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 力が抜けソファーの背もたれに寄りかかる。

 王女の前でなんてことを、と頭のどこか冷静な部分が訴えてくるがアリーナなら許してくれるだろう。


 ルーズは王女のせいで疲労困憊なのである。


 そんなルーズの姿を見てもアリナーデは予想通り優しく微笑んでいた。そして思い出すように目を少し伏せて話し出した。



『貴女の魔法は不思議だった…

川に流れていたら橋の上から綺麗な黒いレースがひらひらと私の上に舞い降りてきたの。綺麗だな、て眺めていて……それから、


目の前が真っ暗になったと思ったら私は橋の上にいた』


 5歳くらいの姿だったのは魂が消耗したため幼くなっていたのではないか、質量が足りなかったのかしらねと王女は言った。


 消耗、という言葉に何か影響はないのか尋ねれば、他人の魔力を貰うことで回復ができるのだそう。

 城に来るまでの間にルーズの魔力が魂を包んでくれたおかげで回復したらしかった。


 不思議な話だ。

 ルーズは自分の魔法の話のはずが、他人事のように聞こえた。真っ暗というのは心当たりがあるが、それ以外がさっぱりである。


『私の魔法は、あたり一面を暗闇にするものなんです。先祖にどこかの国の貴族がいたらしいんですが、没落してから結構経ってまして、記録などもなく、家族も同じ魔法を使える人がいなくて……

魔力を吐き出すとただ暗くなるだけ、だとしか』


 魔力を爆発させなくても済むようになってからは、あまり好きになれない暗闇を出すことがなかった。暗くするだけの他に使い道があるかもしれない、という考えがルーズには今まで一度もなかったのだ。


 商団から譲り受けた貴重な魔法の専門書の中に、暗闇を作る魔法は載っていなかった。

 暗くするだけだから載ってないんだろうな、と勝手に納得しそれ以上自身の魔法について考えるのをやめて魔法のコントロールや基礎知識を得る時間にあてていた。


 暗闇が人の命に関わるかもしれない。まだ可能性があるだけだが、もう少し自身の魔法について考えるべきだったとルーズは反省した。

 知らなければ次は救えないかもしれない。それは絶対に嫌だった。



 アリナーデも、器が消えた魂が助かった話は他に聞いたことがなく何がどうなって助かったのかは不明のようだった。

 本当に、話がいちいち心臓に悪い。


 仕方ないがお互いに情報が不足しており推測も立てられなかった。多少モヤつくが、不思議だがこうなった。

 ということで話が落ち着いた頃、双方のカップから紅茶が消えていた。


 頃合いを見計らったように、外から澄んだ鐘の音が鳴り響く。正午を知らせる鐘だ。

 城から鳴らされるその音は、中央都市に住む人間の時計代わりになっている。この音が聞こえたら仕事は休憩。食堂は人でごった返し、屋台は行列になる時間。



『さぁ、ルーズ行きましょうか』


 突然、前から約束していたかのように話を進めるアリナーデに、そろそろ帰ると言い出すタイミングを図っていたルーズは遠い目をした。

 王女が行くと言ったら行くほかない。諦めが大事だとこの短時間で学んだルーズは、渋々気味に頷いた。



コンコン、コンコン


 部屋の中を覗いていたのではないか疑うほど丁度良いタイミングで、外からドアがノックされた。


『あちらの用意が出来ましたのでご案内いたします』


 ドアの前には、ルーズが着ているものよりよっぽど質の高い布地で作られた制服を来たメイドが、次の予定を告げる。


 あちらとは?答えを求めてメイドを見つめるが、控えめな微笑みで固定されたまま『どうぞ』と返された。



 メイドを先頭に、アリナーデ、ルーズ、その後ろに部屋の外に待機していた護衛2人の順に並び、長いガラス張りの廊下を歩く。

 綺麗に整えられた庭を鑑賞するのを邪魔しない、曇り一つない透明度の高いガラスについ手を伸ばしたくなるが我慢しながら着いていく。


 庭園を眺めながら静かに移動していると、ただ歩くだけの時間が贅沢な時間に感じられる。


 貴族は無駄な時間を嫌うというが、こういうことなのかとルーズは感心しきりだった。

 無駄を省くではなく別の意味を持たせる。時間とお金が十二分な階級がなせる、まさに贅沢。


 時間を楽しむ。

 こんな贅沢なら悪くないかもしれないと少し思った。




『こちらにございます』


 メイドが案内してくれた先には両開きの大きな扉。その横には兵士が左右に立っていた。


『第二王女殿下並びにルーズ様をお連れいたしました』

 

メイドは扉の奥に届くよう上品な声を張り上げるとこちらに向かい一礼した。




『中で国王、王妃がお待ちです。

それでは中にどうぞ』


いやいやいやいやいや?

無理だ。

流石にそれはだめだ。むり。

急に気持ち悪い



『パパとママがルーズに会いたいって!

さぁ行きましょう?』


 急に無邪気な感じを出してくるアリナーデ。

ルーズの負担を少しでも軽くするための優しさか、それとも有耶無耶な流れでごり押しにかかった策士か。


 どっちにしてもルーズには、この先を進む道しか作られてはいなかった。


 権力の頂点に続く一本道。



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