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『左前足に、逆鱗?』


 アシェルはルーズの話を聞いて、ふむ…と少し考え空を見上げた。

『ボルデティオ殿下と騎士団団長にも今伝令が言ったと思います』


 『なら試してみる、か』そう呟くと、アシェルは空高く天災を追って行った。

 ルーズはアシェルの行動の速さに呆気に取られた。

 じゃあ自分は何をしようかと辺りを見渡す。視界が悪いな…地上の黒い魔力を風で飛ばした。

 晴れた視界に見えた魔物の急所を狙い一気に頭を撃ち抜いていく。


 完全に魔力を枯渇させてからフル充電させると一時的に魔力量が上がる。今ルーズは普段以上に魔力量と集中力が上がっていた。


 今なら三匹同時に急所を狙えそう!


 次々と魔物を倒していると、上からデュオがやってきた。


『すごーい。今アシェルとすれ違ってルーズに聞いてくれって言われたんだけど何ー?』

 彼らは交代で天災と上空で戦う作戦に出ていたらしい。倒すわけじゃないから一対一の方がやりやすいとよく分からない説明をされた。


『あー実はアリナーデ様から…』

 さっきアシェルにした話をデュオにも説明する。すると彼の目が楽しそうに輝いた。


『調理法ねーそっかそっか。へぇ…それは盲点だったー』


 左前足ね。行ってくる!と言うのと同時に空高く舞い上がった。あの2人は似てないようでよく似ている。


 強い魔法士というのはそう言うものなのだろうか?


 ルーズは次こそ笑った。

 希望が見え、笑う余裕が出てきていた。





 それぞれ戦場に伝達が向かった。



『なに!?それは本当か?』

 ボルデティオはアリナーデがドラゴンの倒し方を見つけたかもしれないと伝言を受け取った。

 

 この戦いが終わったら婚約解消になるか、と考えていたが勝利の女神をみすみす手放せないなと戦いの最中笑った。


 ごめんな、可愛いお姫様。


 多分こんなことを面と向かって言えば嫌な顔をするだろう。本当にこれからが楽しみだ。

 繰り出す魔法の威力が上がる。剣を握る拳には力が湧き出た。


『行くぞ!!勝利の女神が微笑むかもしれん!!』

 俺が嫌われていなければ、だが。


 ボルデティオの叫びに士気が上がった。前へ、少しでも未来に向けて進む。




『なんだって!?調理法??あー全然分からん。通信具は焼けたんだよ!

は?姫が言ってた??じゃあなんだっていい!その逆鱗とやらは上の奴らに任せた』


 騎士団団長は大声で『お前ら行くぞー!』と吠えた。呼応するように叫ぶインダスパのものたち。


『アリナーデが…そうか。分かった!偉いぞと伝えてくれ!』

 影に伝言を頼むと、サフィールは笑いながら魔物を切り回った。楽しそうに舞を舞うように敵の間を潜り抜ける姿は美しく、まさに剣姫であった。



 戦場はルーズたちの活躍により魔物の数を減らしていく。誰もが勝利を目指し、剣を振り魔法を撃った。


『我々は必ず勝つ!!』

 姫の叫びに大きな共鳴が沸き起こる。






 城では、金物屋の店主が連行されるように呼ばれていた。


『急にお呼びして申し訳ない。聞きたいことがありまして…』

 文官のペイルは優しい笑顔で店主に話しかけた。


『実はまだ、内緒なんですが…我が国でもドラゴンを食べてみたいと計画があるんです。

そこで調べていたら噂であなたが鱗取り包丁を扱っていたと聞きましてね、お話をお伺いしてもよろしいですか?』

 

 捕まって殺されるのかと汗が止まらなかった店主のおじさんは、目の前の同じ年頃の男性が善良そうで安心した。

 安心して、知っていることは全部話した。

 ルーズたちのおかげで包丁をとりにきた料理人に詳しく鱗の取り方を聞いていたのだそうだ。


『逆鱗は各ドラゴンに一枚だけあるんですが、なんでも色味?が違うとか。そいつを最初に砕くか、ぱきっと折るらしいです。そのあとは水の粒を出しながら逆撫でるように包丁を滑らせるとつるんと取れると聞きました』


 おじさんはにこにこと予想以上の情報をペイルにもたらせた。ペイルも思わずにこにこになった。

 部屋はにこにこ笑うおじさんが2人。とても平和な空間が出来上がった。



『…と、言うことです。ルーズ様たちがあの店主に会っていなかったら、情報集めにもっと時間が必要でしたね』

 キーラはペイルからの知らせを聞いて、思わず笑ってしまった。包丁の形さえ分かればと呼んだはずが、大きな収穫だった。


『これも天の導きなのだろう』

 王が言っていた。なるようになるとはこう言うことかと受け入れざるおえない。



 直ちに、デュオに知らせると楽しそうな返事が帰ってきた。


『色味ねー分かったー!やっとくーぱきっと!』

 

 



【あとは、水の粒が出る包丁、か…】


 天災の大きさに合わせて今から作るとなると難しい。あと一歩のところまで来ているそんな気配があるのに全てが揃わない。


『現物がないと、なんとも言えませんね』

 店主は嬉々として絵と詳しい説明文を書いてくれたが、使ったところは見ていない。

 水の粒というのがどんなものかどんな働きをするのかは分からないのだと言っていた。


 水魔法をぶつければいいのでは?

  いや、粒というから氷か?

逆鱗を剥がしたら、どこからでもいいのか?


 ルディアシスにも情報が共有され、城とテントでは協議が重ねられた。





 

 その時、ルーズが血まみれでテントに帰ってきた。


『ど、どうした!?』

 皆が絶叫する中、へらり照れたような様子を見せた。

『あーうっかり。被りました…これ血じゃなくてなんか胃液らしいです。魔物の…』

 そう言われてみれば、ちょっと匂う。早く風呂場へ案内しようと1人が動いたがルーズが先に口を開いた。


『ここってミストのやつあります?洗水魔法具の。

あれ楽ですよねぇ。ごっそりと粒が汚れ持っていってくれて…て、どうしました?』


 水だけでは落ちそうにないため、時間短縮にと尋ねてみたが皆が口を開けたまま動かなくなっていた。

 ルーズは何かまずいことを言っただろうかと不安になってくる。


『え?なんです??洗水魔法具ってもしかして高級品でした?えーすみません、わがまま言ってしまって!

お風呂で流してきます!』


『あ、いや、違う!違うんだ。洗水魔法具…ミスト…いや、うん今はないので風呂で流してくれ。すまないな』


 真っ赤に染まったルーズはほっとしたように笑って行ってきますとテントを後にした。

 



『…ミストどう思う?』

『試す価値はあると思います』


 洗水魔法具なら城にはある。転送してもらえればすぐに使えるはず。

 ダメで元々だ。何度でも試してやる。あいつを倒すまで何度でもなんでもやってやろうじゃないか。



『城に洗水魔法具の申請を!』




 

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