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 20歩ほど足を動かしたあたりでルーズは目を覚ました。


危ない。流されるところだった…

これでは私が誘拐されてる側だ


 とはいえ今更拒否出来るわけはない。心の中でため息をひとつ。


『仕方ない…行きますかオジョーサマ。

あーっと……お名前はなんですか?』


 やる気なく了承し名前を尋ねると、何が面白かったのかクスクスと笑いながら幼女は『私の名前はアリーナよ』と教えてくれた。

 

家名を名乗らなかったアリーナ。今はそれがありがたい。


どこぞのお貴族かお金持ち知らないが、早く保護者なり護衛なり見つけてくれないだろうか…


 いかにも!な幼女を連れて歩くにはリスクが高すぎる。



 アリーナに気づかれないように次は口からため息をこっそりと吐き出した。

 いつの間にか、垂れ流しになっていた涙は止まっていたがルーズは気づかなかった。




『川が…とても綺麗ね』


 途中アリーナは誰に向けてでもなく涼しげに煌めく川を見ながら満足そうに口にした。初めて来た場所なのだろう。


 川は貴族たちの住む地区には流れていないため物珍しいものかもしれない。

 早く自宅まで送り届けなければ、と使命感をちょっとだけ感じたルーズだった。




『あら、私ったらあなたの名前を聞き忘れていたわ。なんというのか教えてくれる?』


 貴族が会ったばかりの平民の名前を気にする方が稀であるため、名乗る気がなかったルーズは少し驚いた。

 貴族様に聞かれたら答えるのが世の常なので『ルーズです』と素直に答える。互いの詳しい素性は聞かなかったし言わなかった。


 程よい自己紹介を終えた2人。

 時折今日は涼しいわね、そうですね、など当たり障りのない言葉を交わしながらルーズが元来た道を歩き続けた。


 小柄なアリーナの歩幅が小さくあまり進んではいないが、このままでは元職場のギルドの近くに行きかねない。



『でアリーナオジョーサマ、これどこに向かってますか』



 迷子だという割には目的地を知ってるかのように迷いなく歩き続けているアリーナ。

 その姿は悠々として、まるで自宅の庭でお散歩中である。


 子どもは時々間違った方向にも真剣にまっすぐ進む特性がある。

 賢そうに見えるが所詮迷子になるお子様だ。信じて歩くには危険すぎため聞かねばならない。


 立ち止まって、ルーズを見上げたアリーナは可愛らしい顔をキョトンとさせた。


『あら言ってなかったかしら。お城よ』


 こちらの心配をよそに平然とした様子で答えるアリーナは『さあエスコートをお願いね』冗談か判別し辛い笑顔でゆっくりと歩き出した。




 この街でお城といえば、王宮だけだ。

 王が住む家であるし多くの人、主に貴族が働く場所。

 ここからだとちょっと遠い、というのは置いておき城には貴族の中でも優秀か地位の高い者しかいない。


 大変優秀な平民が働いていたとしても、子を連れていくことは絶対にない。つまり…


 急なアリーナのお貴族様確定演出に心の中で盛大なため息が出る。口からも出たかもしれないが、お隣を歩く幼女は一切気にしていない。恨めしい。


 彼女の親が城で働いているか、地方貴族か何かで用事があり連れてきたのか。どちらにしても厄介である。確実に。



『あーーあーアリーナ様…。王宮は私平民なんで行けませんが、近くまでで大丈夫です?』


 ルーズは適当なオジョーサマ呼びで誤魔化していたが呼び方を貴族のそれに合わせた。


 平民は王宮に入るどころかあちらから呼ばれない限り近づくことは出来ない。

 何かあっては貴族も平民もお互い対処に困るのだ。近づかないに限る。



『大丈夫よ私と一緒なら入れるわ。

それに私1人だと大人たちがびっくりしちゃうわ』



 子どもの大丈夫は信じていいものか賛否に分かれるが、平民のルーズは幼女とは言え貴族のアリーナに従う他ない。

 時に身分差とは非道である。



 朝一で仕事をクビになったため時間はたっぷりあるルーズ。忙しいと断る理由もない。嘘をついてもいいが、見透かされそうな気がするのでやめておく。


 アリーナも貴族にしては歩くのことに抵抗がなさそうで、貴族専用の馬車に詰め込みハイさようなら!とはいかないようだ。

 それにルーズがアリーナを押し込もうとした時点で警邏隊が大集合な予感がある。


 これは既に詰んでいる。


 全てを悟り諦め、最初で最後になるだろう幼女とお城までお散歩が一番平和だ…


多分。


一部ルーズの心情が合わなかったため書き直しました。

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