。


『…アリナーデ様!また会えて嬉しいです。

今日は、こちらこそ、よろしくお願いします。


アリナーデ様はどこまで魔法をコントロールしたいとか希望はありますか?』


 初日の魔法指南はまず、アリナーデのなりたい形を探すことから始めた。


 目標を決めてそれに合った指南をしていくことを説明する。楽しくかちょっと大変なのが良いのか、聞き取りを丁寧に行なった。




 可愛らしく真っ直ぐに目標を語るアリナーデにルーズは目尻が下がりっぱなしだったが、問題がひとつできてしまった。


『……分かりました。ではアリナーデ様はいずれ魔法士試験に合格できるようにを目標に、と言うことで。

ゆっくり進めて行きましょう。


それで、言いにくいんですが、そのぅ…

私魔法士、じゃない…んですよ。本当にすみません!


コントロールは大丈夫だってイリア様から合格出たのでお教えするには問題ないかと思いますが、試験対策は出来かねて…一緒に頑張るって方向でも良いでしょうか?』



 まさか王女が魔法士を目指すとは思わず、自分ですら合格していない目標にルーズは先生初日から躓いてしまって少し落ち込む。

 けれど、アリナーデと一緒に頑張りたい気持ちを伝えた。



『は?ルーズが??



…ちょっと!誰か!』


 天使のようなアリナーデ様がご立腹になられ、ああーっ申し訳ありません、とルーズは自分の不甲斐なさに泣きそうだった。


 近くに待機していたタナーが、不穏な様子を感じ取り急いで来てくれた。


『タナー聞いて。ルーズが魔法士じゃないって!

どうなってるかお兄様に聞いてきてちょうだい。あのギルドは試験を受けさせなかったってこと??

ありえないわ!』



 タナーが目を見開いてルーズを見る。ルーズはよく分からないが、頷いた。なんとなく反射的に。


『っ!?……分かりました。早急に』



 シュンって音を残してタナーが消えた、気がする。アリナーデは何かに怒っているし、おろおろするしかないルーズ。


『ルーズ。貴方は確実にその辺の魔法士より優秀よ。そうでなければ、父が私の指南役には任命しない。


悪いのはルーズに試験を受けさせようとしなかった者たち』



 アリナーデの剣幕に『はい』と頷くしかなかった。



 それから王女に励まされながら初日の魔力操作の指南をしたのだった。





『失礼します。第二皇女殿下より、なんでルーズが魔法士じゃないか教えて!とのことです。ご回答を早めにお願いします』


 王子の執務室の天井からやってきて好き勝手に言うタナー。



『あのねーデュオといい君たち何なの…王子の執務室に不法侵入するのやめてくれる??


あと、今ギルドの膿探してるから待ってるように伝言よろしくおね…』


 はっ!と短い言葉を残しタナーは天井に消えた。



『がいね、って、ぇえっっ!

今の返事は不法侵入するなに対してだよな?え?

この国の王族舐められすぎだろう。ひどいと思わないか?!』



『まぁ確かに。舐められてるから、こんなふざけた真似ができるんだろうな』


 シヴァンは苛立ちを隠さずそう言いながら書類を叩いて王子に見せる。


『後ろ盾のない平民を名簿上は職員だが、会計報告には臨時職員の給料しか払われてない。役職者に特別任務手当が毎月出てるのも馬鹿にされてるんだろうな』



 読めば読むほど頭に血が昇る書類を睨みつける。王子も疲れているためいっそギルド潰したほうがいいのかもしれないと本気で考え始めていた。







『こーんにちはー!魔法士団副団長デュオ・マスタンズが来ましたー』


 ギルドの正面玄関から堂々入り、挨拶。挨拶は大事だ。そして受付のところに奇妙な魔法具を見つけた。


『ねーお姉さんこれなーにー?』笑いながらだが目は一切笑ってはない。これは理由なくあってはならないものだ。



『え、あ、これは、職員の方の手形承認でございます。朝来た時に手を触れていただき、職員または関係者を照合してこちらの扉が開くようになっています』


 受付の女性は焦りながらも嘘を言っているようには見えなかった。



『…ほんとに?全員これ触ってる??素手じゃない人いない?カードとか使ってる人』


 デュオの質問に、女性たちはしばし考えた。そういえば、手の人とカードではないが宝石をかざす人がいる、と。『じゃあ君たちは手?あと誰が手を使ってたかわかるー?』と今度は優しい顔で優しく質問した。



『あ、ねぇねぇ。最近だと、あの辞めた女の子と数人くらい?私たちは前まで手だったけど触ると痛いからって言ったら免除になって番号を打つことになったし、ねぇ』


『魔法士の人は宝石で、職員で触ると手に強い静電気のような痛みが出る場合は暗証番号になりました。他の上役は、顔パスだーって私たちが開けてました』


手が痛い?



 デュオが魔法具に触れてみると、特に違和感はなかった。だが体内の魔力量を調べると減っている。

 手が痛むのは、体内の魔力の蓋が強いものだろう。使えば使うほど蓋は柔らかくなる。



ほーーーーーん。



ルーズちゃんと他にもいるのかなー?

何人かが自動魔力吸収装置に吸われてた、と。


はーーーーん。


王子ーもうこれ潰していいと思うー!!


『…ありがとーまたすぐ来るねー。あとこれ貰ってくねー!』


 手袋を嵌めて、装置についた配線をぶち抜きひょいっと持ち上げる。女性たちは慌てて止めようとするが、魔法士団相手では強く言えない。

 助けも来ず、どうすることもできなかった。


『あの後ろの扉開かないようにしたからごめんねー。僕がいなくなったら来ると思うよー。


文句があれば城に来い。


って言っといてーじゃねぇー』


 お土産、お土産っとうきうきで城に帰る。



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