24
部屋にアリナーデと2人きり。
使用人たちは半数ほど残っているが壁になっているので数には入らない。
『ごめんなさい。分かってると思うけどまだ言ってないことがあるの。詳しいことは、また今度言うわ。
そんな状態で引き受けてくれてありがとう』
隠された何かが危険なことかもしれない。その矛先もどこだか分からない。最低限自分の身は自分で守れるくらいには魔法を鍛えたつもりだ“全然大丈夫です"とは簡単には言えないが納得して引き受けた。
だからこれでいい。
『またアリナーデ様と会えるから楽しみです。
あっ!それより。
また街に行く約束ってなんですか?知らないんですけど…』
本当はギルドを辞めたことをご存知な理由とかどこまで素性を調べられているのとか聞いてみたかったが、そこまで入り込む勇気は残念ながらまだなかった。
精神的に軽い疑問を聞いてみた。
アリナーデは、微笑み。
『約束したからよ』と微妙に答えになってない答えで終わらせた。行くしかないらしいが、器での散歩か本体での散歩かは判断がつかないことにルーズは強く目を瞑り軽く唸った。
その様子に壁際の使用人たちから励ましの視線が集まったが、王女様が向けた笑顔により視線は散らされ残念ながらルーズまでは届かなかった。
『お帰りの準備ができました』
楽しいおしゃべりは、この部屋に案内してくれた時と同じメイドからの知らせにより切り上げられた。
庭園が見える廊下を歩き、運搬道に続く門に向かう。
メイドが先導し、今度はキーラ宰相も列に加わる。
宰相は歩きながら、今まで皆が教えてくれなかった内容を話してくれた。
ルーズは登録なく入城した平民なため、裏からの退城になること。
これは、アリナーデが外に出たことも一部の人間しか知らされておらず、週に一度の散歩は機密扱いで国王と王妃、それから先ほどいた使用人たちと護衛にキーラ宰相しか共有されていないため何のために平民が裏から入り正門から出るのか門番の警備兵や来客管理の役人に説明ができず、最悪捕まるらしい。ルーズが。
第二王女側の都合で外部に説明できないためもし揉めそうになったら助けられない、らしい。
それから今までいたところは第二王女殿下に割り当てられた離宮だったそうだ。
アリナーデに忠誠を誓うもので固められ、城で唯一王女が安心安全で過ごせる場所なので、ルーズにも安心して欲しいとのことだ。
ほぉ…安心できるのかそれは。
けれど状況がなんとなく見えてきた。王族、貴族の争いは内外様々だと言うし、揉めているんだろうな。
まぁ気になるのは城から出るのは自由って言ってたよなアリーナ様は……
自由に出ているのではなかっただろうか、と不思議に思いアリナーデを見つめると、指を口に当て『シィー』と悪戯っ子の顔がそこにあった。
ルーズはよく分からないがとりあえず頷いた。
客人なのに裏からの退城に申し訳ないと謝罪するのはキーラ宰相だ。今までルーズが城で働くための調整やアリナーデの予定の変更など動いていたらしい彼を攻める気は1ミリもない。
いや他の誰も責めるつもりはないが。
キーラ宰相にも今後世話係として働くことに感謝された。それはもう大袈裟なほどに。
少し王女が離れた時に、こそっと、器で移動する度に胃がキリキリし、いつとは正確に不明な魔法の発動は夜のため不眠の番となり相当苦労があったようなことを切々と語ってくれた。
何度言っても安全な場所で待っててくれずふらふらと街探検に出てしまうと言う宰相の顔は死にかけの魚だった。
『王よりこちらを、明日登城される際の服です。
それと城での必要事項の確認書類を作成しましたのでお読みください』
密かに明日何着ていけばいいのか悩んでいたのでありがたい。さすが気遣いの王様。
確認書類がなんだか書類というより本のような厚さなことは気にせず笑顔で受け取った。
『ルーズまた明日ね』
国王が用意してくれた馬車に乗り込む。アリナーデはこちらが見えなくなるまで手を振って見送ってくれた。
馬車は見た目は一般的な箱型だったため油断していたが、座った瞬間に座椅子部分の厚みと座り心地の良さに王族がお忍び用にでも使っているのか勘繰ってしまう。お尻が優しさで包まれる。
最後まで至れり尽くせりの待遇に笑ってしまいそうだ。どこまでお優しい方々だろうかと。
はぁ、アリナーデ様は最後まで可愛かった…
ぼんやり今日の出来事を考えていると、城に行くまでの道のりが嘘のようにあっという間に自宅に着いた。
御者にお礼を言うと、馬車は嘘のように早く走り抜け消えていった。馬も特別だったようだ。本当に最後まで王族には驚かされる。
終わったー!
やっと久々に自宅に帰ってきた。
家に入ると、玄関横に配送を頼んでいた荷物が届いていた。受領完了を知らせるため、付いていた魔法紙に魔力を込めながらサインをする。紙が光ったら終了だ。
荷物の中身はまた今度にしよう。今日は宰相からもらった確認事項を読まなきゃ…
あーでもその前に一回ねむり、た…い
疲労が溜まっていたところに心労が重なり、さらなる精神的負荷に体力自慢のルーズでも負けてしまった。
次に目覚めたのはまだ朝日が昇る前だった。




