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 話を聞く限りでは怪しまれていたのは、平民のルーズだけではなくアリナーデもということになる。

 もしあの時、警邏隊に引き渡していたらすぐに迎えがきたのか微妙である、来たとしても本当に王女が疑われながらの移動になったかもしれない。


 そこまで考えて、歩いて自分の足で城に向かったのか。

 助かった原因である私を連れてくる必要性も理解して…死にかけて何も分からないまま回復した上でそこまで瞬時に考えたアリナーデ様、賢い…



『そう…でしたか、今回のことがどれほど異例のことが存じ上げずにここまで来てしまって、何と言ったら良いか…』

 どうしたらいいか分からなすぎる。


『ルーズはいてくれるだけで良いのよ。私の命の恩人なんだから、気にしないで』


 アリナーデが場を和らげるように優しく語りかける。王妃はその様子に頷くと手を一つ叩いた。


『そうよルーズさん。今日はとにかく貴女にお礼がしたかったの。

こんな時間までごめんなさいね、お腹が減ったでしょう?お食事にしましょう』


 王妃の言葉を合図に、食事が運ばれる。


『今日のお食事は、アリナーデ様の体調を考慮し一口サイズにさせていただいております。


前菜はマッドラの葉で包んだトマトーニのチーズ和えでございます。フォークで指しますと中から果汁が出ますのでスプーンか手でお摘みください。

スープはジャガイのポタージュ。

メインはラムドのフリット。ソースはこちら2種類。

デザートはプディーヌでございます』


 説明通りに盛り付けられた食材は全て一口になっておりナイフ要らずでテーブルマナーが怪しいルーズでもなんとか食べられそうだった。


 良かった、と目の前に運ばれた皿を見て安心していると横から視線を感じ、見るとアリナーデが姉のような眼差しでルーズに微笑んでいた。


 にこっと笑い返し、口に運ぶ。噛むとマッドラの葉がプチっと弾け中から濃厚な野菜のソースと溶けたチーズが口の中に傾れ込む。マッドラの爽やかさがくどさを消し何個でも食べられそうだ。

 美味しく食べやすい料理にルーズは気持ちがほぐれていった。


 アリナーデは実はラムドが苦手だがフリットにすると大好物になる話から始まり、国王の魔法具についての話は面白かった。ここだけの話だが、と王室魔法士団が開発中の魔法具を話してくれた。ルーズにも参加しやすい話題で会話が弾む。

 ふと正面を見ると、国王も王妃も見守るようにルーズを見ていた。


 その表情を見てはっとする。気持ちに余裕が出てきたからこそ、この状況に気づけた。


 これらの場の全てがルーズのためにあるということに。


 貴族は肉中心の食事だと子爵家のライザックは言っていたじゃないか。野菜は平民の食べ物だと。ルーズが食べるなら一緒に食べるよといつだか言っていた。

あの時はありがたいような気持ちでいたが、今にしてみるとなんだかモヤる話だ。


 貴族の食事はナイフとフォークが基本で、庶民のレストランで手で摘んで食べるのは斬新でたまには良いね、と話していた。


 今提供された料理は、アリナーデのためでなくルーズが食べられるようにテーブルマナーいらずの癖なく味わえるようにわざわざ用意してくれていたのものだ。


 詳しい料理の説明ももしかしたらいつもはないのかもしれない。万が一食べれないものがあった場合にはすぐに対処された可能性も。



 それにもっと聞き出したいこともあるはずだ、王女を救う魔法について。それをせず和かな会話をし続ける王と王妃。


 ルーズは王女を救ったとはいえ平民だ。


 ただの平民を客人としてもてなす王族とそれに従う使用人たちにも驚かされる。それほどルーズの魔法が貢献したということかもしれない。


 王族ならそれでも平民なんて捨て置いても良かった、人伝に一言礼を届けるだけでも素晴らしい王様だと評価されたに違いない。一部の貴族からは平民にはむしろ感謝のポーズだけで良いと推奨されるだろう。


それをしなかった国王たち。

彼らの人柄、誠意がルーズの目に心に焼きつく。


 王が国にいることは知っていても直接関わることがなく、雲の上にいる物語の登場人物だった。

 そんな人たちからの心遣いに目頭が熱くなる。


 密かに一生忠誠を誓おうと心の中で決意したルーズに、王妃がマッドラ包みを手で摘みながら告げる。



『それで、ルーズちゃんはいつから働けるのかしら?明日から?』


 貴族スマイルがよりニコニコと楽しげに変わった王妃と目が合った。



 聞こえた言葉に、王妃様は強化版アリーナ様だなぁと現実逃避な感想が頭をよぎった。

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