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 何故王女が1人で姿を変えてあんなところに居たのか、それは一言で説明できることではなく、複数の要因が重なり起こった出来事だとアリナーデは言う。

 つまり彼女の意思ではない何かがあったということだろうか?



 まず、と話し始めたのはアリナーデが使う特殊な魔法についてだった。

 王女の母つまり王妃の家系に稀に継がれる魔法があるそうだ。


"体から魂を出す"


 寝ている間に魔力が外に漏れ出し、それが形になり器になると魂を移すことができる魔法。


 魂が器に入れば、自由に動くことができる上に魔力で作られた器…仮の体は魔力で動いているため疲れないのだそうだ。


 ルーズは、なぜ小さなアリーナがあんなに歩き回っても元気でいたのか合点がいった。疲れない体、と聞いて最近体力の衰えを感じているルーズは羨ましい限りだった。


『疲れない体といえば便利なのだけれど…魔力で作った器だから、魔力が切れたら器が消えてしまうの。

ちゃんと魂を体に戻さずに器が消えると、魂だけになるわ。それで漂うだけのモノになって……最後は消える』


 器にいると魔力の残量がわからないのも難点なのよね、と困ったように笑うアリナーデ。


『私はたまにその魔法を使って城の外に散歩に行くの』


 ふふ、と自然に笑ったアリナーデにアリーナの面影を見つけ、ルーズはやっと目の前の王女がアリーナなのだと急に腑に落ちた。

 何故急に?と問われても理由は言えないがアリーナが目の前にいた、そう感じたのだ。


ああ、アリーナ様がアリナーデ様なんですね。


 ルーズはその事実を歓喜と共に噛み締めた。



『それで、ね。

今日はちょっと遠くまで散歩しようと思ったの』


 少ししゅん、としながら話す彼女の姿が可愛かったが嫌な予感がした。


『一等区までは往復に問題がないことが分かっていたから、もう少し行けるかと、川を見たくて頑張っていたらね。途中で…



器が消えちゃったの』




 急に始まった怖い話にルーズは耳を塞ぎたい。こちらは歓喜が消えさった。

 魂とは脆い存在であると魔法の本に書いてあった。


"魂は人間の核であり、人格を形成する土台である

体が死んだあと魂は外に出され消えていく

また、魂を抜き消せば体は残るが目を開けることはなく眠ったままになり体の死が訪れる"


 アリナーデが話したことは『死にかけたの…』である。いや、ほぼ死んだに近い。賢姫と噂される王女の死。

 それを、大事な花瓶割っちゃったの…くらいのテンションで話す王女。


 反省できてえらいですね、て反射で褒めそうになったが、違う。さすがにこれはダメなやつでは…!?


 褒めかけた後ちゃんと怒ったほうがいいのか悩み、いやアリーナ様じゃない今は王女様だと気づき、怒る立場になかったことを思い出した。


 頭の中を目まぐるしく稼働し続けるルーズに休息が訪れない。



 川が見たかった、は生死をかけるほどのことでは断じてない。起きている間に見に行けばいい話だ。なぜ、頑張った。


『それで、ふわふわして気付いたら川まで流れ着いたの。すごいわよね、執念かしら』


泣きたい。怖い話が終わらない。

反省なんてしてなかった気がしてきた。


 そして、キーラ宰相がなんで泣いていたのかが分かった。


 いつもは戻ってきてるはずの時間になっても器の王女が待てど暮らせど帰ってこなかったのだろう。

 勝手な想像だが、きっと何度も早めに帰還するよう言って、この賢姫なはずの王女はのんびり返事をしていた気がする。本当に勝手な予想だが、遠からずなはずだ。


キーラ宰相可哀想すぎる。


 緩くなった紅茶に口をつける。また音が鳴ったがルーズは全く気にしなかった。あぁ紅茶美味しい。




『川の上で揺らいでいたらルーズ、貴女が助けてくれたのよ?』


 飲んでいた紅茶が口から出そうになったが、なんとか飲み込み、考えた。


『……は?』


 である。全く身に覚えがない、というか急に背後に立ってましたよね。





『だから、恩人なのよ』


 ルーズにはない確信を持ってアリナーデは力強く言った。

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