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地球乙

「AIってアレだよね、アプリとかパソコンとかで使われてるプログラム的な何か」

「そうそう」

「でもって、映画とかアニメなんかでよく反乱起こしてるヤツ」

「うんうん」

「人間じゃないヤツ」

「そうだね」

「ロボット?」

「間違ってはない」

「頭いいけど人の気持ちが分からない的な」

「だよねぇ」

「あのー…………」

「どしたのグレーマ」

いつの間にかしゃがみこんでのの字を書いているゆるふわお姉さん。

「そこまで言われるとさすがに悲しいです、私」

「あー、アリスちゃんがグレーマ泣かしたー」

「え、わたし?ちょ、グレーマさんごめんなさい、悪く言うつもりはなかったっていうか、どう考えてもイメージ合わないし」

「どーせ冷酷なロボットですよー」

「ごめんなさいってば……」

「とまぁ、グレーマもアリスちゃんイジる気満々な訳なんだけど」

「からかわれた!?」

「てへぺろ」

「やっぱりAIってのも冗談?」

「それは本当ですよー」

「まさか、サティさんが天才プログラマーでグレーマさん作ったとか?」

「いやいやまさか。むしろグレーマに育てられたんだから僕。ね、ママ」

「こんな子に育てた覚えはありません」

「ちゃんと教育課程は全部履修したのにー」

「情操教育が著しく不足してると思います」

「待って待って待って、AIなのにママなの?」

「そうだよー。人類みんなのママ、グレートマザーだからね」

「サティ、その呼び方は好きじゃないから止めてくださいってば」

「なんで?」

「だってなんか厳ついおばあちゃんみたいじゃないですか」

「あー、うーん、まぁ……かなぁ?」

「自分の正式名称が嫌いなAIとか笑うよね、アリスちゃん」

「正式名称なんだ?」

「そうそう。普通は略すならマザーとかじゃない?それも嫌だから愛称を自分で広めてるの。ね、グレーマ」

両手で顔覆ってる。耳真っ赤。何この可愛いAI。

「……ホントにAIなんですかこれ?」

「ホントだよ、僕の言うこと信じられない?」

「サティさんの言うことはまぁほぼほぼ信じられないんですけど」

「心外だなぁ」

なんでちょっと嬉しそうなのこの人。

「それで、総合……なんでしたっけ?」

「総合環境管理AIだね」

「って、なんなんですか?環境を、総合的に、管理?」

「うん、自己解決したねぇ」

「いやそうだけどそうじゃなくて」

「今アリスちゃんが言った通り。もっと正確に言うなら、人類が存続可能な環境を総合的に管理する、ってところかな?」

「そうですね、人類社会の存続、が私の唯一の命題ですから」

「じんるいしゃかいのそんぞく」

「はい。なのでアリスさんの健康管理も私の仕事のうちですから、安心してお任せ下さいね」

「そうそう、怖くないからねー」

「………………うん?」

「……サティ、なんでアリスさんの不安を煽るような言い方するんですか」

「え、なんのこと?」

「怖くないとかわざわざ言わなくていいじゃないですか」

「いやぁ、モヤッとした不安を抱えてるようなら、今のうちに解消しちゃった方がいいかなーって」

「ええと、大丈夫……なんですよね?あ、そっか、人類の命令には絶対従う、とかそーゆー安全装置みたいなのがあるとか」

「あー、ロボット三原則」

「なにそれ」

「加害禁止、絶対服従、自己保存、だったっけ?」

「おおむねそんな感じですね」

「グレーマさんもそれに従ってるんですよね?」

「いいえ?」

「え?」

「やだなぁアリスちゃん、そんなことしたら人類滅んじゃうじゃん」

「え?」

「そうですね、地球滅んじゃいましたし」

「えええ!?」

「アリスさんが眠ってから300年も経ってなかったですね」

「え、なんで、どうして?」

「自滅だねー」

「じめつ」

「目減りしていよいよ底の見えた資源の奪い合いで戦争起こして、扱いきれない兵器の乱用で地球の生態系丸ごと巻き添えにして自滅」

「えー」

「SFとかだとそれでもしぶとく生き延びてたりするけど、機械文明の喪失と生存可能環境の崩壊がセットになったら、そりゃあ為す術もないよねー」

「うわぁ…………。ってでも、サティさんは人間なんですよね?あれ?でも人類滅んだって」

「あれ、僕自分が人間だなんて言ったっけ?」

「え。あ。グレーマさんがママってことはサティさんもAI!?」

「ぶはっ!」

爆笑されたし。

「サティは人間ですよ、安心……はしなくていいですけど」

「グレーマも大概ひどいよね僕の扱い。ちゃんと地球起源の人類だから安心していいよ」

「え、人類滅んだんじゃなくて?」

「言ってない言ってない、滅んだのは地球だけ」

「あ、なーんだ、そっかぁ。………………へー…………?」

「ところでグレーマ」

「なんですか?」

「地球のこと言っちゃってよかったの?」

「あ」

………………。

「アリスさん、そろそろお疲れだと思いますので一旦お休みしましょうか」

「え、疲れてないし気になることだらけなんですけど」

「いえいえ、まだ冷凍睡眠から目覚めたばかりですし、再現性が高いと言っても仮想空間も初めてで負荷もかかっているでしょうし、何より休息も重要なプロセスですし」

「でーもー」

「……強制的にお休みいただくことも出来ますが」

「うん、なんだか眠くなってきた。おやすみなさい」

「アリスちゃん聞き分けいいなぁ」

「いや強制的とか何されるか分からないし」

「心外ですね、危害は加えませんよ」

「そうそう、危なくないよ。みんな一度は通る道だし」

話してるうちにソファはベッドに変身済み。どこからともなく心地よいBGM流れてくるし、なんかフローラルないい匂い漂ってくるし。

目を閉じるとすぐに眠気が襲ってくる。確かに、知らないうちに結構疲れてたみたい。

なんだかちょっと、ほっぺが寂しい気がする。

「おやすみなさい」

ひた、と頬に当てられた手はどちらのものだったのだろう。

目を開けようとするより先に眠りに落ちてしまって、確かめることは出来なかった。

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