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第一話 世界は狂いだした

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『...むぅ? ...なんじゃ? 何かに引っ張られ...ぐおぉおお!?!?ぐぁああああ!!! 妾は神じゃぞ!? ...なのに...なんじゃ、この力はぁぁああ!?!?』

゠゠゠゠゠゠゠゠゠゠゠゠゠


 ...なんじゃ?ここは?


 気が付くと、妾は不思議な場所に横たわっておった。腕には針が刺してある。これは...? 瀉血(しゃけつ)ではないじゃろ? 毒針でもなさそうじゃ...無理に引き抜くのは得策ではないじゃろうな。


 まあ、落ち着いて状況を判断しようではないか。妾はサキュバスキング。次元や世界を超えることのできるサキュバスに(くみ)する神で、その力は神話に名を残すほど。これまでにいくつもの世界で、サキュバスたちを救済したものじゃ。


 妾は一つ前の世界を助けた後、おおよそ260年ほど眠っていたのじゃが...

 

 気づけば見知らぬ場所じゃ。


 召喚先は大体サキュバス族の村の祠なのじゃが...ここは...?


「うおぉおおお!!!? 脳死してたのに目を開けたアアアアアア!!!???!?」

「な、なんじゃ? お主?」


 そいつは白い服を着た人間の男のようじゃった。見たところ...医者...なのかのう?


 っていうか、なんだか声が低いのう?いつも受肉する体は高い声なのじゃが...


「ぅ~...落ち着け...俺...っふぅ~...あの...」

「んん? なんじゃその顔は?」


 目の前の男はまるでおばけでも見たかのような顔をしておる。


「あれ...? 話し方が...すぅ~...あの、貴方のお名前は?」

「サキュバスキングじゃ。召喚を受けてこの世界に顕現したのじゃが。」

「...そ、ソウデスカ...あの、年齢は?」

「もう何年生きたか分からぬ。ここはどこじゃ?」

「はい、分かりました。えぇっと、一二三 優(ひふみ ゆう)、この名前に覚えは?」

「ないぞ。誰じゃソイツは。」


 奇怪な名前じゃな。少なくともわしがいままで行った世界でそんな感じの名前の付いた奴はおらん。


「この顔は?」


 そいつは手鏡を取り出してきた。


「な、なんじゃ!? この醜い顔は!?」


 整えていない眉、申し訳程度に高い鼻、突き出た唇、小さい目、アブラ質でニキビだらけな汚い肌。


「...全身鏡で確認しますか?」

「あ、ああ」


 身長は170ほど。みっともないだるだるヒョロヒョロ体型で、着ている身なりまでもが最悪じゃ。何とも頼りない容姿ではないか。


「わ、妾は一体何に巻き込まれたというのじゃ!? わ、妾はサキュバスキングであるぞ!? な、なにゆえこのようなことに!?!?」

「あー...分かりました。少々お待ちください」


 白衣の男は行ってしまった。


 ...ふぅ...落ち着くのじゃ...騒ぎ立てれば騒ぎ立てるほど、状況は悪化するに違いないのじゃ...体を横たえ、静かに考察をしながら待つことにしよう。


 まず、この体...まず間違いなく、妾の受肉した体で間違いないが...おかしい。


 妾こと、サキュバスキングは現世に顕現するとき、受肉する身体は絶世の美女の姿になるはずじゃ...こんな醜い姿にはならん...


(ちなみにサキュバスキングは、容姿こそ美女の姿じゃが、生殖機能、生殖器は男じゃ。じゃから、この男の身体でも性的違和はない)


 と、つまり今の妾はサキュバスキングではないことは確実じゃな...


 考えられるのは170cmの身長...インキュバスか、人間か、エルフか、...天使かもしれんが...


 身体の特徴を一つずつ、確認していく。インキュバス...顔が美形でない。エルフ...長い耳がない。天使...天使の輪と羽がない。うむ、何の特徴もないのう...人間じゃな。


 妾は、今人間じゃ。


 ここは人間の病院か?


 ステータスはどうじゃ?


「ステータス」


 ?


「ステータス...」


 ステータスが出てこないではないか...


 うーむ...もしや魔法がないのか...?


「ああ!優~!!」

「…ふん、どうせ演技だろ。」


 扉から女と男が入ってくる。女は泣きながら、横の男は軽蔑した目でこちらを見てそう言ってきた。


「おかしくなちゃったんだって!!? 可哀そうに!!」

「まったく、そんな演技をして...」

「なんじゃ、おぬしら?」


 シン...と部屋が静まり返る。 んあ? 妾、また何かしたか?


「おい、そんな演技はやめろ! 人に迷惑をかけておいて馬鹿野郎!」


 パシン!!


「ぶえ!」


 頬をたたかれた。 そこそこ痛い。


「あなた”!やめてぇ!!」

「なんじゃ、痛いのう」

「てめえ! いい加減にしろ!」

「お父さん、やめてください!」


 なんじゃ、頬はヒリヒリ痛むし、騒々しいではないか。


「ねえ、お母さんだよ? 覚えてる?」

「...誰じゃ?」

「...っっ!!!」

「おいっ!! 本当に冗談になってねえ!! 殴られてえのか!?」

「お父さんっっ!!!」

「うぅぅ...ぅぇぇええん...!! おかしくなっちゃったよ優がぁ~!!」

 

 女が泣きだした。どうやらこの人は母らしい、ということは...男の方は父か...? え? こんな暴力を振るうクズが?


「とりあえず、お母様、今すぐ精神病院に入院ということで...診断書を出しますね...あと、救急車も...」

「ぅぅぅ...優...ゆうぅぅ...」

「こんな奴...もう顔も観たくないッ!」


 なんじゃ?何が起きてるんじゃ?


 その後、妾は何やらよくわからん動く箱にのせられ、運ばれたのじゃった。

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