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21.5

間話 

影たち大変だった話です


読み飛ばしても大丈夫になっています

 その時の影。


 影は護衛や監視、諜報活動などの役割を持つ王家に仕える便利屋のようなものだ。


 この国は王が絶対的な権力を有し、貴族や平民もそれに否はなくうまく回っている。平和な国で危ない仕事は少ない。ないと言えないのは、まぁ致し方ない。


 そして本日の影の仕事は王女の護衛だ。


 週に一度、夜な夜なふわふわフラフラと散歩に出掛けてしまう第二王女殿下の後を追い、危ないことがないよう裏から手助けし、無事に城に帰ってもらう簡単なお仕事、のはずだった。



 その日も王女は部屋からいつも通り抜け出し、フラフラ楽しそうにしていた。見失ったのは一等区を過ぎたあたり。


 あー楽しそうだなと眺めていたら、消えた。


 一瞬王女全体が光った。次に弱く光る無数の粒子が現れ舞ったと思ったら器が消えていた。


 そんな、バカなと3人の影は瞬時に役割を決め方々に散っていった。1人は城へ、1人は捜索に、1人はその場に待機。

 それぞれ生きた心地がしなかったと後の報告書には書かれていた。



 城に行った影は、寝室で寝る王に報告し指示を待った。王は即座に現場に足の速い影を2体も一緒に行くように手配、1体を城の見回りに行かせるよう指示する。


 現場で器が消えた王女の魂を探す影は、魂を感知できる魔法具を取り出し街を駆け回った。魂は肉眼では見えない。

 応援の影と合流し四方に分かれしらみ潰しだ。


 中継役として残った影は、王、捜索隊と城の見回りの影の情報伝達に集中。



魂は成人なら大きく、子どもは小さい。


 どこかに入り込まれたら見つけるのは容易ではない。猫探しの高難易度版のようなものだった。


 魂のみの存在になってから消えてしまうまでのタイムリミットは約3時間。

 3時間後王女を助けられなかったら、追加で3人の魂が消えることになる。やばい。



 手に汗握る時間が刻々と過ぎて二時間半が経った頃。


 中継役に、王女らしき人物が歩いている、と連絡が入った。王にも連絡をしもう一人の捜索中の影を向かわせると、確かに王女だと連絡が来た。


『でもアリナーデさま、なんか5歳くらいになってて本物かわっかんねーす笑

あとやばそうな女と歩いてます』


 ちょい調べまーすと追加報告がきて中継役はその場で蹲った。あと30分ほどで無くなるかもしれない頭を抱えて。


 王もその報告を受け眉間に深く皺を刻みこんだ。

 短く唸った後、影に本物のアリナーデか確かめることと一緒にいる女性について探るよう指示を出した。

 念の為まだ王女の魂は捜索は続けることと、それからこの事は極秘扱いにすることも。



 影たちは魂探しや、ボロボロの女について情報を集めたり、王女を探ったりわーわー頑張ったとても頑張った。


 街に降りた影は『あのーあの女の人泣きはらした顔して貴族っぽい子連れてるけど危なくないんすかねぇ』と買い物客を装い店員のオバチャンに話しかけた。


『あーありゃルーズちゃんだ。魔商ギルドんとこの。いい子だよーうちの壊れた魔法具ちょちょいと直してくれたんだ。

古いからって他のギルドのやつみたいに馬鹿にせずにね!この辺の店は世話になったやつ多いんだよ。

あの子のこった、迷子でも保護したんじゃないかいかい?


……ここだけの話だけどね、最近気取った野郎の魔法士さまと付き合ったって嬉しそうに言ってたんだけどねぇ、朝早くギルドから泣いて出てきたって噂だよ。


振られちまったんかねって向かいの女将さんと話してたんだよ』


 『いい子なんですねぇ』適当に相槌を打ちながら、情報収集はオバチャンに聞くに限るなぁとほくほくの影。即、報告。この情報は共有となった。



 このあと暫くして、一等区の貴族エリアに入る頃に少し魔力が回復したであろう王女からほんの僅かに王女たらしめる魔力の光が魔法具を通して確認できた。

 その瞬間の影一同の安堵感は他人に窺い知ることはできないだろう。


 王も安心して、影から上がった報告書を細部まで読み込むことに没頭することができた。



 王女とやばそうな女改め可哀想な女性が城に入るのを見届けた後、王女夜の散歩お助け隊たちは解散した。



 ルーズは、アリナ–デの命だけでなく影の命も同時に救ったのだった。





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