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 その闇は夜の暗さとは違った。

 漂う空気が黒かった。


『なにこれ…』


 黒い闇に包まれた約束の地は多くの隣国の兵と多数の大型の魔物が戦っていた。


 敵は天災だけじゃなかったの?


『あれが呼んだのかなー?』

 デュオは"あれ"と空高くに気配を感じさせる天災を指差した。空の上では魔力がぶつかる気配。

 今はアシェルが1人戦っているようだ。



 空にはドラゴン。地上には大型の魔物たち。



『じゃあルーズちゃんはー、魔物たちお願いねー。


一緒に生きて帰ろうね』


 じゃあ空に行ってきまーす、とデュオは一瞬で空高く飛び立った。

 ルーズも一緒に空に行きたかった。が、上官の命令は聞くと義弟と約束してしまった。息を浅く吐き出し、気持ちを切り替える。

 そして一番魔力の強そうな魔物の元へと、飛んだ。





『お待たせーどおー?』


 空気が無くなるかどうかの境界線でアシェルと天災は戦っていた。確かにここなら被害が広がらない。

 どうやら自分で空気を作りながら戦闘中という器用な人間の強引なやり方だ。


『時間稼ぎ中だな』


 問題は被害が出ない代わりに戦いやすいわけでもない。攻撃がほとんど当たらない相手ではただ時間潰しをしているに過ぎない。


『りょーかいー』

 さて、どうするか…


 天災はアシェルによほど恨みがあるようでデュオに目もくれない。片目を潰されているせいで視界が狭いだけかもしれない気もするが。

『うわー片目だけよくあんなに…』

 両目ではなく片目のみに一点集中しただろう攻撃の跡たちに、デュオはちょっと引いた。



『今殿下たちが奴の倒し方を考えているはずだ。それまで生き延びるぞ』

『はーい』


 


 地上では、魔物の数が徐々に増えて行き人間側の疲労が溜まり始めた頃にインダスパからの援軍が到着し始めた。


『モダーナリの人々よ!インダスパが今より参戦する!』

 騎士団団長の叫び声が響き渡った。

 その叫びに体の疲労よりもいつまでも終わらない状況に心が弱ってきた隣国の兵士たちの戦意が戻ってきた。


『我々はまだやれる!行くぞ、モダーナリの戦士たちよ!!』

 その気を逃さまいとボルデティオは、自ら先陣を切り進み叫んだ。

 インダスパの戦意みなぎる猛将の魔力が咆哮とともに大地に広がる。心を揺さぶられる激励であり、魔物にとっての威圧。


 戦局は一気に両国連合軍に傾いた。






 インダスパの城では、ようやく第一陣が到着した知らせがやってきた。

 デュオからは『天災ぶちギレ中だからー大丈夫ー』と言う良いのか悪いのか不明瞭な状況の通信が来た後でのモダーナリとの共闘がうまく行っているという情報。キーラたちはほっと胸を撫で下ろした。


『魔物が集まっているのは誤算だったな…通りで道中が平和だったはずだ』

 普段なら魔物たちがいるはずの厄介な法外地が静かだった。天災に恐れをなし散っているのかと思ったが、まさかの集まっていたとは。


『約束の地に行くまでに犠牲が全くなく全軍辿り着けたと考えれば…』

 良かった、のかも知れないが厄介な状況。モダーナリに連絡を取ると、大物の魔物はあの地に向かったが弱い魔物があちらの国に逃げてきていると。


[天災がこちらに来なかった分だ。インダスパよ気にするな]

 モダーナリの王は国内で指揮をとりながら戦っているらしく、とても生き生きとした声で問題ないと言い切った。



『あっちの国はみんな血の気が多いですからねぇ』

 ギルド長が聴きながら呟く。玉座に縛られた王がやっと動けるのだ、枷が外れ暴れている頃合いだろう。

 こうなると予想し守りすら減らし兵を動かしたのではないかと邪推しそうになるが、止めておく。


『インダスパに目立った魔物の侵入はない、とアザンダより連絡が入っております』

 国内はこちらも問題はなさそうだ。問題は、天災の攻撃方法。



 口の中に魔法や爆発物を放り込んでも丸呑み。見える皮膚全てが魔法を弾く硬い鱗に覆われている。片目を潰したが、両目を潰すと無差別に暴れることになるため手立てがないうちはやるべきではないと判断。

 今デュオたちはほぼ防御のみ。逃げ回りながら弱点を探している。




 天災へ攻撃法が見つからないまま時間が過ぎていく。地上での戦況を聴きながら、じわじわと増えていく負傷者の数に焦りが出始める。

 アシェルとデュオの足止めもいつまで保つのか分からない。早く、早くなんとかしなければ…



[なにか、なにかないのか…!?】



 他国から取り寄せたドラゴンの資料を壁に貼り付け、古代種について学者と連絡をとるが決定打が見つからない。今はまだ戦地に死者はいないが、このままでは確実に出てきてしまう。

 

 広がる被害にイリアは回復薬の調合、ギルド長は魔力集めのために席を立った。


 膠着状態が続き、城から北東の空が暗くなり始めたのが見え始めた。それからデュオから"天災が地上に降りた"という連絡と騎士団団長の通信具の魔力の反応が消えたのはほぼ同時だった。



 騒然とする室内で王へ直接繋がる通信具が光る。



[地上に黒色の炎が放たれ、大きく爆発が起きました。今白煙が辺りを包み込み被害は不明。規模からすると半数以上が巻き込まれた模様]


 アシェルを追っていた影からの無情な連絡が入った。恐れていたことがついに起こった、と声無き嘆きに染まる。

 だが影はさらに絶望を伝えた。




[空にいたルーズ・キーラが消えました]



 炎に巻き込まれたのか、何か別の要因で落ちたのかも分からない。ただ気づけば消えていたそうだ。

 

 なんて事だ…


【分かった。何かあれば連絡を】

 

『回復薬を急ぎ転送!結界魔法具の魔力補充を急がせろ!』

 

 

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