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『国王、ルーズをアリナーデ様の友人兼魔法の指南役にしてはどうでしょうか?

…丁度いいですし』


 宰相が頭を下げながら王に進言する。やっと王と臣下の立ち位置に戻ったようだ。


 なるほど丁度良いな、と機嫌を良くした王はルーズを第二皇女殿下の魔法指南役とすると任命した。


 丁度都合がいいと丁度良い人材の言葉に若干の違いがあることに誰も気づかず話は進んだ。多少の誤差だ意味が違っても結果は同じ。


 その命を聞いた文官たちは、一礼すると急ぎ部屋を後にした。これから早急にしなければならない仕事が予定からだいぶ逸れて決まったのだ、一分一秒でも惜しい。


 デュオは目を輝かせた。


『魔法の指南役なら魔法士団預かりだ、ですよねー!

じゃあルーズちゃんこれからよろしくね!じゃ僕、団長に知らせてきまーす』


 楽しみ〜と声を残し消えた。残留した魔力が散るのを見ると本人ではなく魔法具による映像を流していたようだ。緊急の仕事の合間に遠隔で参加したのだろう。

 送る映像の精度は魔力量や技術力に依存する。本物と見間違う映像にデュオの能力の高さが窺い知れ、驚かされる。



 仮面の騎士こと、アリナーデの姉である第一王女サフィールはルーズを一瞥すると、部屋を出る。

 その一瞬『平民は邪魔せず大人しくしてるんだな』とルーズだけが聞こえるよう魔力で音を届けさせた。


 声が届いた瞬間ルーズは慌てて頭を下げる。



平民嫌い…か




 国王と宰相は何やら話し合ってから、ルーズに退出を認めた。


『アリナーデに会ってやってくれ、第二王女宮で待っておるはずだ』


 もう一度膝を落とし退出の挨拶をする。ドアの前にはタナーが待っていた。



 ドアが閉まると、国王は腹立たしそうにキーラを睨みつける。


『昨日アリナーデが無事だったのを内密にした嫌がらせにしては、だいぶ勝手なことをしおって…』


『私が寝ずに王女を待ってたの知っていたでしょう?!それを!知ってて除け者にしたアンタに言われたくはないわ』


 王は、幼馴染兼相棒である宰相が怒っている姿を見てやれやれと呆れた。こいつは怒ると長い。本当にしつこい男だ。


『伝えたら、街に行って保護しただろう?』


 ええもちろん、と。


『お前らが迎えに行けばルーズは逃げただろうな。

そうしたらもう会えなかったかも知れぬ』


ルーズに会えなくなる。


 その可能性を失念していたことに、キーラは二の句が継げない。


 あの時捕獲しなければならなかったのは、アリナーデにルーズ2人だったのだ。小さくなった王女が本物か否かに関わらず、ルーズを逃すのは避けたかった。


 どんな魔法を使うかわからない人間を放置は出来ない。


 キーラは王女と言うか王族(特に子どもたち)第一主義。命が危うい状態のアリナーデに気取られルーズを逃す可能性が高かった。


 もしくは捕縛しかねない。したら最後、ルーズと友好な関係は築けなかった。城に招くには命令しかなかっただろう。



 アリナーデを守りつつ、ルーズを城に入れるためキーラを排除する。これが国王が出した結論だった。


 すっかり項垂れたキーラを見て、やれやれともう一度ため息を吐く。国王は聞かねばならないことがまだあった。



『それで、なぜ養女にしようとした?文官にでもすれば良かっただろうに』


『……亡き妻の血縁者の可能性がある』



 王妃の幼馴染であった伯爵令嬢は宰相と結婚し、15年前に亡くなるまで、王妃と宰相を支えたシャンリー夫人。


 昨日ルーズが王族と食事をしている間、キーラは王女に関する報告書を読んでいた。その中の王女の証言に『黒いレースの布が広がったような綺麗な魔法』という一文を見つけた。


 妻は生前、両手から黒い魔法をテーブルクロスのように広げ、光の煌めきを楽しむ魔法を使っていた。綺麗だが使い道はわからないのと笑いながら。


家に、血に継がれる特殊な魔法。


 妻の生家に何代か前に他国から嫁いできた人間の魔法だとしか分からなかったが、偶然似た魔法とは考えにくかった。黒い何かを出す魔法は他にないのだ。

無関係ではあり得ない。


ならやることは一つだった。


 公爵家には嫡男が1人いて第一王子の3歳上。王子の側近だ。周りから認められた後継がいるため、ルーズを養女にしても何ら問題はない。


『…お前の話はわかった。

キーラ公爵家との養子縁組を進める』


 ありがとうございます、とキーラは深々と最敬礼をし、王の前を辞した。





 その頃、第二王女宮ではアリナーデとルーズがティータイムをしていた。


『エメラルドのブローチ似合ってるわ。まぁ諦めた方がよろしくてよ?』


 会ってすぐに、どこの公爵家の養女になるの?と聞いてきたアリナーデに、謁見の間であったことを伝えた。

 それを聞いて、まぁルーズは人気者ねと楽しそうに笑って、諦めなさいと言う。


 ルーズも半ば諦めてはいるのだが、どうなるか不安がつきまとうのだ。


『私がルーズを守るから大丈夫』


 言い切った王女がかっこ良かったが、成人も迎えてない年下の王女に、守られることに情けなさを感じるルーズ。


でも、有難い。国家権力は偉大なり、である。



『まぁそれは置いておいて


これからよろしくお願いいたします。ルーズ先生』


 今日一番のとびきりの笑顔で王女は、楽しそうにそう言ったのだった。

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