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 庶民的な店の通りを抜けた先をさらに2ブロックほど進むと、富裕層や貴族が来るお店が並ぶ。


 ここは、先ほどまでいた通りとはまた別の賑わいを魅せる城下町一等区の入り口。お金と常識があれば身分を問わず利用ができる場所。


 ギルドがあるメイン通りを外れて脇道を進んでいるため、有名店などなく派手さはないが落ち着いた風情ある店が並んでいた。

 雑多な喧騒がプツッと途切れたこの通りは低音の音楽が流れてきそうだ。



 ルーズは店などを利用したことはないが仕事で一等区にも何度か訪れたことがあった。


 少し馴染みがあるとはいえ、来るたびに緊張し手足がぎこちなく動く感じがした。ここは働く人も歩いている人もゆったり動く。動きが遅い分、所作のどこが、とは言えないが優雅さが目を引いた。


 その中で自分だけがガサガサとした異物になった気分がどうしてもしてしまうのだ。


 アリーナの方を見ると、先ほどまで浮いていたのが嘘のようにこの場に溶け込んでいた。纏っていた空気が街全体に広がり、ルーズと立場が逆転する。



さすが、本物…


 あまりの自然さに思わず、ごくりと唾を飲み込んだ。


 上品な街の中でさえ品の良さが伺える様に、ただの貴族ではないこと知る。たった5歳でここまで身につけさせる教育の高さは貴族の中でも上流階級の証だろう。



『アリーナ様は、所作っていうですかね、今まで見てきた貴族の中でも段違いに動きが自然で綺麗ですね』


 あらありがとう、と微笑んだアリーナはわざとお貴族様用の笑顔を見せつける。


やだ、可愛い!!

芸術品……!


 むかつく貴族がやると苛立ち倍増の貴族スマイルだが、こんな可愛い使い方もあるのかと感心した。



 下町に貴族のお嬢様も現実味がなかったが、あるべきところに戻った上流貴族のお嬢様も絵画のようで現実味がないという人生に必要のなさそうな知識を得た。




 しばらく歩いたがアリーナからなになに攻撃が出る気配がない。知り尽くした場所だからなのか興味がないのかは分からないが、目線も体も真っ直ぐ前を向き、滑らかに足取りが進む。



 この速さならば、城まであと10分ほどだろう。


『アリーナ様、もうメイン通り歩いて大丈夫なので、お城には正門から行きますか?』


 そろそろギルドからも程よく離れることができた。

裏通りから城に行くとあまり印象が良くない、気がする。ルーズは入城初体験なため作法が分からないが用心深くするに越したことはない。



『正面からは入れないの。裏から出入りできるからそちらに行くわ』


 正面から入るには事前手続きが必要らしい。急に行って、はい!どうぞとはならない。が、城から出る分には自由となっている。とアリーナは説明してくれた。

 つまり、自分はふらふらと城から呑気に脱走をしたと言うことかとルーズはツッコミが口から出そうになり無理やり飲み込んだ。



 メイン通りからさらに離れるように歩くと、貴族の屋敷が目に入るようになった。


 一等区の奥は、貴族専用エリアだ。専用と言っても住居や店を持てるのが貴族のみと決められただけで平民が立ち入ることは許されている。

 とはいえ此処に用事があるのは貴族以外では、大金持ちの平民か契約している業者くらいだが。


 メイン通り近くは高級店が建ち並び、それ以外は貴族の生活地区になっている。公園や学校、病院に貴族の屋敷様々な建物が並ぶ。

 ルーズたちが歩く道はお屋敷が並び、どれも敷地が広く、高い塀もしくはよく手入れされた樹で囲まれている。


 長々と続く目線を遮る壁たちにルーズはふと、迷路の中に迷い込んだ気分になったが、アリーナが楽しくおしゃべりしていたためにすぐに気にならなくなった。




 ここを抜ければいよいよ目的地。城がある。




 幾つかの壁を横目に通りすぎたところで、大きくひらけた道に出た。



『この道は、運搬道になっていて荷馬車何台かすれ違っても通れるようになっているの。ここをこのまま行けば城への搬入門につながっているわ』


 一等区の入り口あたりの運搬道は馬車が多く歩くには適してないが、ここまで来ると馬車は少なくなり歩きやすいのだと言う。


 よくそんなことまで知っているなぁとルーズは関心しで『すごいですねぇ』と褒めたあとで、もしや脱走慣れした経験則では……!?という恐ろしい考えが過った。



 アリーナの言う通り、荷馬車や人もおらず怪しまれずに城の搬入門までくることができた。


 『ちょっと待ってて』アリーナはそう言うと、門の横にある飾りのような水晶に手を触れる。

 呼び鈴だろうか、と見ていると門の内側からガシャガシャガチャガチャと忙しく金属がぶつかる音と数人の足音が聞こえてきた。



 内側で何かあったらしい慌ただしい気配に、アリーナを守れるよう警戒する。


『アリーナ様私の後ろにいてくださいね、最悪担いで逃げますので』


 足音が門の前でピタッと止まった。

 いつでも目眩しに暗闇が出せるよう息を吸い、目と耳を研ぎ澄ます。



大きく扉が開く。


瞬間、




『アリナーデさまああああああっっっっ!!』






 大泣きするおじさんが飛び出してきた。



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