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 ぐーっと両手を伸ばしベットの上で伸びたルーズは、大きく息を吸い込み少し冷たい空気を体に取り込んだ。

 国王より王女の友人兼魔法指南役を任命された日から3日が経った。今日は初めての指南日だ。


『よし、今日はいい天気』


 カーテンを開けると、日はすでに昇っており家の軒先で作業中の人や行き交う人々の様子につい笑顔をこぼす。


 あの日アリナーデとお茶をした後、馬車で橋の前まで送ってもらったのだった。

 早い時間に帰宅でき、今度こそお気に入りの店の魚介スープを買って帰ることに成功。満足な食事をし、たっぷりの睡眠をとったルーズは疲れた心と体を癒した。

 さらに脱力に堕落を重ねた2日を過ごし、部屋の中はごちゃついているが心は晴れやかだ。



 前回契約手続きをする手筈だったが、契約内容が大幅に修正されたために、諸々の契約などは本日行うことになった。ルーズは何も悪くないが、文官たちが3日で書類を作り直したと思うと心苦しい。



 アリナーデの魔法授業は午後からの時間割りなため、その前に契約の手続きをしに城に行くことになっている。


 帰る際に、馬車は不要だと伝えたため本日は徒歩で城まで向かう。運搬道からの入城は警備の問題で却下されてしまい正面から入ることになったが仕方ない。




 のんびり朝を過ごし、さっさと準備といっても持ち物もないため動きやすい服に着替えるだけで済んだ。


『じゃあ行きますか』



 玄関のドアを開け、活気のある街並みにほっとする。


 だが数メートル歩いた先でルーズは違和感に気づいた。

 前の仕事に行く時よりほんの少しだけ体が軽い気がしたのだ。自分でも気づかないうちに、ギルドに行くことを拒否する気持ちがあったのかも知れない。


向かう場所が変わっただけで、こんなにも体が軽くなるなんて…

心なしか調子がいい気がしてきた!


 病は気から、と言うが魔力は気持ちによって左右されやすい。気疲れがあると体内の魔力に影響し、体を重く感じさせてしまうことがある。


 十分な食事と睡眠、アリナーデが守ってくれると言う言葉がルーズに活力を与えた。

 悲しみと怒りで制御が外れた万能感ではなく、心弾むなんでも出来そうな沸々と湧くやる気は、ルーズの力の源になっている。



 気分よく城に向かっていると、橋を渡ったあたりから雰囲気が変わり、人の活気が少なくなっていた。


 普段心地よい雑音が飛び交う商人街がなにやら静かだ。人がいないわけでもなく、忙しそうに動き回っている。人がいて普段の街並みをしているのに音が違った。


 どうしたのか様子を窺いたいが、メイン通りをこのまま歩き続けてギルドの前を通ることは避けたいため気にはなるが、ルーズは脇道に逸れて歩くことにした。


 脇道は普段通りのようだった。






はぁ…歩くと意外と遠いな。

やっと城まで来れたけど…



 一等区のメイン通りから正面門にやってきたルーズは、そういえば城に入る方法を知らされていないことに気づいた。

 王直筆の通行許可証は持っているが誰に見せればいいかと辺りを見回した。


とりあえず、門番に声かけよー…



『はい、お嬢さん止まってくださいね』


 一歩城の方に足を出した時、後ろから肩を叩かれた。振り向くと、爽やかに笑う貴族然とした若い男性。


真珠に黒いリボン、ラインは2本だ。


 咄嗟に階級を確認したルーズは、頭を下げた。その様子に男性は、おや?と思う。ただの不審な平民かと思い声を掛けたら、貴族の階級を表すピンバッジと役職のリボンをさっと確認したからだ。

 それを知っていると言うことは、貴族か城で働いている平民か関係者ということ。


 本人にピンバッジもリボンもないと言うことは働いている平民の家族か何かだろう、と判断した。



『ここから入るには、通行許可証が必要なんだ。ごめんね。

もし中の誰かに用事なら、あっちの受付で名前と用件を聞いてくれるから、はい。じゃあ気をつけて』


言いながらぐいぐい押し出し城から離そうとする男性に戸惑うルーズ。


『あ、あの!

許可証を持ってます!』


 早く誤解を解かなければと大きな声で叫ぶと男性は、お前が?と言う顔が思いっきり外に出ていた。


貴族のくせしてなんて露骨な顔を…!?


 ルーズは憤慨して軽く睨みつけた。全く失礼な。





『ええ!?国王陛下の許可書じゃん。ってルーズ・ベクタール…!

……まじで?あの!?!?』


 門の前で許可証を男の顔に叩きつけると、王直筆の許可書に驚いた後ひとしきり笑って案内をかってでてくれた。

 彼は騎士団に所属するラズール・カリヤ。伯爵家の四男だそう。


『あの、というのは分かりませんが…今日から城で働くことになっています』


 あの、とはなんだ。と心の中で突っ込みながら頭を下げ潮らしい態度でやり過ごす。


『あーっと。噂になってんだよね。…あ、いい噂ね!

大活躍だったって聞いたから。直接会えて嬉しいわ。


じゃあこっちおいでー』


 その後は城前の態度とは違い騎士団らしく、爽やかにきちんと案内し親切であったが最後に不穏な言葉を残した。


『あー…ぁー…まぁなんつーか。大変だと思うけど頑張って?』


 伯爵家出身だが四男なため、騎士爵を受け賜わなけば平民となる身らしい。そのせいか他の貴族より気安い口調のラズール。

 貴族相手なのに貴族らしさのなさにルーズの調子が狂って上手く返事ができない。




『キーラ宰相がここでお待ちですので、ルーズ殿どうぞ』


 何をどう頑張っていいのか、聞こうとしたが案内が終わってしまったようだ。また貴族然した爽やかな笑顔に戻っていた。


コンコン、コンコン


『ルーズ殿をお連れ致しました!』


 ラズールが扉に向かって声をかけると、キーラが中から入室の許可を出した。ドアを開け、ルーズを前軽く押しながら声なく『がんばれ』と口だけ動かした。


 彼は一礼すると騎士のように無駄のない動きで元の道を戻って行った。


だから何をか説明をして欲しい!!


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