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 王妃様が突然フレンドリーになられた。


ルーズ、ちゃん。


 いつからそんな呼び方になったのだろうか。頭が混乱してなにを言われたのか頭に入ってこないが、この母子はひどく似ている気がする。



『失礼いたします。デザートのプディーヌでございます』


 脳内と口から出る言葉がチグハグになりそうだったところに天の助けがやってきた。

 美味しそうなデザートが運ばれたおかげで会話が途切れる。このまま笑って有耶無耶にしてしまおう。


デザートおいしー…ぃ『まぁお母様ったらせっかちなんだから』

『そうだな、さすがに明日からというのは急すぎるだろう』

『そうかしら?早く次のお仕事があったほうが良いかと思ったのよ。ごめんなさいねぇルーズちゃん』



『あ……イエ』


 ルーズはアリナーデ達の会話を聞いている途中で美味しかったプディーヌの味が消えた。

 聞こえた音が怖すぎて全ての五感が一瞬にして遮断された感覚があった。シュンッてなんか閉じた。防衛本能すごい。


突っ込むところはドコからだ?

怖い。背中に伝う汗が冷たい。

聞いたら負けな気がする…

気づかなかった。

私は何も気づかなかったダイジョウブ


 味のしなくなった柔らかいデザートを口に入れる作業を繰り返す。が話は周りで勝手に進む。


『アリナーデが次に器ができるまで1週間…それまでに雇用契約をすれば問題ないかしら、ねぇ貴方』

『そうだな…1週間で手続きを進めないとな。どこの所属で契約するか』

『私ルーズと街に行く約束をしました。私の侍女ではダメでしょうか?』


 辛うじて理解してもいい言葉が聞こえてきたのはいいが身に覚えのない約束に気が遠くなりそうになる。


えーしてない。してないですよアリナーデさま…


 無心で食べ進めたデザートが空になりかけている。最後の一口が消えてしまえば、やることは会話への参加である。


 ルーズは、ちらり壁際に並んでいる使用人を見る。その中で一番質の高そうな服を着ている人に目で訴える『どうなってる?逃げたい!』強く思いを乗せて。


 城で働く使用人で王族に近い者は貴族出身である。普段のルーズであれば、礼儀正しく頭を下げ敬う相手だ。だが今は、大きすぎる王族の存在感にある意味で慣れすぎてしまい貴族の存在を失念していた。


 王族とそれ以外で考えているルーズは、すがる思いでそれ以外仲間に助けを求めるが、使用人から見れば仕える主人の大切な客人であり、かつ一番何も言えない立場の平民である。

 心の底から可哀想だな、とは思うが助けなければいけない理由がない。身分とは絶対である。可哀想に…


 すっと目線を下に降ろした使用人に絶望するルーズ。心なしか一瞬首を振られた。諦めろと。



『ルーズどうしたの?』


 何かあった?と心底不思議そうにルーズの方を伺うアリナーデ。にこにこである。

 彼女の一言により、この部屋の時間はルーズの言葉を出すまで止まってしまったようだった。しん、と物音ひとつ出さずにこの場の全員がルーズを待っている。



『あっのー……非常に言いにくいのですが、色々イロイロ気になったことがありまして。

とりあえずひとまず、城で働くというのは、どういったことでしょうか?』


 アリナーデと王妃が頷き笑みを深くする。


ここで話を聞いたら、きっと戻れない。


 話の進め方は強引でひどい気がするが、やっぱり平民のルーズなら命令でもって縛れば良かったのだ。

 それをせずに、いっときの猶予、本当に無理だと思ったら逃げ出す道を細道ながら残してくれたのだと、思いたい。


 なぜだかギルドを辞めたことがバレてるのは怖すぎるが次の仕事を早く探さなきゃいけないのも事実。

 王宮での仕事はエリートか貴族のみ。そこで働けるなら大出世だ。田舎の家族も喜んでくれるだろう。


 ルーズの問いに答えてくれるのは王妃だった。


『あらーごめんなさいね、ルーズちゃんに説明してなかったわね〜。

実はアリナーデの魔法は寝ている間に発動してしまうの。だからコントロールがしきれなく自動発動型で…だいたい週に一度くらいかしらね。


発動すると器に乗って移動するのだけれど、その状態で城にいると危なくて外に出なきゃいけないの。

まぁ、外も安全とは言い切れないのだけれどね〜』


 なるほどーと相槌を打ってたらなんか不穏な香りがした。


『ルーズちゃんが居てくれたら娘の器がまた消えても安心でしょう?だから毎日とは言わない。毎日でも嬉しいけど無理なら週に2度くらいアリナーデのお世話係とかどうかしら?』


 器は実際消えてしまった。次はないとは言い切れないとなれば対策を立てるのは当たり前で、その対策にルーズが選ばれたということだ。


 多分まだ言われてない情報が隠されていることにルーズはなんとなく気付いてはいたが、きっと何があってもアリーナだったアリナーデを見捨てることはできない。ならば答えは決まっている。



『分かりました。いつでも必要とあればお呼びください』

しっかり笑って答えた。



 ルーズありがとう、とアリナーデも笑ってくれた。


策士だけど可愛いアリナーデ様。

いいです、そんな貴女が好きです。



『ルーズよ、儂からも礼も言う。娘を頼む。


あーそれから其方の魔法について魔法士団から話がしたいと、すまんがまた明日城に来て欲しい。

迎えを出すのでな、遊びに来るつもりで気楽に来れば良い』


 では、と国王と王妃は立ち上がり、先に退出していった。こうして、どうなるかと思われた王族と平民の昼食会は終始和やかに滞りなく終わりを迎えた。


っはーーやっと息が吸える。


 王たちが退出した瞬間にだらしなくテーブルにつっぷすが、部屋には王女、貴族出の使用人、ただ1人平民のルーズである。


 そんなルーズを皆が微笑んで見ていた。


これからもっと大変になるのに…と。

明日からはまた一日一話投稿です。

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